一人親方ブログ

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労災保険における通勤災害とは?通勤途上での労災事故について解説します!

 労災事故は大きく分けると仕事中に仕事が原因でケガをした場合、あるいは疾病にかかった場合の「業務災害」と通勤途上でケガをした場合の「通勤災害」の2つがあります。

 労災保険は業務災害と通勤災害とを明確に区別しております。通勤災害において労災保険の使用が認められるにあたり、まず通勤が合理的なものであったかについて判断されます。
 また、通勤災害が自動車事故だった場合は、労災保険と自賠責保険の両方が使えるケースも少なくありません。
 業務災害は業種によって災害のパターンがありますが、通勤災害の場合はある人はマイカーで通勤し、またある人は公共交通機関を利用するというように通勤方法が異なり、また通勤経路に至っては無数にあるため業務災害以上に労災認定が難しい場合があります。

 この記事ではこのような通勤災害について具体例を紹介しながら解説致します。

目次[非表示]

  1. 1.労災保険とは?
    1. 1.1.労災保険料とその負担
    2. 1.2.労災保険の保険給付
    3. 1.3.労災保険の保険給付の名称の違い
    4. 1.4.労災保険の保険給付の申請用紙の違い
    5. 1.5.通勤災害時の療養給付における負担金
  2. 2.労災保険における通勤の定義
    1. 2.1.通勤とは?
    2. 2.2.住居と就業の場所との間の往復とは?
    3. 2.3.就業の場所から他の就業の場所への移動
    4. 2.4.住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動
    5. 2.5.合理的な経路とは?
    6. 2.6.合理的な方法とは?
    7. 2.7.逸脱・中断とは
  3. 3.通勤災害における自賠責保険
    1. 3.1.自賠責保険の補償内容
    2. 3.2.通勤災害で労災保険を使用した方がいいケース
  4. 4.通勤災害で労災保険の使用が認められるケース・認められないケース
    1. 4.1.出勤途中に忘れ物に気付いて自宅へ帰る途中で転倒してケガをしたケース
    2. 4.2.仕事帰りに飲食店に立ち寄った後、電信柱に接触してケガをしたケース
    3. 4.3.始業前に会社の更衣室のドアに手をぶつけて負傷したケース
    4. 4.4.昼食のために帰宅する途中で車と接触して負傷したケース
    5. 4.5.出勤前に自転車で子供を保育園に送る途中で転倒して負傷したケース
    6. 4.6.会社がある駅の手前の駅で降りて歩いていた時に階段を踏み外して負傷したケース
    7. 4.7.出勤前にコンビニに立ち寄った時にコンビニ内で転倒して負傷したケース
    8. 4.8.仕事が終わって居酒屋での忘年会に出席した帰り道で転倒してケガをしたケース
    9. 4.9.在宅勤務(テレワーク)中、トイレに行くために席を立った時にケガをしたケース
  5. 5.通勤途上で被災した(通勤災害)時に取るべき行動
    1. 5.1.最寄りの医療機関で受診
    2. 5.2.関係者へ連絡
    3. 5.3.書類を作成
    4. 5.4.書類の提出
  6. 6.まとめ

労災保険とは?

 労災保険は正式名称を労働者災害補償保険と言い、雇用関係にある労働者が業務上の事故や災害によるケガ、又は業務が原因の疾病及び通勤途上でのケガに対して必要な保険給付を行う国の法律です。

労災保険料とその負担

 労災保険料は会社(事業主)が全額負担します。雇用関係にある全従業員に業種ごとに決められた労災保険料率を乗じた額が労災保険料となります。労災保険料率は令和3年度においては2.5/1000~88/1000まで細かく決められています。3年ごとに改定され直近の改定は平成30年にありました。通常は令和2年度に改定予定でしたが、改定が見送られました。

 画像引用元:厚生労働省「労災保険率表(平成30年度~)」

 労災保険料率が異なるのは業種によって労働災害に遭うリスクが異なるためです。例えば、飲食店の接客と建設業のとび工事とでは当然危険度が違います。そのあたりの事情を勘案して労災保険料率が決められます。
 ちなみに、通勤災害は業種ごとに危険度が変わらないことから労災保険料率の中の通勤災害保険料率分(通常は通勤災害と二次健康診断の保険料率を合計して非業務災害率と言います)は業種ごとに0.6/1000となっており、全業種同じです。

 なお、一人親方の労災保険の特別加入のように労災保険料の負担が一人親方自身という場合があります。会社(事業主)が負担しなケースもあるということを覚えておきましょう。

労災保険の保険給付

 業務災害又は通勤災害に遭った労働者へ労災保険は必要な保険給付を行います。労災保険の給付の範囲は非常に幅広く、療養のための必要な給付だけでなく休業に対する補償、身体に後遺症が残った時の補償、さらに死亡した場合の遺族への補償などがあります。以下が労災保険の保険給付の一覧です。

労災保険の保険給付の一覧
保険給付の種類
保険給付の内容
療養(補償)給付
ケガや病気が治癒(症状固定)するまでの治療等
休業(補償)給付
休業4日目から給付基礎日額の6割。この他に休業特別支給金が2割加算されます。
障害(補償)給付

障害等級(1級から14級)に応じて障害(補償)年金又は障害(補償)一時金が支給されます。

  • 障害等級が1級から7級までは、障害(補償)年金が給付基礎日額の313日分から131日分支給されます。障害(補償)年金の受給者には障害(補償)年金のほかに障害特別年金と障害特別支給金が支給されます。
  • 障害等級が8級から14級までは障害(補償)一時金が給付基礎日額の503日分から56日分支給されます。障害(補償)一時金の受給者には障害(補償)一時金のほかに障害特別年金と障害特別支給金が支給されます。
遺族(補償)給付
遺族の人数及び生計維持関係の有無に応じて遺族(補償)年金又は遺族(補償)一時金が支給されます。
  • 遺族(補償)年金の場合、遺族の人数に応じて給付基礎日額の153日分から245日分支給されます。遺族(補償)年金の受給者には遺族(補償)年金のほかに遺族特別年金と遺族特別支給金が支給されます。
  • 遺族(補償)一時金は生計維持関係の遺族がいない場合に給付基礎日額の1000日分が支給されます。遺族(補償)一時金の受給者には遺族(補償)一時金のほかに遺族特別一時金と遺族特別支給金が支給されます。
葬祭料(葬祭給付)
実際に葬祭を行ったものに次のいずれか高い方の額が支給されます。
  • 315000円+給付基礎日額の30日分
  • 給付基礎日額の60日分
傷病(補償)年金
療養(補償)給付及び休業(補償)給付を受けている方が療養開始後1年6か月を経過しても傷病治らず、その傷病の程度が一定の傷病等級に該当している場合に労働基準監督署長の職権で支給されます。
介護(補償)給付
  • 常時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、171,650円を上限とする)。親族等により介護を受けており介護費用を支出していない場合、または支出した額が73,090円を下回る場合は73,090円。
  • 随時介護の場合は、介護の費用として支出した額(ただし、85,780円を上限とする)。親族等により介護を受けており介護費用を支出していない場合または支出した額が36,500円を下回る場合は36,500円。

 業務災害における保険給付と通勤災害における保険給付はその補償内容や手続きの仕方においてほとんど違いはありません。では、この両者何が違うのか?異なる部分について次節から説明致します。

労災保険の保険給付の名称の違い

 業務災害と通勤災害とでは保険給付の名称が異なります。前節の「労災保険の保険給付」において一覧で説明いたしましたが、業務災害の場合は例えば療養補償給付となり、通勤災害の場合は療養給付となります。そのほかにも業務災害の場合は休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付等となり、通勤災害の場合には休業給付、障害給付、遺族給付等となります。業務災害の場合事業主の責任という意味において補償という文言が入るのが特徴です。葬祭においては業務災害の場合は葬祭料と言い、通勤災害の場合は葬祭給付と言います

労災保険の保険給付の申請用紙の違い

 業務災害と通勤災害とでは申請用紙が異なります。下記は療養(補償)給付の書類ですが、通勤災害の場合は通勤方法や通勤経路(ルート)、そして通勤の所要時間を記載するのが特徴と言えます。療養(補償)給付だけでなく休業(補償)給付、障害(補償)給付、遺族(補償)給付などは申請用紙がそれぞれ別に用意されております。しかし、介護(補償)給付は業務災害と通勤災害と用紙は異なりません。その都度確認しながら用紙を準備することは非常に大事なことです。

通勤災害時の療養給付における負担金

 通勤災害に遭った者が休業給付を受ける場合は負担金として200円を限度に初回の休業給付から天引きされます。ただし、次に該当する場合は負担金の徴収はありません。

  • 第三者行為災害により負傷した場合
  • 通勤災害に遭った後3日以内に死亡した場合
  • 同一の通勤災害によりすでに負担金の徴収を受けた場合

労災保険における通勤の定義

 通勤災害と認められるには、まず通勤中といえるかどうかが大事なポイントになってきます。

 通勤には2種類あります。自宅から職場までの通勤(出勤)と職場から自宅までの通勤(退勤)です。自宅から職場まで、職場から自宅までどこにも寄り道せずにまっすぐ職場あるいは自宅に行く場合は特に問題ありませんが、通勤途中にスーパー等に立ち寄った場合や自宅以外にも住まいがある場合など通勤と言えるのかどうか。こういう場合は個別に判断せざるを得ません。

通勤とは?

「通勤」とは、就業に関し、次に掲げる移動のことを言います。以下の通勤を合理的な経路及び方法で行わなければなりません。自動車通勤であれば渋滞のための迂回や通勤ラッシュを避けるための早出出勤などは合理的と認められる余地はあります。しかし、友人に会うためなど合理的な事情もなく通常の経路を逸脱した場合などは合理的と認められる余地は少ないでしょう。

  1. 住居と就業の場所との間の往復
  2. 就業の場所から他の就業の場所への移動
  3. 住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動

住居と就業の場所との間の往復とは?

 住居とは住民票がある住所ではありません。実際に日常生活を送っている居所のことを言います。特殊なケースとして職場近くに自宅とは別に部屋を借りている場合は、そこも住居とされます。

 また、就業場所とはその日業務を開始する場所を指します。人によっては日ごとに就業場所が変わることもあるでしょう。営業職などは取引先に直行直帰というケースがあります。その場合は取引先が就業場所ということになります。

 建設業の一人親方などは建設現場が仕事場となるため就業場所が一定しないケースもあります。

就業の場所から他の就業の場所への移動

 最近は複数仕事を掛け持ちしている方が多くなってきました。この場合において、就業場所から就業場所までが通勤となります。もちろん、この過程においてもその移動が合理的な経路及び方法であったかで通勤かどうかが判断されます。

住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動

 一読すると非常にわかりづらい表現です。例えば東京から大阪に転勤して単身赴任となった場合を考えてみてください。この場合、東京の自宅、赴任先の大阪の居所、大阪の就業先の3つがあります。こういうケースにおいて東京の自宅から赴任先の大阪の居所間の移動も通勤と認められます。

合理的な経路とは?

 合理的な経路とは通勤のために通常利用することが想定される経路であれば問題ありません。複数の経路があっても、それらすべてが合理的な経路となります。したがって、会社に届け出ている経路とは異なる経路であっても合理的な経路である限りは通勤とされる余地はあります。
 一般的には特段の事情もなく著しく遠回りした場合などは合理的と判断されません。

 会社には電車通勤と届け出て、実際は自転車通勤という場合は労災保険における通勤ということでは問題ありませんが、会社規則において通勤手当の不正受給という問題が生じます。

合理的な方法とは?

 住居と就業場所との往復において徒歩、自転車、自動車などを使用する場合や電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合などは合理的な方法と認められます。
 ただし、酒気帯び運転はもちろん自転車の運転や徒歩であっても酒気を帯びた状態で安全とは言えない場合においては通勤と認めれないケースもあります。
 また、当然のことながら無免許運転も同様に通勤とは認められないでしょう。

逸脱・中断とは

 通勤において、合理的な経路をそれる行為を「逸脱」と言い、通勤とは関係のない行為を「中断」と言います。

 逸脱・中断した以降は通勤とはなりません。しかし、日常生活上必要な行為を最小限で行う場合においては、行為の後合理的な経路に服した場合においてはそれ以降通勤となります。
 なお、日常生活において必要な行為は下記とされています。

  1. 日用品の購入その他これに準ずる行為
  2. 職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
  3. 選挙権の行使その他これに準ずる行為
  4. 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
  5. 要介護状態にある配偶者、⼦、⽗⺟、配偶者の⽗⺟並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖⽗⺟および兄弟姉妹の介護(継続的に、または反復して⾏われるものに限ります。)

 また、次のような通常通勤の途中で行うささいな行為は、逸脱・中断になりません。

  1. 通勤経路の近くにある公衆トイレを利用する
  2. 通勤経路上にある店で、たばこや雑誌などを購入する
  3. 駅構内でジュースを立ち飲みする

通勤災害における自賠責保険

 通勤途上において交通事故に遭う場合があります。交通事故も通勤災害の一つです。交通事故において相手が自動車やバイクなどの場合、相手が加入している自賠責保険の使用ができるケースがあります。その場合、同じ事故に対して労災保険と自賠責保険の両方が使えることも少なくありません。しかし、労災保険と自賠責保険を同時に使用することはできずにどちらか一方を選択しなければなりません。
 厚生労働省は労災保険と自賠責保険が併用できる場合においては労災保険より自賠責保険の先行使用を勧めていますが強制力はありません。どちらを使用するか判断するのはあくまでも自分自身ということになります。
 労災保険が人にかけた保険であるのに対して、自賠責保険は自動車やバイクそのものにかけた賠償責任保険です。そのため、自動車やバイクを運転していて相手にケガをさせた場合に相手に対する賠償をするための保険となっています。
 このように労災保険も自賠責保険も国が運営する強制保険ですが、保険の目的が異なります。

自賠責保険の補償内容

 自賠責保険は交通事故などで他人をケガさせたり死亡させたりした場合に相手に対する損害賠償として保険金が支払われます。そのため以下のような場合については補償はありません。

  • 単独事故
  • 自分自身のケガ
  • 自動車の修理代
  • 物の損害
自賠責保険の補償内容
支払の対象となる損害
損害の範囲
支払限度額(一人あたり)
傷害による損害
治療費、看護料、諸雑費、通院交通費、義肢等の費用、診断書等の費用、文書料、休業損害、慰謝料
最高120万円
後遺症による損害
障害によって失った利益と慰謝料
  • 神経系統の機能、精神または胸腹部臓器の機能障害に著しい障害が残り、介護を要する場合(被害者1名に付き)
  1. 常に介護を要するもの(第1級):4,000万円
  2. 随時介護を要するもの(第2級):3,000万円
  • 上記以外の後遺障害(被害者1名に付き)
  1. 3,000万円(第1級)~75万円(第14級)
死亡による損害
葬儀費、逸失利益、
慰謝料(本人および遺族)
最高3,000万円

 自賠責保険は強制保険ですが、多くの人が自賠責保険に加えて任意保険に加入しているでしょう。任意保険は自賠責保険でカバーしきれない部分や自賠責保険の限度額をオーバーした場合のための保険です。任意ですので義務ではありませんが、万が一に備えて加入することをお勧め致します。

通勤災害で労災保険を使用した方がいいケース

 通勤災害において労災保険と自賠責保険が併用できるケースにおいて、厚生労働省の通達により自賠責保険が労災保険に先行して使用するように勧められておりますが、それでも労災保険を先に使用した方がいい場合があります。

  • 自賠責保険は被害者に重大な過失がある場合に損害賠償金額が減額されます。過失割合が7割未満の場合は減額はありません。7割以上となるような場合においては労災保険をしようしたほうがいいでしょう。
  • 自動車やバイクが絡む通勤災害は大ケガに発展しやすく治療費が思いのほか高くなることが多いでしょう。その場合、自賠責保険による治療費だけで120万円を超える場合も少なくありません。治療費だけで120万円を超えそうなときは労災保険を先に使用したほうがいいでしょう。

通勤災害で労災保険の使用が認められるケース・認められないケース

 第2章では労災保険における「通勤」の定義を解説致しました。この定義に照らしてどういう場合に通勤災害として認められ、どういう場合に通勤災害として認められないか具体的なケース(事例)を紹介いたします。
 なお、通勤災害とは通勤に内在する危険が具体化したものとされております。通勤途上においてケガをした場合であっても通勤していることが原因となって被災した場合でなければ通勤災害とは認定されません。

 通勤に伴う危険が具体化して被災したケース

  • 自動車にひかれた
  • 駅の階段から転落した
  • 歩行中に道路の段差に躓いた

 通勤とは関係なく被災したケース

  • 心臓病を患っていた方がたまたま通勤途上で駅のホームで倒れた
  • 私怨により仕事の帰り道で暴行を受けた
  • 帰り道に立ち寄った食堂で足を躓いて転倒した

 ただし、通勤災害の認定は労働基準監督署が行いますので、同様のケースにおいても異なった判断が下される場合もあります。
 以上を踏まえて実際に起こった通勤災害について解説致します。

出勤途中に忘れ物に気付いて自宅へ帰る途中で転倒してケガをしたケース

 このケースにおいて通勤災害と認められるかどうかのポイントは忘れ物が仕事に絡むものなのか、私物なのかです。全く仕事に関係のないものであれば通勤災害と認められる可能性は少ないと言えます。しかし、携帯電話はいかがでしょうか?私物であっても仕事に使用する方も少なくありません。この場合は完全に私物だと言えず仕事に絡むものとして通勤災害として認められる余地はあるでしょう。

仕事帰りに飲食店に立ち寄った後、電信柱に接触してケガをしたケース

 このケースにおいては食堂への立ち寄りが日常生活上必要な行為に該当するかどうかがポイントです。独身者は帰宅途中にスーパーへ立ち寄ったり、飲食店で夕飯を済ませるということがあるため通勤災害と認められる可能性は高いと言えますが、日常的に家で家族と食事をしている妻帯者がたまたま立ち寄ったという場合はその必要性がないため通勤災害とされる余地は少なくなります。

始業前に会社の更衣室のドアに手をぶつけて負傷したケース

 このケースにおいて始業前のため通勤災害と思われがちですが、一般的に通勤とは自宅の敷地内から会社の敷地内までとされております。そのため始業前であっても会社の敷地内で起きた事故は通勤災害ではなく業務災害となります。
 余談となりますが、戸建て住宅の場合は自宅の玄関ではなく住宅の敷地内を出たところから通勤が始まります。一方マンションやアパートの場合はどうでしょうか?最近は玄関がオートロック式のマンションが増えてきました。この場合、共有部分は誰でも出入りできるわけではないため通勤はマンションの敷地を出たところから始まります。しかし、アパートのように共有部分に誰でも出入りできる場合は玄関のドアを出たところから通勤が始まります。

昼食のために帰宅する途中で車と接触して負傷したケース

 自宅と会社が近い場合、朝出勤し昼頃自宅に帰り昼食をとってからまた出勤し仕事が終わったら自宅へ帰るという方もいるでしょう。この方のように1日のうちに通勤が2度ある場合はその都度労災保険でいう通勤として認められるかどうかですが、通勤は1日のうち複数回会っても問題ありません。従って、このケースの場合就業との関連が認められる限りその途中で起こった災害は通勤災害として認められます。
 なお、今回のケースは自動車事故のため自賠責保険と労災保険の両方が使用できることになりますので、被災者が都合がいいほうを選択します。

出勤前に自転車で子供を保育園に送る途中で転倒して負傷したケース

 共稼ぎの夫婦が出勤前に保育園や親類の家に子供を預けるために取る経路はそれが通常の経路とはずれた経路であっても就業のためのやむを得ない合理的な経路とされ、その途中に被災した場合は通勤災害と認められる可能性は高いでしょう。
 ただし、著しく迂回した経路を取った場合は合理的と判断されないこともあります。

会社がある駅の手前の駅で降りて歩いていた時に階段を踏み外して負傷したケース

 最終的には労働基準監督署が判断することになりますが、就業のため自宅と会社の往復という中で通勤方法及び通勤経路が通常と違う場合であっても方法、経路そして時間的にも通勤という行為が失われていなければ通勤災害と認定される可能性は高いでしょう。
 これが徒歩ではなくスケボーだった場合はどうでしょうか?労働基準監督署の判断にもよりますが、スケボーは遊びと考えられなくもありません。そのため徒歩の場合と比べて通勤災害と認定される可能性はだいぶ低くなるのではないでしょうか。

出勤前にコンビニに立ち寄った時にコンビニ内で転倒して負傷したケース

 このケースは先に説明した逸脱・中断に該当するケースです。コンビニに立ち寄っている間は通勤とはならず、その間にケガをした場合は通勤災害となりません。
 ただし、コンビニを出た後は通勤という行為に伏したことになりますので、コンビニを出てから会社に行くまでのケガをした場合は通勤災害となるでしょう。

仕事が終わって居酒屋での忘年会に出席した帰り道で転倒してケガをしたケース

 飲酒自体日常生活に必要な行為ではないため、居酒屋に行くために通常の通勤経路からそれた後、飲食中、その後の通勤経路を復帰にわたって通勤とはみなされません。そのため今回のケースでは通勤災害として労災として認定されないでしょう。
 ただし、忘年会が会社命令で断ることがほとんど不可能だったのような場合においては業務命令として業務の一環とみなされる余地はあります。その場合は労災認定されるかもしれませんが、その判断は労働基準監督署が行います。

在宅勤務(テレワーク)中、トイレに行くために席を立った時にケガをしたケース

 コロナ禍にあって在宅勤務をする方が増えてきました。在宅勤務には通勤というものが存在しません。そのため今回のケースは通勤災害にはなりません。しかし、トイレに行くという行為は生理現象のため業務に付随した行為です。従って業務災害に該当する可能性が高いと言えます。
 なお、このケースにおいてトイレではなく昼食のため席を立った場合はどうでしょうか?この場合は残念ながら労災と認定される可能性は低いでしょう。

通勤途上で被災した(通勤災害)時に取るべき行動

 通勤途上に限らずケガをして負傷した場合はとにかく冷静に行動することが大事です。我慢してもいいことはありません。早めに医療機関に受診すべきでしょう。

最寄りの医療機関で受診

 医療機関では「労災保険を使用する」旨をきちんと窓口の人に伝えましょう。健康保険等は絶対に使用しないでください。この時点では通勤災害に認定されるかどうかは分かりません。
 可能な限り労災指定医療機関で受診しましょう。その後の書類の手続きが労災指定医療機関の方がだいぶスムーズに進みます。

関係者へ連絡

 通勤途上で被災した旨を会社などの仕事関連の関係者に連絡することも必要なことです。場合によっては会社の人に書類の作成を依頼することも可能でしょう。

書類を作成

 通勤災害の場合、書類の作成にあたってどういう交通手段でどういう経路で通勤途中に負傷したのかについて詳細に記載する必要があります。
 例えば公共交通機関を利用している場合は最寄りの駅から目的の駅まで乗換駅や所要時間も含めて記載します。
 自動車等の交通手段であれば自宅から目的地まで地図をグーグルマップ等で用意しどのルートを通ったのか、また通る予定だったのかについて記載するといいでしょう。

  • 通勤災害で労災指定医療機関で受診した場合は、療養給付たる療養の給付請求書通勤災害用(様式第16号の3)を使用します。

    労災指定医療機関の場合、窓口での治療費の負担が不要です。ただし、初回の受診時は労災申請の書類を持参していないことが多いため、内金等の名目で代金の支払いを請求される場合があります。この場合、後日労災申請の用紙を持参すると支払った費用を全額窓口で返金してくれます。ただし、医療機関によって取り扱いが異なりますので詳細は受診する医療機関に確認します。

  • 通勤災害で労災指定外医療機関で受診した場合は、療養給付たる療養の費用請求書通勤災害用(様式第16号の5(1)) を使用します。

    労災指定外医療機関の場合、一旦窓口で全額負担します。その後労災申請の書類と領収書を労働基準監督署へ提出して負担した費用の全額を還付されます。審査が終わり費用が返金されるまで1ヵ月程度要します。

 下記は具体的な書類の記入例・書き方です。どういうルートで通勤をして、いつどこで労災に遭ったかということが記入する上で大事なポイントです。

 通勤災害は近くに会社関係の人がいないことが多いため現認者の記入を誰にするか悩まれる方がいます。現認者は労災について最初に報告を受けた方として仕事関係の方が望ましいでしょう。
 この後必要に応じて休業のための書類を作成して労働基準監督署へ提出しますが、通常は1ヵ月を区切りとして書類を作成するのが一般的です。なお、書類の作成は本来は請求者である被災者が書くのが筋ですが、会社関係者や一人親方であれば加入している一人親方団体等に相談して作成するのが一般的です。上記の記入例・書き方を参考に速やかに作成しましょう。

書類の提出

 書類の作成が終わったら書類の提出をしなければなりません。労災保険の保険給付には現物給付と現金給付の2種類があります。詳しい説明は省きますが、書類の提出先は大きく分けると医療機関と労働基準監督署があります。現物給付の場合は医療機関に提出をし、現金給付の場合には労働基準監督署に提出します。また、書類によっては添付書類が必要だったりします。労災保険の申請方法・手続方法を解説!で詳しく解説しています。

まとめ

 通勤途上でのケガ等が通勤災害と認められるには労災保険における通勤という要件を満たすことが必要です。通勤災害の場合、労災保険からどのような給付を受けられるのか?また、通勤災害が交通事故の場合、労災保険と自賠責保険の関係はどのようになるのか。労災事故は遭ってから調べるのではなく事前に確認しておくことが大事です。
 なお、労災事故において第三者が絡らむ場合は「 第三者行為災害届」を労働基準監督署に提出しなければなりません。この書類は通勤災害であっても業務災害であっても必要です。また、交通事故であっても交通事故でなくても提出義務があります。詳しくは労災保険における「第三者行為災害」の定義や手続き方法で解説しておりますのでご参考になさってください。

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