令和3年2月より福岡、長崎、佐賀、熊本在住の一人親方も受付可能となります。
一人親方とは、職人のうち弟子を持たずに一人で仕事をする方を言います。一人親方と言った場合、建設業に限定はしていませんが、通常の場合は建設業を指すことが多いようです。また本来は他人を雇用せず、また自身も他人から雇用されることなく働き、いわゆる個人事業主として請負で仕事をしている方がほとんどです。
ちなみに、個人事業主だからと言って一人親方とは限りません。個人事業主でも人を雇用していることがある場合は、従業員を対象に通常の労災保険と週当たりの勤務時間によっては雇用保険に加入させる必要があります。この場合、個人事業主の方は一人親方の労災保険の特別加入には該当しません。労災保険の特別加入が必要な場合は、中小事業主の労災保険に特別加入をお勧めいたします。
一人親方は請負契約で仕事をするのが基本です。請負契約とは簡単に言えば仕事の完成を請け負い、完成に対して対価を貰うというものです。例えば、マンションの一室の内装仕上工事を請け負った場合、内装仕上工事が終わらないと報酬を貰えないことになります。これはある意味雇用契約や委託契約よりも重い責任を負うことになります。
現在、この一人親方の請負契約が非常に大きな問題となっております。実態は雇用契約なのに表面上請負契約の形をとり、社会保険料の負担を逃れ、また本来あるべき労働基準法の保護からも外れているために不当な扱いを受けているケースがあります。
一人親方であることに何ら問題はありません。問題なのは一人親方に偽装することです。表面的な契約だけでなく、仕事の配分、作業時間、道具の負担など超えるべきハードルはいくつかありますが、正しく理解して正しく一人親方制度を活用する必要があります。
労災保険とは会社に雇用される従業員など労働者の業務災害や通勤災害に対して治療費や休業補償と言った様々な補償をおこなうことを目的とした国の制度です。しかし、建設業などに従事する一人親方と言われる方々は雇用されていない以上労災保険の対象外となるため仕事上又は通勤途上でのケガや病気に関して何の補償もないのが実情です。そこで、一人親方が実際には労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする方が多いとは言え、業務の実態や災害発生状況が限りなく労働者に近いということに着目し、国は一人親方に対して特別に労災保険の加入を認めています。この制度を労災保険の特別加入制度といいます。 労災センター共済会は国の承認を受けて一人親方の方の労災保険の特別加入をサポートしております。
ちなみに、労働基準法には災害補償の規定として療養補償、休業補償、障害補償、遺族補償、葬祭料、打切補償があります。労災保険法にも同じような規定があります。通常、労働者が業務上で被った災害は事業主に補償責任があります。しかし、中小企業など災害補償責任を充分に果たすことができない企業もあります。そのため労災保険法は労働基準法の災害補償の規定に保険の仕組みを取り入れることにより補償責任を確たるものにしたものと言えます。
労災保険に特別加入できる方とは、個人事業主又は法人の代表者で一人で事業に従事する方、もしくは年間延べ100日未満しか労働者を使用しない方々です。ただし、他人を雇用する日の合計が1年において100日未満となることが見込まれる場合は労災保険に特別加入できると考えて問題ありません。
一人親方の場合、グループで仕事をしているケースがあります。場合によっては同一の屋号を使用していることもあります。グループで仕事をする場合の問題点として、グループのリーダーが他人から依頼されグループ内の一人親方を建設現場に派遣した場合、労働者供給事業に該当するとみなされる恐れがあります。労働者供給事業は法律により一部の例外を除いて禁止されております。
労災保険に特別加入をすると、給付基礎日額に応じた額の補償を受けることができます。なお、通勤途上での事故(通勤災害)においても一般の労働者の場合と同様に取り扱われます。補償の内容は治療費、休業補償、障害補償、遺族補償がメインとなりますが、これ以外にもさまざまな形で補償がなされます。
※ ただし、二次健康診断等給付とボーナス特別支給金は支給されません。
さらに最近では労災保険に特別加入していることを現場入場の条件としていることが多く、労災保険の特別加入をしていることを証明する書類を提示することでより多くの仕事が依頼されるというメリットもあります。
保険給付は本来、労災保険の保険給付は会社に雇用されている労働者が業務に起因する怪我や疾病、又は通勤途上における怪我をした場合に対して会社に代わって国が被災者への補償を代行するというものです。労災保険の補償の仕組みは一人親方であっても変わりはありません。
ただし、一人親方の場合は雇用されている労働者と異なり請負契約でなければなりません。依頼された仕事が請負契約で、かつ請負契約本来の業務又はその付随する業務の中での怪我や疾病であれば労災保険の保険給付の対象となる可能性がだいぶ高まりますが、そもそも請負契約でない場合や請負契約であっても請負契約とは関係のない業務又は作業中の怪我や疾病は難しいと考えられます。
一人親方の労災保険に特別加入するには労働局から承認を受けた一人親方団体の組合員(会員)になる必要があります。そのため一般的には入会金、組合費(会費)及び労災保険料が必要費用となり、また場合によっては事務処理手数料を徴収する団体もあります。労災保険料以外の費用については各団体ごとに異なります。
参考までに労災センター共済会で労災保険に特別加入した場合の加入費用をご紹介いたします。他団体の場合にはその団体独自の費用体系が規約等に定められておりますので、他団体にご加入をご検討の場合はそちらの団体にお問い合わせください。
入会金 | 1,000円 | 入会時のみ頂戴いたします。 |
年会費 | 3,600円 | 銀行・コンビニでのお支払となります。クレジットカード支払いの場合、年会費に替えて月々450円の月会費を頂戴いたします。 |
労災保険料 | 加入月及び選択した給付基礎日額による | 給付基礎日額3500円、5000円、7000円及び10000円の中からお選びいただきます。 |
一人親方が業務が原因によるケガや疾病、又は通勤途上でのケガに対して、医療機関での治療費、休業した場合の休業補償(医師が労務不能と認めた期間)、後遺症が残った場合の障害補償、死亡した場合の遺族補償があります。他にもコルセット等の装具を購入した場合の費用や埋葬した場合の費用などが支給されます。
補償によっては加入時に選択した給付基礎日額が影響するものもあります。例えば、休業補償は1日当たり給付基礎日額の8割となっておりますが、治療費は給付基礎日額に関係なく全額支給されます。また、ボーナスを算定の基礎とするいわゆるボーナス特別支給金は一人親方の労災保険にはありません。
一人親方に限らず労災事故は業務災害と通勤災害に区分されます。業務災害とは業務上の負傷・疾病のことを言います。一方で通勤災害は自宅と仕事場との行き来の中で被る負傷のことを言います。なお、通勤災害における通勤とは合理的な経路を合理的な時間で往復することを言い、一般的に寄り道などすると寄り道以後は通勤とはならない可能性が高くなります。
一人親方の場合、業務災害であろうと通勤災害であろうと業務や通勤が請負契約に基づくものである必要があります。一人親方は請負契約に基づいて仕事を行い、その仕事のために通勤をします。したがって労災事故にあたっては請負契約が大前提となります。逆に請負契約に基づかない仕事や通勤は労災事故とみなされないと考えられます。例えば、知人の家を好意でリフォームした時のケガとか、自宅の倉庫の片づけ中のケガとかは請負契約がないため労災事故とするには難しいと言えます。
ちなみに、一般の労働者は通常雇用契約で仕事をするため一人親方の労災事故ほど厳密ではありませんが、仕事とは無関係な行為に対してはやはり厳しい判断が下されます。
一人親方は請負契約に基づいて仕事をし、その対価として報酬を貰うため、ご自身で所得税の計算をして申告しなければなりません。会社に雇われている場合は雇用契約を結びます。その場合は年末調整という形で所得税の清算を行いますが、個人事業主である一人親方は1年間の売上と経費をご自身で集計しなければなりません。この作業を確定申告と言い、1年間の集計結果を翌年3月15日まで税務署に届け出るのが一般的です。普段気にすることはあまりないでしょうが、ご自身の収入が給与収入なのか、事業収入なのかというのは確定申告にあたっては非常に大事なことです。
契約形態 | 収入の種類 | 所得税の申告 |
雇用契約(当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払う契約を言います。) | 給与収入 |
年末調整 (会社が行います。) |
請負契約(労働者が使用者に労働力を提供し、その対価として使用者は労働者に報酬を支払う契約を言います。) | 事業収入 |
確定申告 (自分で行います。) |
確定申告は請負契約における事業収入から必要経費を差し引いた額(所得)に対して、扶養控除や社会保険料を計算して所得税を算出します。ちなみに、一人親方の労災保険の保険料は社会保険料控除となります。
サラリーマンを代表に雇用契約で働く方々は会社が医療保険と年金の手続きをしてくれます。いわゆる社会保険(健康保険と厚生年金保険)というものです。手続きが終わると被扶養者の分も含めて健康保険証が会社の担当者より渡され、社会保険料(会社と本人で折半負担)が通常は月々の給与から本人負担分が控除されます。そのため特に意識することなく社会保険に加入し、保険料を支払うことになります。
(ちなみに、社会保険料以外にも雇用保険料、所得税、住民税、その他会社によっては互助会費などが控除されます。)
これに対して、一人親方は医療保険は国民健康保険(又は国民健康保険組合)、年金は国民年金となり、当然ながら雇用保険の加入はありません。そして、大事なことは確定申告と同様にこれらの手続きも自分自身で行う必要があります。また、健康保険と違い国民健康保険は被扶養者と言う概念はありませんので、被扶養者がいる場合は被扶養者の保険加入の手続きもしなければなりません。
雇用契約で働くサラリーマンやOL等は会社を辞めた時に一定の条件はありますが、会社から退職金が支給されます。退職金制度そのものがない会社もありますが、退職金制度を整備している会社はまだまだ多いようです。
一人親方の場合、請負契約であるため退職金はありません。そのため退職金も公的保険や確定申告と同様に自分で行う必要があります。ただし、公的保険や確定申告と異なり義務ではないため必要ない方は準備しなくてもかまいません。ただし、下記の制度は節税効果や利回りなどが他の制度よりも優遇されているため将来への備えとして預貯金よりもメリットは大きいものと言えるでしょう。
一人親方の労災保険は原則として他人を雇用せず、また他人に雇用されない方のための制度です。他人を雇用した場合は中小事業主の労災保険の特別加入に該当する可能性があります。
一人親方が足場上で、左手にバケットを持って、横移動しながら右手で持ったローラーを使い外壁塗装作業をしていたところ、足を滑らせてしまいウッドデッキ上に足から落下。両足首付近を負傷した。
一人親方が立ち馬に立ち、天板上を横移動しながら天井の養生作業中、立ち馬の脚位置が少しずつズレてしまったことにより、コンクリート床面に開いていたスリーブ穴に脚がはまり、立ち馬が傾いたため飛び降りたが、着地した右足の踵に強い負荷がかかり負傷した。
一人親方が気温が高く炎天下で下を向いての作業中に気を失い、そのまま頭からコンクリートの地面に約7~10mの高さから落下した。地面に身体を強打したことにより頭・顔・首・腰・胸・両手首を負傷した。
一人親方が立ち馬から降りる際、誤って梯子のない面からの降りようと足を踏み出してしまい、腰からコンクリート地面に転落し腰を負傷、同時に左手をコンクリート地面に強く打ち付けてしまい左手手首も負傷した。