労災保険における「第三者行為災害」の定義や手続き方法
第三者行為災害とは、受給権者、事業主、政府のいずれにも該当しない第三者の行為により発生した災害のことです。第三者行為災害は交通事故や同僚による事故などさまざまなケースがあります。第三者行為災害を労災保険で手続きする際は被災者だけではなく、加害者も書類を提出する必要があります。
建設業の一人親方の場合、仕事柄外で活動することが多いでしょう。通勤で車を運転することもあれば、請負先で作業に従事したり、場合によっては共同で作業をすることもあります。そのため、他の職種よりも労災事故に遭う確率は高くなります。また、加害者になることも充分考えられます。そういった意味においてもこの記事を読んで被害者になった場合だけでなく加害者になった場合にどのような手続きが必要となるのか確認しておいたほうがいいでしょう。
目次[非表示]
- 1.労災保険における「第三者行為災害」とは
- 2.第三者行為災害の具体的な例
- 2.1.交通事故
- 2.2.同僚(従業員同士)による労働災害
- 2.3.動物による労働災害
- 2.4.暴行による災害
- 3.第三者行為災害に遭ったときに注意すること
- 3.1.勤務や通勤に関係があること
- 3.2.交通事故の場合は自賠責保険と調整すること
- 3.3.自己判断で示談にしないこと
- 4.第三者行為災害での労災保険の請求手続き
- 4.1.被災者が提出するもの
- 4.2.加害者が提出するもの
- 5.まとめ
第三者行為災害とは同僚やお客さん、通りがかりの人などの「第三者」による災害のことです。
労災保険における第三者行為災害は、通常の労災保険を申請するときよりも必要な書類が増えるため手続きが少し変わります。
この記事では、「第三者行為災害」とはどのような意味があるのか、第三者行為災害で労災保険を申請する際の申請手順や注意点を解説しています。
労災保険における「第三者行為災害」とは
第三者とは労災保険の当事者以外の人のことを指します。
労災保険の当事者は3タイプあります。
労災保険の受給権を持っている者、労災保険受給権者を雇用している事業主、労災保険を支給する政府です。
当事者以外が原因の災害があった場合のことを第三者行為災害といいます。
第三者行為災害の具体的な例
第三者行為災害の具体的な例は主に4つあります。
- 交通事故
- 同僚による災害
- 動物による災害
- 暴行による災害
それぞれを詳しく解説します。
交通事故
第三者行為災害で最も多いケースと考えられるのが交通事故によるものです。勤務や通勤で車を利用する会社は多くあります。
また、電車やバスなどの公共交通機関、自転車やバイク、徒歩なども勤務中や通勤中に第三者による災害があった場合は第三者行為災害になります。
労災保険における「第三者行為災害の交通事故は自動車だけではない」と覚えておくといいでしょう。
また、相手方がいる交通事故を起こした場合は「過失割合」を計算します。
過失割合とは双方にどの程度事故を起こした責任があるのか決めるためのもので、本人や保険会社を通して割合が決められます。
例えば、自分が運転している車が停車している車に対して衝突してしまったケースでは、停車していた車の過失割合は0%、衝突した車の過失割合が100%となるでしょう。
このように、事故を起こした原因が自身にしかない場合は第三者行為災害になりません。
同僚(従業員同士)による労働災害
同僚が原因の災害は第三者行為災害になります。
例えば、「同僚が操作する重機が当たって怪我をした」、「同僚が金属加工をする際に材料の固定ができておらず、材料が外れて当たって怪我をした」というようなケースです。
ただし、「勤務中に同僚と口論になり殴り合いの喧嘩に発展し、怪我をした」という場合は勤務中とはいえ業務を逸脱していると判断され労災保険が利用できないことがあります。
動物による労働災害
外回り営業などの業務中に、訪問先の家庭で飼育されているペットに噛まれたなど理由で負傷した場合などは第三者行為災害になります。
ほかにも通勤中のバス停で散歩中の飼い犬に噛まれた場合なども該当します。
直接被害をもたらしたのは、ペットではありますが一般的に怪我を負わせてしまった場合は飼い主が責任をとることになっています。
ただし、ケージの中に入れていたり、リードを利用し玄関に近づけないように対策をしたりしていたのにも関わらず、興味本位でペットにさわり怪我をした場合は飼い主の過失がないと判断されることがあるため第三者行為災害にはなりません、
暴行による災害
勤務中に暴行を受けた場合は第三者行為災害になります。
例えば、「居酒屋で酔っ払い客を注意した際に暴行を受けた」、「タクシー運転手が機嫌の悪い乗客から殴られた」といったケースが挙げられます。
ただし、私的な喧嘩や口論から喧嘩になり暴行を受けて怪我をした場合は、勤務中とはいえ業務を逸脱していると判断されることがあります。
第三者行為災害に遭ったときに注意すること
第三者行為災害に遭ったときに注意することは、3つあります。
- 災害にあった場所が勤務や通勤に関係があること
- 交通事故の場合は自賠責保険と調整すること
- 自己判断で示談にしないこと
それぞれ詳しく解説します。
勤務や通勤に関係があること
労災保険は勤務中や通勤中に生じた事故などが原因で、怪我や病気になった際に支給されます。
そのため、休憩時間にキャッチボールをして怪我をしたり、通勤中の寄り道をした際に暴行を受けたりといった災害は業務とは関係がないため労災保険が支給されません。
交通事故の場合は自賠責保険と調整すること
交通事故の場合は労災保険のほかに自賠責保険が支給されます。ただし、労災保険と自賠責保険の二重取りはできません。
被災者はどちらを利用するか自由に決められますが、補償額や補償の範囲はそれぞれ違います。
双方の補償内容や条件をよく確認したうえで、どちらに申請するのか選ぶといいでしょう。
自己判断で示談にしないこと
示談とは当事者同士の話し合いで解決することです。
例えば、交通事故の被害者が15万円分の苦痛だと請求しますが、加害者が10万円分の苦痛だと主張した場合、双方の話し合いにより示談金が13万円になる。 このような決着を示談により解決したといいます。
示談が成立したら被災者は示談内容以外の損害賠償請求権を放棄するとされ、ほかの請求内容の労災保険が給付されない決まりになっています。
また、示談をおこなう際は事前に労働局か労働基準監督署に示談をおこなうことを報告し、示談書を提出する必要があります。
示談をおこなう場合は当事者同士で解決できますが、労働基準監督署などを介さなければいけないと覚えておくといいでしょう。
第三者行為災害での労災保険の請求手続き
第三者行為災害により労災保険から保険給付を受ける場合は、保険給付の請求に必要な書類のほかに「第三者行為災害届」という書類も提出する必要があります。第三者行為災害届はこちら(記入例・記載例はこちら)からダウンロードできます。
また、第三者行為災害の加害者になった場合も提出が必要な書類があります。
被災者が提出するもの
被災者や被災者の遺族が提出するものは、以下の通りです。
- 第三者行為被害届
- 念書(兼同意書)
- 戸籍謄本
- 交通事故証明書または交通事故発生届 ※交通事故の場合
- 自賠責保険等の損害賠償金等支払証明書または保険金支払通知書 ※交通事故の場合、仮渡金や賠償金を受けている場合に必要
- 示談書の謄本 ※示談の場合
- 死亡検案書または死亡診断書 ※被害者が死亡している場合
必要な書類は事故の原因やどのような状況にあるのかによって変わります。
書類が不足していると補償金の支給までに時間がかかってしまうこともあるため、どのような書類が必要になるのか事前に覚えておくとスムーズに手続きができるでしょう。
加害者が提出するもの
加害者は「第三者行為災害報告書」の提出が必要になります。 第三者行為災害報告書は、労働基準監督署から求められる書類です。事故が発生した状況や、損害賠償金の支払い状況を確認するために利用されます。
まとめ
第三者行為災害は労災保険の申請と第三者行為被害届が必要
第三者行為災害とは、同僚やお客さんなどの第三者の行為による災害です。勤務中や通勤中に第三者により事故に巻き込まれることもあるかもしれません。
また、工事現場では同僚による災害、アルコールなどを提供している飲食店ではお客さんによる災害が多くなるでしょう。
第三者行為災害として労災保険の手続きをする場合、被災者は通常の労災保険の申請とは別に「第三者行為被害届」を提出しなければいけません。
加害者も「第三者行為災害報告書」という書類を提出する必要があるので、もしトラブルなどがあった際は、自分だけではなく相手にも書類を提出してもらうことを覚えておくといいでしょう。
一人親方の場合、被雇用者と違って所属する会社が手助けしてくれるとは限りません。被害者となった場合はもちろん加害者となった場合に相談できる所として一人親方の労災保険に特別加入することをお勧めいたします。