一人親方の解説

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一人親方の労災保険給付③

 建設業の一人親方が事故に遭う場合とは、例えば脚立上での作業中にバランスを崩して転落したり、道具の操作を誤り自信を傷つけてしまったり、現場に向かう途中に車に追突されてむち打ちになったりと言ったケースがあります。この場合、労災保険の給付を受けられるかどうかは個別に判断することになりますが、ポイントは請負契約に基づいた作業又はその作業に関連した業務の中で起きた事故かどうかということになります。

 労災保険の給付には上記の例のような脚立から転落のような明らかな外傷とは別に業務上疾病という分類があります。業務上疾病とはある作業に長期間・長時間にわたって従事していたために発症したもので、そのため発症原因が業務によるものかどうかの判断が非常に難しいケースが多いのも特徴です。支給申請にあたりまず最初にやるべきことは証拠集めとなります。

 また、業務上疾病は無制限に認められるわけではありません。労災保険法では労働基準法に規定する災害が生じた場合に必要な保険給付を行うと定め、それを受けて労働基準法は業務上の疾病及び療養の範囲を厚生労働省令で定めるとしています。これに基づき労働基準法施行規則第35条は具体的な業務上疾病を別表第1の2に列挙しています。これらについては業務と疾病との間の因果関係が医学的に確立しており、特段の反証がない限りは労災保険の給付が認められます。この別表1の2は別名職業病リストとも呼ばれ、リストにある業務に従事している方がリストにある疾病になった場合にある一定の証拠があれば労災保険の給付をしますというものです。なお、職業病リストの目的は被災者の業務上疾病であることを証明するための負担を軽くするためにあります。

 しかし、職業病リストがすべての業務と疾病を網羅しているわけではありません。職業病リストに規定されていない疾病は第11号の「その他業務に起因することの明らかな疾病」により個別具体的に判断することになります。事実、今でこそ職業病リストの第8号と第9号(下記に引用)に過労死や精神障害に関する項目がありますが、平成22年に追加されるまでは過労死や精神障害に関しては「その他業務に起因することの明らかな疾病」により給付請求をしてきました。そのため職業病リストにない疾病だからと言って労災保険給付が直ちに受けることができないというわけではありません。

八 長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。)若しくは解離性大動脈瘤又はこれらの疾病に付随する疾病

九 人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病



 業務上疾病の場合、証拠が非常に重要視されますが、一人親方の場合は雇用関係にないため労働者なら通常あるべきタイムカードや賃金台帳といったものがありません。そのため、日頃から家を出発した時間から家に帰ってきた時間までを記録し、また請負契約書等ファイリングをして記録を保管し従事していた業務の詳細を保存しておく必要があります。