労災保険の追加給付を解説!振り込まれた人はいるか、金額はいくらかも紹介

 「労災保険に追加給付があるって聞いたけど、詐欺ではない?自分は対象者?」

 「労災保険の追加給付の金額はいくら?いつ振り込まれる?」

 労災保険の追加給付に関して、上記のような疑問を抱えてはいませんか。この記事では、労災保険の追加給付とはなんなのか、給付が生じることになった理由や背景からわかりやすく解説しています。
 さらに、給付の対象者の例や振り込み金額はいくらなのか、手続きはどうすればよいのかなど、関連する様々な疑問に対してお答えしています。最後までお読みいただければ、労災保険の追加給付に関する疑問を、きっと解消できるでしょう。

目次[非表示]

  1. 1.労災保険の追加給付とは?振り込まれたのはなぜ?
    1. 1.1.どのような不正があった?
    2. 1.2.労災保険に追加給付が生じた理由
  2. 2.追加給付の対象者となる人
    1. 2.1.労災保険の追加給付の概要
    2. 2.2.雇用保険の追加給付の概要
    3. 2.3.船員保険の追加給付の概要
    4. 2.4.事業主向け助成金の追加給付の概要
  3. 3.給付される金額はいくら?計算式は?
    1. 3.1.雇用保険の追加給付金額は簡易計算ツールがある
  4. 4.すでに振り込まれた人はどのくらい?完了実績は?
    1. 4.1.労災保険の追加給付はいつ振り込まれる?
  5. 5.給付を受けるための手続き方法
    1. 5.1.「お知らせ」の封筒を受け取った人
    2. 5.2.「お知らせ」の封筒が届かない人
  6. 6.労災保険の追加給付は詐欺ではない?
    1. 6.1.このような場合は詐欺の可能性があるため注意
  7. 7.労災保険の追加給付についてよくある質問
    1. 7.1.問い合わせ窓口の電話番号を知りたい
    2. 7.2.自分が対象者か確認したい
    3. 7.3.手続きの必要書類は?
  8. 8.まとめ

労災保険の追加給付とは?振り込まれたのはなぜ?

 労災保険の追加給付とは、2018年12月に発覚した、厚生労働省による毎月勤労統計調査の不正統計問題に端を発する出来事です。厚生労働省の不正統計が明らかになると同時に、過去に給付された労災保険や雇用保険などの保険金に不足があったことが判明しました。

どのような不正があった?

 労災保険の追加給付の原因となった、不正統計をめぐる問題は、厚生労働省が実施する毎月勤労統計調査で発生しました。本来なら全数調査が必要な事業所に対してサンプル調査を実施していたこと、集計データを実態に近づけるための処理が正しくおこなわれなかったこと、などが不正の要点です。

労災保険に追加給付が生じた理由

 不正統計により追加給付が生じた理由は、毎月勤労統計調査が労災保険や雇用保険などの給付額を決定する計算に用いられているためです。
 不正統計により毎月勤労統計調査の賃金額が本来よりも低めになっていたことから、労災保険や雇用保険などの給付額も、本来支払われる金額より少なく決定されていたのです。

追加給付の対象者となる人

 追加給付の対象となるのは、労災保険だけではありません。労災保険を含め、次の給付などを受け取っている人が、追加給付の対象者となる可能性があります。

  • 労災保険
  • 雇用保険
  • 船員保険
  • 事業主向け助成金

 労災保険をはじめとする、それぞれの追加給付の概要や対象者を解説していきます。

労災保険の追加給付の概要

 労災保険関連で、追加給付の対象者となる可能性があるのは、特別支給金を含む下記例のような労災年金や休業(補償)給付を、2004年(平成16年)7月以降に受け取った人です。

  • 休業(補償)給付
  • 休業特別支給金
  • 障害(補償)等年金
  • 障害特別年金
  • 遺族(補償)等年金
  • 遺族特別年金
  • 傷病(補償)等年金
  • 傷病特別年金

 ただし、上記の給付を受け取った人の全てが対象となるわけではなく、対象外になる人もいるため注意が必要です。
 なお発表日時点では、対象者の人数や一人あたりの追加給付金の見通しは、次のようになっています。

【労災年金】

  • 1人あたり平均約9万円
  • 延べ約27万人
  • 給付費約240億円

【休業補償(休業特別支給金を含む)】

  • 1人1ヶ月あたり平均約300円
  • 延べ約45万人
  • 給付費約1.5億円

雇用保険の追加給付の概要

 雇用保険関連で追加給付の対象者になる可能性があるのは、下記例のような給付を2004年(平成16年)8月以降に受給した人です。

  • 基本手当
  • 特例一時金
  • 再就職手当
  • 高年齢雇用継続給付
  • 高年齢求職者給付
  • 就業手当
  • 就業促進定着手当
  • 常用就職支度手当
  • 育児休業給付
  • 介護休業給付
  • 教育訓練支援給付金

 なお発表日時点で、追加給付の可能性がある対象人数や一人あたりの支給額は、次のとおりです。

  • 1人あたり平均約1,400円(1つの受給期間につき)
  • 延べ約1,900万人
  • 給付費約280億円

 また、雇用保険と同額またはそれに類似する方法で支給額が決定される、下記の手当についても追加給付の可能性があります。

  • 政府職員失業者退職手当(国家公務員退職手当法)
  • 就職促進手当(労働施策総合推進法)

船員保険の追加給付の概要

 船員保険関係で追加給付の対象者に該当する可能性があるのは、下記例のような給付を2004年(平成16年)8月以降に受給した人です。

  • 障害年金
  • 遺族年金
  • 職務上傷病手当金
  • 障害手当金
  • 遺族一時金等

 発表日の時点で、追加給付に該当する可能性がある対象者の数と、一人あたりの給付金額は、下記のようになっています。

  • 1人あたり平均約15万円
  • 延べ約1万人
  • 給付費約16億円

事業主向け助成金の追加給付の概要

 雇用調整助成金の支給対象になった休業期間が、下記いずれかに該当する事業主は、追加給付の対象者となる可能性があります。

  • 2004年(平成16年)8月〜2011年(平成23年)7月
  • 2014年(平成26年)8月以降

 発表日時点では、事業主向け助成金の追加給付の対象件数と必要な費用は、次のようになっています。

  • 対象件数延べ30万件
  • 給付費約30億円

給付される金額はいくら?計算式は?

 労災保険などの追加給付に関して、「金額はいくらもらえる?」と疑問に感じる人も多いでしょう。具体的な計算式をわかりやすく解説できればよいのですが、不足金額の計算方法は非常に複雑なため、簡単には試算できない内容となっています。
 先ほどの項目で、労災保険をはじめとするそれぞれの追加給付の、一人あたりの平均支給額を掲載しました。厚生労働省が発表している金額であり、ある程度信頼できる数値のため、ぜひ参考にしてみてください。
 わかりやすいように、厚生労働省が発表した追加給付の一人当たりの平均金額を再掲します。

保険の種類
一人あたりの追加給付金額の平均
労災保険(労災年金)
約9万円
労災保険(休業補償)
約300円(1ヶ月あたり)
雇用保険
約1,400円(1つの受給期間につき)
船員保険
約15万円

 このように労災保険に関しては、労災年金を受け取っている人は約9万円ほどの追加給付があります。一方、労災保険の休業補償を受けた人に関しては1ヶ月あたり約300円と少額です。

雇用保険の追加給付金額は簡易計算ツールがある

 雇用保険の基本手当(失業手当など)を受給した人については、厚生労働省の公式サイトに追加給付金額の簡易計算ツールが掲載されています。残念ながら労災保険の分は試算できませんが、雇用保険の追加給付に該当する人は、ぜひそちらを活用してみてください。

【外部リンク】

失業等給付(基本手当)の追加給付簡易計算/厚生労働省 公式サイト

https://www.mhlw.go.jp/stf/tuikakyuuhu_kanimeyasukeisan.html

すでに振り込まれた人はどのくらい?完了実績は?

 厚生労働省の発表によると、労災保険をはじめとする追加給付が、2022年2月までに振り込まれた人の数と合計支給額は、次のとおりです。

保険の種類
すでに振り込まれた人
追加給付の合計支給額
労災保険
約38.8万人
約189.1億円
雇用保険
約1,543.9万人
約212.0億円
船員保険
約1.03万人
約14.9億円

 このように、2022年2月現在でもまだ、労災保険などの追加給付は完了していません。

労災保険の追加給付はいつ振り込まれる?

 労災保険をはじめとする追加給付の振り込みは、2019年から開始され、現在でも継続しておこなわれています。厚生労働省によると、追加給付の手続きから振り込みまでには、数ヶ月の期間を要する場合があるとされています。
 「数ヶ月待っても一向に振り込まれない」と感じる人は、問い合わせ窓口へ連絡してみるとよいでしょう。

給付を受けるための手続き方法

 労災保険などの追加給付を受けるための手続き方法は、厚生労働省からお知らせの封筒を受け取ったかどうかで変わります。お知らせの封筒を受け取った場合とそうでない場合の、手続方法を解説します。

「お知らせ」の封筒を受け取った人

 厚生労働省から、労災保険などの追加給付に関するお知らせの封筒を受け取った場合、書類に記載されている方法で手続きをおこないましょう。手続き方法はいたって簡単であり、追加給付の振り込みを受けたい口座情報を記入し、返送するだけです。

「お知らせ」の封筒が届かない人

 厚生労働省は、労災保険などの追加給付の対象者全員を特定できているわけではありません。特に、下記のケースに当てはまる人の場合、追加給付のお知らせの封筒が手元に届かない可能性があります。

  • 2010年10月4日以前に氏名を変更した人
  • 住民票の住所とは別の場所に一時的に住んでいる人
  • 市町村へ海外転出届を提出し、住民票が除票されている人
  • 家族が労災保険などを受給中または受給後に亡くなった人の遺族

 もし上記に当てはまり、労災保険などの追加給付の対象者になると考えられる人は、コールセンターへ問い合わせて確認してみるとよいでしょう。

労災保険の追加給付は詐欺ではない?

 労災保険の追加給付は、厚生労働省による正式なものであり、詐欺ではありません。ただし、労災保険の追加給付を装った詐欺行為が生じる可能性はあるため、注意が必要です。
 労災保険をはじめとする追加給付の対象者に該当する場合、政府からお知らせの封筒が送られてきます(ただし、送られてこない場合もあります)。封筒の中身について、怪しいと感じた点があれば、まずは問い合わせ窓口へ連絡してみるのがおすすめです。

このような場合は詐欺の可能性があるため注意

 労災保険や雇用保険の追加給付に関して、次の機関以外から対象者に電話や直接訪問がおこなわれることはありません。

  • 厚生労働本省
  • 都道府県労働局
  • ハローワーク(公共職業安定所)
  • 労働基準監督署

 もし上記以外の名を語って電話や訪問がおこなわれた場合は、詐欺の可能性が高いので注意しましょう。
 また、上記の機関から電話や訪問があった場合でも、銀行口座の暗証番号を聞かれることはなく、手数料などを求められることもありません。銀行口座の暗証番号を聞かれたり、金銭を要求されたりした場合は、詐欺と判断してよいでしょう。

労災保険の追加給付についてよくある質問

 こちらでは、労災保険の追加給付に関してよくある質問に、Q&A形式で回答していきます。労災保険の追加給付に関して疑問がある人は、ぜひ参考にしてください。

問い合わせ窓口の電話番号を知りたい

 労災保険をはじめとする、追加給付に関する問い合わせ窓口の電話番号と受付時間は、次のとおりです。

問い合わせの種類
電話番号
受付時間
労災保険の追加給付について
0120-952-824

平日 8:30〜20:00

土日祝 8:30〜17:15
雇用保険の追加給付について
0120-952-807

平日 8:30〜20:00

土日祝 8:30〜17:15
船員保険の追加給付について
0120-843-547 または 0120-830-008

平日 8:30〜17:15

土日祝 受付不可
事業主向け助成金の追加給付について
0120-952-807
0120-952-807

 なお問い合わせ窓口は、午前中が混雑する傾向にあり、午後が比較的つながりやすいとされています。どの窓口に問い合わせていいかわからない場合は、いずれかの番号に電話をすれば、相談に乗ってもらえます。

自分が対象者か確認したい

 自分が労災保険などの追加給付の対象者に該当するかどうかは、上記の問い合わせ窓口へ確認するとよいでしょう。

手続きの必要書類は?

 追加給付を受給するための必要書類は、特にありません。対象者の本人確認ができれば、振り込み先の口座情報などを記入するだけで追加給付を受けられます。
 ただし厚生労働省は、下記の書類が残っている場合は手続きの役に立つ可能性があるため、引き続き保管をするように推奨しています。

保険等の種類
保管が推奨される書類
労災保険
支給決定通知・支払振込通知 、年金証書、変更決定通知書
雇用保険(その他含む)
受給資格者証、被保険者証、就職促進手当など(就職促進手当)、失業者退職手当受給資格証など(政府職員失業者退職手当)
船員保険
支給決定通知・振込通知、年金証書、改定通知書
事業主向け助成金
支給申請書類一式(支給申請書、助成額算定書)、支給決定通知書、その他のこれらの書類を代替できる書類等

まとめ

 すでに振り込まれた人もいる!通知が届かない場合があるため注意
 この記事では、労災保険の追加給付に関する情報を総合的にまとめました。記事の要点をごく簡単にまとめると、次のとおりです。

  • 労災保険の追加給付とは、過去の給付金の不足額の清算
  • 追加給付が生じた理由は、厚生労働省の毎月勤労統計調査に誤りがあったため
  • 追加給付は労災保険以外に、雇用保険や船員保険でもおこなわれる
  • 政府が把握できた追加給付の対象者には封筒が届く
  • 対象者でも封筒が発送されない場合があるため注意が必要
  • すでに振り込まれた人が多いものの、未完了の人もいる
  • 追加給付は詐欺ではないが、詐欺が発生する可能性もある

 なお労災保険などの追加給付は、2019年から開始されており、現在も継続して振り込み作業がおこなわれています。
​​​​​​​ 労災保険の追加給付の対象者であっても、政府からのお知らせが届かないケースがあるので、注意が必要です。もし自分が、労災保険の追加給付の対象者に該当する可能性があると感じたら、まずはコールセンターへ問い合わせてみるようにしましょう。

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