一人親方の常用単価はいくら?職種別単価まで解説
建設現場で働いていると、一人親方になった方が稼げると言われていますが、常用単価は雇われ職人と一人親方でどちらが高いのでしょうか。
結論からいうと、一人親方になる方が稼げます。
本記事では、雇われ職人と一人親方の常用単価の違いだけでなく、職種ごとの収入の違いを解説しています。
また、一人親方が加入すべき保険や常用単価を上げる方法、注意点を解説しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次[非表示]
- 1.常用単価とは
- 2.一人親方の常用単価と雇われの単価の違い
- 3.一人親方の常用単価は職種によって違う
- 3.1.大工の常用単価
- 3.2.電気工事士の常用単価
- 3.3.塗装工の常用単価
- 3.4.内装工の常用単価
- 3.5.配管工の常用単価
- 4.一人親方が常用単価を上げる方法
- 4.1.資格を取得する
- 4.2.人脈を大切にする
- 4.3.職種を変更する
- 4.4.キャリアアップシステムへの登録する
- 5.一人親方が常用単価を上げる際に知っておくべき注意点
- 5.1.常用契約を締結してしまう
- 5.2.収入が上がると税金が増える
- 5.3.万が一に備え保険に加入する
- 6.まとめ
常用単価とは
常用単価とは、1日に働いてもらえるお金のことです。
労務単価や日当ともいい、作業員や運転手、溶接工、潜水士、大工などさまざまな職種の人が1日労働に従事したときの賃金を指します。
下記の図でわかるように、職種ごとに労務単価は違いますし、年々変化しています。
出典:国土交通省|令和6年3月から適用する公共工事設計労働単価について
一人親方の場合、持っているスキルや責任が大きい仕事ほど、常用単価は高くなる傾向になります。また、住んでいる地域によっても違いがあります。
例えば、大工の賃金を例にしてあげると、1番低い地域である岡山県が21,400円なのに対し、宮城県では30,200円と8,800円も違いがあります。
続いて、1人親方の常用単価と雇われの単価の違いを見ていきましょう。
一人親方の常用単価と雇われの単価の違い
大工や鳶職のような職人の方は、会社に雇われて働くよりも独立して一人親方になった方が稼げると言われています。
雇われ職人は会社員と同様に、スキルや経験があっても役職が上がらない限り、単価の上限は決まっています。
一方、一人親方はある程度常用単価は決まっているものの、元請けと直接交渉ができるため、交渉次第で単価は変わってきます。
では、一人親方と雇われ職人の常用単価がどれほど違うのか、「全建総連東京都連2023年賃金調査報告書」がおこなったアンケートをもとに解説していきます。
まず、雇われ職人(日給月払い)の、主な現場別賃金をみていきましょう。
最も賃金が高い「プラント」で、22,518円です。最も低い「大手住宅企業」の17,341円と比較すると5,000円以上の開きがあります。
一人親方の主な現場別の賃金は、下記の画像のとおりです。
出典:
雇われ職人と異なりに「商社・メーカー」が最も高く26,059円です。
雇われ職人の17,464円と比較すると、8,595円も高くなっていることから、一人親方の方が収入が多いといえます。
全体的に一人親方の方が収入は高いと言えますが、「施主から直接請」のようにその差が3,000円程度と雇われと一人親方とであまり差がないケースもあります。一人親方の場合は雇われ職人以上に仕事先を選ぶ必要があるといえるでしょう。
一人親方の常用単価は職種によって違う
一人親方といってもさまざまな職種があり、その仕事によって常用単価は変わってきます。
出典:全建総連東京都連2023年賃金調査報告書
ここからは、「全建総連東京都連2023年賃金調査報告書」の情報をもとに、以下5つの職種別に常用単価と仕事内容について解説していきます。
- 大工
- 電気工事士
- 塗装工
- 内装工
- 配管工
大工の常用単価
- 常用単価 21,223円
一人親方で大工をしている方の常用単価は21,223円です。大工の主な仕事内容は、建築士が作成した設計図に従って建築材料を加工したり、木造住宅の建設などが挙げられます。
近年は、建物を新築するだけでなくリフォームを依頼する人も増加しており、大工は手堅いニーズが見込まれる専門性の高い職業のため、比較的安定した収入を得られるでしょう。
また、一人親方の大工は発注者と直接やりとりする元請けとして仕事を受注できることから、単価交渉もしやすく雇われ大工より年収が高い傾向にあります。
電気工事士の常用単価
- 常用単価 21.728円
一人親方で電気工事士をしている人の常用単価は21,728円となっています。
電気工事士の仕事は、火事などの災害につながる危険性が高いため、国家資格がなければできない仕事です。
仕事内容はさまざまで、例えば以下のものがあります。
- 屋内配線
- 外線の配線
- 冷暖房設備の設置
- ビル管理
屋内配線ケーブルを家中に張り巡らし、コンセントやスイッチの取り付けや器具の設置をおこなったり、電線をビルや工場、各家庭へつなぎ電気が流れるようにします。
エアコン設備の設置は単価が高く、多くの案件をこなせば収入アップを期待できますが、シーズンによって収入が変動しやすい点には注意が必要です。
日常生活で電気が不要になることはないため、電気工事士の仕事需要は安定していると考えられます。
塗装工の常用単価
- 常用単価 21,845円
一人親方で塗装工をしている方の常用単価は21,845円となっています。
塗装工の仕事内容は、ペンキなどの塗料を使って、住宅や建物、道路、自動車、家具などに塗装していきます。
ただ塗装するのではなく、建物や素材を美しく見せるほか、水分の侵入を防いだり紫外線から守ったりするために、さまざまな塗料を使い分ける必要があるため知識や経験が必要です。
近年では、中古物件を購入しリフォームをする人も増え、需要が高い職業といえます。
いつの時代もリフォームはなくなることがないので、これからも仕事の需要が下がることはないでしょう。
内装工の常用単価
- 常用単価 22,321円
一人親方で内装工をしている方の常用単価は22,321円となっています。
内装工の主な仕事内容は、間仕切りの壁やクロスの貼り付けを石膏ボードや木材を用いる内装工事です。
建物の室内を快適な空間とするため、床や天井、壁などの内装をおこないます。
内装工事はテナントの入れ替わりがあれば都度依頼をもらえますし、劣化してくればメンテナンスも必要になるため、今後も需要が増加すると考えられます。
しかし、比較的早く一人前になりやすい職種と言われており、一人親方として独立する人が多いことが影響し、年収の上がり幅が少ないとされている点は注意が必要です。
配管工の常用単価
- 常用単価 22,730円
一人親方で配管工をしている方の常用単価は22,730円となっています。
配管工の主な仕事内容は、給水管や排水管、ガス管などの設備に関する工事を扱います。
管材を切断し、別の管材を接合させるなどの作業では、接合部分からの水漏れや空気漏れなどを防ぐため、ミリ単位での正確な作業が求められます。
家や工場、病院など管工事を必要とする建築物は多く、近年では既存の建物の老朽化によりリフォーム業務なども増加してきています。
今後もマンションやビルの建設は続くと考えられるため、配管工の需要がなくなる可能性は低いでしょう。
しかし、大規模な工事においては、一人親方は元請けになりにくく、自由な価格交渉が難しい点には注意が必要です。
一人親方が常用単価を上げる方法
独立して一人親方になったからには、常用単価を上げたいと思うのではないでしょうか。
ここからは、一人親方が平均的な常用単価から収入を上げる方法を解説していきます。
資格を取得する
資格取得は、年収アップにつながります。 ですが、資格を取った瞬間に常用単価が上がるわけではありません。
取得した資格をアピールすることでスキルや知識を示し、今まで受注できなかった仕事の依頼が増える可能性があります。
また、資格保持者にしかできない仕事であれば、収入が高くなるでしょう。収入アップにつながる資格を職種ごとにまとめているので、参考にしてみてください。
職種 |
資格 |
---|---|
大工 |
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電気工事士 |
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塗装工 |
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内装工 |
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配管工 |
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人脈を大切にする
一人親方が常用単価を上げるためには、人脈もとても大切です。人とのつながりを通して継続した依頼をもらえれば、安定した収入につながります。
例えば、以前勤めていた会社や組織、またはこれまでに築いた人脈から営業をかけることで安定した仕事につながることもあるでしょう。
現場で休憩が重なったら積極的に周りと話すことで、元請会社だけでなく他の一人親方とのつながりもでき、仕事を紹介してもらえる可能性もあります。
さらに、元請会社と良好な関係を築いておけば、仲のいいあなたに案件を回してもらえる可能性が高まるだけでなく、単価交渉もしやすくなるでしょう。
一人親方にとって仕事がない、もらえないは死活問題になるので、人脈が非常に大切といえます。
職種を変更する
一人親方で常用単価を上げたいなら、思い切って職種を変更するのも選択肢の一つです。
先述のとおり、職種によって常用単価は違うため、高単価な職種に変更することで常用単価が上がる可能性は格段にアップします。
しかし、まったく違う業種に変更してしまうと、見習いからになり一時的に収入は減ってしまう可能性が高い点には注意が必要です。
そのため、現在の職種に近い職種を選び、対応領域を広げ、他の仕事を巻き取ることで収入アップを狙うのも一つの手といえます。
キャリアアップシステムへの登録する
キャリアアップシステムは建設業従事者の技術、経験、資格をデータ化し一元管理することで適正な評価を受けられるようにすることを目的として平成31年より運用が開始されました。建設業従事者のキャリアを共有することで、仕事を発注する側の施主や元請けにとってだけでなく、常用の職人や一人親方にとってもメリットは高いと言えます。
詳細はこちらで詳しく解説しております。
一人親方が常用単価を上げる際に知っておくべき注意点
ここからは一人親方が常用単価を上げる前に知っておくべき、以下3つの注意点を解説していきます。
- 常用契約をしてしまう
- 収入が上がると税金が増える
- 万が一に備え保険に加入する
常用契約を締結してしまう
一人親方が常用契約書を締結することは、法律上禁止されています。
なぜなら、建設業では建設業務をおこなう場合に、労働者の派遣をしてはいけないことが法律で定められているからです。
常用契約とは、1人の作業員が1日働く労働量を1人工として計算し、材料や運搬費などは発注元が負担することが一般的で、費やした労務費相当をもらうことです。
会社員をイメージしていただくと、わかりやすいと思います。
一人親方が常用契約を結んだ場合、形式的に派遣のモデルで働くことになります。この場合、罰則として1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が課されるので注意が必要です。
一人親方が案件を受注する際は、必ず請負契約を結びましょう。
収入が上がると税金が増える
収入が上がれば、税金が上がることも頭に入れておきましょう。手取り金額の計算法は以下のとおりです。
収入金額-経費(諸経費+国民年金なとの社会保険料+税金)=手取り金額
になります。
課税される所得金額ごとの税率と控除額は、下記表を参考にしてください。
課税される所得金額 |
税率 |
控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで |
5% |
0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで |
10% |
97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで |
20% |
427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで |
23% |
1,536,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで |
33% |
1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで |
40% |
2,796,000円 |
40,000,000円以上 |
45% |
4,796,000円 |
参照:国税庁|所得税の税率
収入によって税率が変わるため、いくら引かれるのか、手元に残るお金はいくらかを意識しましょう。常用単価が上がったからといって、使いすぎて税金が払えないことがないようにしてください。
万が一に備え保険に加入する
一人親方は、病気やケガなど万が一に備えておく必要があります。
いくら常用単価を上げて収入が増えても保険未加入であれば、病気やケガをした際に収入源がなくなってしまい生活ができなくなってしまいます。
一人親方が特別に加入できる保険もあるので、詳しく解説していきます。
社会保険の加入
社会保険とは、病気やケガ、失業、労働災害などに備えるための保険制度で、以下5つの保険の総称をいいます。
社会保険の種類 |
概要 |
---|---|
公的医療保険 |
病気やケガで病院に行った際の医療費の一部を負担する保険 |
年金保険 |
高齢になったときや障害が残って動けなくなった場合や、家族を残して亡くなった場合などに、年金や一時金の支給をおこなう保険 |
介護保険 |
介護施設の利用や自宅での介護を受けるようになった場合、費用の一部を負担する保険 |
雇用保険※一人親方は加入不可 |
失業した場合や、育児・介護休業を取得した場合に給付金を支給する保険 |
労災保険 |
労働者が業務上や通勤途中にケガをし障害が残る、死亡するなどの問題が起きたときに労働者自身や残された遺族のために給付金を支給する保険 |
社会保険は、公的な費用負担により、被保険者・被扶養者が、疾病や高齢、介護や失業、労働災害などのリスクに備えるための制度です。
日本は国民皆保険の国であり、一人親方もそれは変わりません。
そのため、自治体が運営する国民健康保険、もしくは業種ごとに組織される国民健康保険組合いずれかの加入が義務付けられています。
近年では、社会保険の未加入の企業や一人親方に対し、特段の理由がない限り現場入場を認めないケースがあるため、必ず加入しておきましょう。
労災保険の特別加入
原則として、一人親方(事業主)という事業形態は、労災保険に加入できません。
しかし、一人親方は労働者として現場に出て働くことがほとんどになるため、仕事で労災にあうリスクが高く、労働者に近いといえます。
そのため、一定の要件に該当する方を対象に、特別に労災加入を認めています。
民間保険の加入
民間保険とは、私的な契約にもとづく保険で、公的医療保険でまかなえない費用や、医療費の自己負担分の支払いを補助したりするためのものです。
具体的に公的医療保険でまかなえないものは、以下のようなものがあります。
- 入院時の食事代
- 差額ベッド代
- 保険適用外の治療費や手術費
- 高度先進医療費
もし、長期入院になった場合、上記に挙げた自己負担額がどんどん増えていきます。
「自分は大丈夫」と思っていても、思いがけない事故や病気にかかってしまうこともあるので、さまざまなリスクに備えて民間保険の加入も検討してみましょう。
まとめ
本記事では一人親方の常用単価について解説しました。再掲にはなりますが、職種別の常用単価表になります。
- 職種 常用単価
- 大工 22,184円
- 電気工事士 18,762円
- 塗装工 20,867円
- 内装工 22,384円
- 配管工 22,214円
一人親方の常用単価は職種ごとに違い、約22,600円になります。この金額は全建総連東京都連2023年賃金調査報告書におけるアンケート結果の平均値であるため、交渉次第でさらに稼げる可能性はあります。
常用単価を上げるためには、スキルを上げるのはもちろんですが、職種の変更や人脈を大切にすることを意識しておきましょう。
取引先と信頼関係を築き、自身のスキルや実績をアピールし単価交渉をすることも大切です。
- 一人親方には、万が一に備えて労災保険への特別加入がおすすめ
- 労災保険に入っていると、万が一の際にも安心
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