一人親方が現場に入れない原因と解決法を徹底解説
近年、一人親方が現場に入れない、または入場制限が厳しくなってきたと聞くことが多くなってきました。
現場で仕事ができなければ、生活に影響が出るため、一人親方にとっては死活問題です。
そのため、「なぜ一人親方は現場に入れないのか」「解決法はないのか」と思っている一人親方の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、一人親方が現場に入れない原因である「社会保険の未加入」や「偽装一人親方」について解説しています。
元請け企業から現場に入れないと言われ、予定していた現場で作業ができないということにならないように、最後まで読んでしっかり理解しておきましょう。
目次[非表示]
- 1.一人親方が現場に入れない原因は社会保険の未加入
- 2.一人親方が現場に入れない事態を防ぐための3つの社会保険
- 2.1.健康保険
- 2.2.年金保険
- 2.3.労災保険(特別加入制度)
- 3.偽装一人親方を指摘されると現場に入れない
- 3.1.なぜ偽装一人親方は問題なのか?
- 3.2.偽装一人親方と指摘されないための対処法
- 4.まとめ
一人親方が現場に入れない原因は社会保険の未加入
一人親方が現場に入れない原因は、社会保険の未加入が原因です。
国土交通省は、元請け企業および下請け企業の取組の指針となる「社会保険の加入に関する下請け指導ガイドライン」を策定しています。
このガイドラインによると、平成29年以降元請け企業に対し、「社会保険に未加入である建設企業を下請け企業として選定しない」と定めており、個人の一人親方についても、「適切な保険に加入していることを確認できない場合、特段の理由がない限り現場入場を認めない」と記載されています。
さらに、令和2年10月より建設業者の社会保険の加入が「建設業許可・更新の要件」とされるなど、企業単位で社会保険の加入確認が厳格化し、施工体制台帳に社会保険の加入状況を記載することが必要となりました。
新規入場者の受け入れに際して、各作業員について作業員名簿の社会保険欄を確認し、未加入等が発覚した場合には、作業員名簿を作成した下請け企業に対し、作業員を適切な保険に加入させるように指導することになっています。
一人親方が現場に入れない事態を防ぐための3つの社会保険
一人親方が加入するべき社会保険は以下の3つになります。
- 健康保険
- 年金保険
- 労災保険
順に解説していきます。
健康保険
健康保険とは、会社員や公務員が加入する公的医療保険です。業務外で病気やケガをしたときの医療費が1〜3割の自己負担で済むようになっています。
また、子供が生まれたときは出産手当金、病気やケガが原因で働けない場合には傷病手当が支給されます。
日本では国民皆保険制度のもとで全国民は、何らかの公的医療保険に加入する必要があるため一人親方も例外ではありません。
しかし、一人親方は会社員や公務員ではないため、「国民健康保険」もしくは「建設国保」に加入する必要があります。
それぞれの特徴を解説していきます。
国民健康保険
国民健康保険は、自営業の方や会社を退職された方などが加入する健康保険です。
国民健康保険の運営は、被保険者が住んでいる各都道府県と市町村が共同保険者となって運営しています。そのため、居住地により保険料が異なります。
ご自身の保険料率がどれくらいなのか把握するには、居住する市区町村のホームページを確認しましょう。
建設国保
建設国保は、国民健康保険組合が運営している保険です。
建設業に従事されている方が組合員となり、基本的に国からの補助金と被保険者となる組合委員の保険料によって運営されています。
建設国保の保険料は、加入する組合や加入者の所属や年齢、家族構成によって変わります。
一緒に加入されている家族の人数が増えるにつれ、保険料も増額していくデメリットがある一方で、所得の増減で保険料が変わらないというメリットがあります。
年金保険
年金保険は、現役世代が支払った保険料を、現在の高齢者の年金給付に充てる賦課方式で運営されている制度です。
日本の公的年金制度は、国民皆保険という特徴を持っており、20歳〜60歳のすべての人が加入しなければいけません。
第1号被保険者である一人親方は、自営業者や学生、無職者を対象としている国民年金に加入する必要があります。
保険料を納付し、所定の要件を満たすことで、老齢になった際は「老齢基礎年金」、病気やケガなどで障害が残った際は「障害基礎年金」、遺族になった際には「遺族基礎年金」といった年金を受給できます。
労災保険(特別加入制度)
労災保険とは、労働者が業務中や通勤時に怪我や死亡をしたり、障害が残った際に、労働者やその遺族に必要な保険給付をおこなう制度です。
労災保険は、会社に雇用され、仕事をおこなう労働者を対象にした制度になるため、一人親方は加入できません。
しかし、一人親方は業務の実態が雇用されている労働者と変わらないことから、特別加入が認められています。
注意点として、特別加入の労災保険は、任意加入になるためご自身で手続きする必要があります。
特別加入できる一人親方は、次の1〜11の事業を常態として労働者を使用しないでおこなう者に限られています。
- 自動車を使用して行う旅客もしくは貨物の運送の事業(個人タクシー業者や個人貨物運送業者など)又は原動機付自転車もしくは自転車を使用して行う貨物の運送の事業(仲介事業者を利用した飲食物等のデリバリーサービス業者など)
- 建設の事業(土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊もしくは解体又はその準備の事業)(大工、左官、とび職人など)
- 漁船による水産動植物の採捕の事業(7に該当する事業を除きます。)
- 林業の事業
- 医薬品の配置販売(医薬品医療機器等法第30条の許可を受けて行う医薬品の配置販売業)の事業
- 再生利用の目的となる廃棄物などの収集、運搬、選別、解体などの事業
- 船員法第1条に規定する船員が行う事業
- 柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師が行う事業
- 高年齢者の雇用の安定等に関する法律第10条の2第2項に規定する創業支援等措置に基づき、同項第1号に規定する委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が新たに開始する事業又は同項第2号に規定する社会貢献事業に係る委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が行う事業
- あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律に基づくあん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゆう師が行う事業
- 歯科技工士法第2条に規定する歯科技工士が行う事業
参照元:厚生労働省|特別加入制度のしおり
労災保険に特別加入することで、万が一のときに、少ない賭け金で大きな保証を受けることができます。
保証内容が知りたい方やよくわからないという方は、簡単費用シミュレーションも無料でできるため一人親方団体労災センター共済会のホームページを確認してみてはいかがでしょう。
偽装一人親方を指摘されると現場に入れない
国土交通省は、偽装一人親方の現場入場を制限する方針を示し、もし雇用形態にある一人親方がいた場合、下請けとして選定しないように求めています。
偽装一人親方とは、正社員のように働いているにも関わらず、契約内容だけ個人事業主として働くことです。
例えば、以下のような技能者を偽装一人親方と考えます。
- 法定福利費等の労働関係諸経費の削減を意図して、雇用関係にあった労働者を個人事業主として請負契約を形式的に結ぶ
- 特定の建設会社に専属従事し、労働日数や賃金を管理され、仕事に対する指揮命令を受ける関係にあるが、雇用契約を締結していない
- 表向きは社員と呼び、会社のヘルメットやユニホーム、名刺等を支給しながらも、実態は本人の希望等を理由として社会保険に加入せず請負として扱う
- 作業員名簿上は社員としながらも、社会保険を適用除外扱いとして、雇用契約を締結していない
なぜ偽装一人親方は問題なのか?
偽装一人親方の問題点は、働き方の実態が雇用契約における従業員と変わりがないにも関わらず、会社が社会保険料の負担を免れることなどを目的として、請負の形態で契約締結されていることです。
なぜ偽装するのかというと、雇用契約の場合、雇用主が従業員の社会保険料の半分を負担しなければならないのに対し、請負契約は自身で加入する必要があるため、雇用主は社会保険料の支払いを逃れることができるからです。
また、労働関係法令が適用されなくなる点も注意しましょう。
請負契約の一人親方は、成果物に対して報酬が発生するため、残業代や休日出勤の支払いは必要なく、有給休暇も取らせずにすみます。
このように偽装一人親方は、会社側は利益を得るのに対し、労働者側は不利益が大きく深刻な問題となっています。
偽装一人親方と指摘されないための対処法
偽装一人親方と指摘されないために、実態をともなう請負契約を締結する必要があります。
偽装一人親方は、請負契約にも関わらず社員と同様に働かされる点が問題でした。つまり、偽装一人親方とならないためには実態としても請負契約でなくてはなりません。
適正な一人親方とは、請け負った仕事に対し、自らの責任で完成させることができる技術力と責任感を持ち、現場作業に従事する個人事業主と国土交通省では定義されています。
例えば、元請けからの仕事を拒否する自由があるのか、勤務時間の拘束性はあるのか、仕事の機械や資材を自ら用意しているのか、報酬が従業員と比べて高額であるか、などの基準を満たす必要があります。
まずは国土交通省のチェックシートを活用し、一人親方としての働き方が正しいのか確認してみてください。
今後、請負契約をおこなう際はしっかり契約内容を確認し、おかしいと感じたら元請け業者に相談しましょう。
まとめ
本記事では、一人親方が現場に入れない原因や解決法について解説してきました。
建設業界の社会保険加入や偽装一人親方に対する規制は、本格的に国が対応し年々厳しくなっています。
しかし、社会保険に加入している適正な一人親方であれば、今後も問題なく仕事を続けられます。
一人親方労災保険の特別加入についてわからない場合は、一人親方団体労災センター共済会に相談してみてはいかがでしょう。
また、請負契約を締結する際は、自身が損をしないためにも請負業者に契約内容を確認し、偽装一人親方にならないようにしてください。