一人親方が経費として落とせるものや平均額を解説

一人親方が経費として落とせるものや平均額を解説

 一人親方をやっていると、さまざまな物を購入するため、「何が経費として計上できるのか」と疑問に思うことがあるのではないでしょうか。
 結論からいうと、一人親方の業務に関係のある物であれば経費計上できます。しかし、労災保険料など経費として計上できないものもあります。

 経費計上できるものとできないものを理解し、確定申告で正しく経費を計上することができれば、課税対象額を減らせるため節税につながり手元に残る金額が多くなります。
 また、正しく確定申告することで、税務署から税務調査に入られる心配もなくなるでしょう。

 本記事では、一人親方が経費として認められているものや、一人親方の経費の平均額、よくある質問などを詳しく解説しています。さらに、確定申告についても解説しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。

目次[非表示]

  1. 1.一人親方の経費とは?
  2. 2.一人親方の経費として認められているもの
    1. 2.1.旅費交通費/荷造運賃
    2. 2.2.消耗品/雑費
    3. 2.3.接待交際費
    4. 2.4.地代家賃/光熱費/通信費
    5. 2.5.組合費/租税公課
    6. 2.6.各種損害保険
    7. 2.7.減価償却費
  3. 3.一人親方の経費の平均額
  4. 4.一人親方が経費として計上するには確定申告が必要
    1. 4.1.青色申告
    2. 4.2.白色申告
    3. 4.3.確定申告の必要書類
    4. 4.4.確定申告の提出方法
      1. 4.4.1.税務署の窓口で提出
      2. 4.4.2.郵送で提出
      3. 4.4.3.e-Taxで提出
      4. 4.4.4.提出期限
      5. 4.4.5.難しいと感じたらクラウド会計ソフトもしくは税理士に相談
  5. 5.一人親方の経費に関するよくある質問
    1. 5.1.飲食代は経費として申告してもいいのか?
    2. 5.2.自家用車は経費として申告してもいいのか?
    3. 5.3.税務調査を受ける前の対処法は?
    4. 5.4.労災保険料や入会金、会費の勘定項目は?
  6. 6.まとめ

一人親方の経費とは?

一人親方の経費

 経費とは、事業をおこなうために使用した費用のことです。
 一人親方の経費で例えると、住宅を建てるために必要な木材や、現場に移動するための交通費など業務上必要な物やサービスが該当します。
 事業にかかる税金は、売上から経費を引いた所得に応じて税率が決まり計算されます。
 日本は所得税や相続税、贈与税を計算する際に、「超過累進税率」が用いられており、課税される所得金額が少なければ、納める税額が低くなります。
 超過累進税率とは、所得の金額に応じて区分ごとに税率を変える方法のことです。
 収入を増やすためには、多くの経費を正確に計上することが重要になってきます。課税される保得金額に対する税率は、以下のとおりです。

課税される所得金額
税率
控除額
1,000円から1,949,000円まで
5%
0円
1,950,000円から3,299,000円まで
10%
97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで
20%
427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで
23%
636,000円
9,000,000円からら17,999,000円まで
33%
1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで
40%
2,796,000円
40,000,000円以上
45%
4,796,000円


参照:国税庁|所得税の税率

 経費として認められているものを理解し、正確に計上して所得を小さくすることは売上を増やすことと同様に大切です。

一人親方の経費として認められているもの

 ここからは、一人親方の経費として認められているものを7つ紹介し解説していきます。

項目
経費計上できるもの
旅費交通費/荷造運賃
  • 電車
  • バス
  • タクシー
  • 高速料金
  • コインパーキング
  • 出張費、宿泊費
消耗品/雑費
  • 工具
  • 作業着
  • 文房具
  • 事務用机
  • 椅子
  • パソコン等
接待交際費
  • 接待飲食
  • 接待時のタクシー代
  • お中元
  • お歳暮
  • 祝儀、香典
地代家賃/光熱費/通信費

·        事務所家賃

·        月極駐車場

材料置き場借地料
組合費/租税公課
  • 組合費
  • 個人事業税
  • 固定資産税
  • 自動車税
  • 印紙税
各種損害保険
  • 自動車保険
  • 火災保険
  • 地震保険
減価償却費
  • 車両
  • 工具
  • 機械装置

旅費交通費/荷造運賃

 一人親方の業務における交通費や荷造り運賃は、経費として計上できます。
 交通費を経費にできる条件は、事業に欠かせないものであるかどうかが判断基準です。
 例えば、自分の事務所に行くまでの交通費や現場に行くまでの交通費、取引先へ営業に行くための交通費が対象になります。
 しかし、プライベートで使用した交通費は、経費として認められません。
 荷造運賃として経費計上できるものは、以下のようなものがあげられます。

  • 郵便手数料
  • 宅配便料金
  • 運送費、運搬費
  • 段ボール
  • 緩衝材
  • ビニールテープ

 また、商品の発送に必要な材料費や運賃だけでなく、人件費やガソリン代なども荷造運賃に含まれます。

消耗品/雑費

消耗品とは、国税庁の「帳簿の記帳の仕方」には以下のようなものがあげられています。

  1. 帳簿、文房具、用紙、包装紙、ガソリンなどの消耗品購入費
  2. 使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費
  • 取得価額が10万円未満であるかどうかは、税込経理方式、または税抜経理方式に応じ、その適用している方式により算定した金額によります。

引用元:国税庁|帳簿の記帳のしかた-事業所得者用

 例えば、一人親方の場合手袋やペンチ、ドライバー、ガソリン代があげられます。耐用年数が1年以上で、購入金額が10万円以上のものは「工具器具備品」として処理します。
 消耗品は雑費と間違えられやすいので、違いについて紹介しておきます。

  • 消耗品:消耗性で、使用期間が1年または少額(10万円未満)のものの購入費用
  • 雑費:他の勘定科目に分類できない、少額で一時的な費用

 雑費は法律上の定義はなく、以下のようなものが当てはまります。

  • クレジットカードの年会費
  • 銀行振込手数料
  • ゴミの処分費用
  • 有料サービス・動画の課金代金
  • 引越しの手数料
  • 清掃・クリーニングなどの手数料

接待交際費

 接待交際費とは、取引先や仕入れ先といった事業に関係ある企業の人に対して、接待や打ち合わせをした場合にかかった費用のことです。 
 国税庁によると、慰安や贈答、その他これらに類する行為のために支出したものも接待交際費に含まれます。 
 交際費等の範囲から外れるものは、以下のものがあります。

  • 専ら従業員の慰安のためにおこなわれる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
  • 飲食その他これに類する行為(以下「飲食等」といいます。)のために要する費用(専らその法人の役員もしくは従業員またはこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除きます。)であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が5,000円以下である費用

 接待交際費は、プライベートの飲食との線引きが難しく、税務署からのチェックが厳しい傾向があるので注意しましょう。

地代家賃/光熱費/通信費

 地代家賃とは、借りている土地や建物の賃料のことです。
 事務所を借りている場合は事務所の賃料、材料置き場として土地を借りている場合は土地の賃料も含まれます。
 自宅兼事務所の家賃や電気代、通信費などの家事関連費は、事業に係る部分を按分して必要経費として計上することができます。
 按分の辞書的な意味は、物品や金銭などを、基準となる数量に比例して割り振ることを言います。 
 経費計算における按分とは、事業で使う費用とプライベートでの家賃などであれば、面積割合といったように、合理的な比率で分けることです。
 例えば、自宅の一部を事務所として使用している場合は、業務時間や日数、占有面積などが基準になります。

組合費/租税公課

 一人親方団体に支払う費用のうち、入会金や組合費は経費にできます。団体によっては組合費ではなく、会費と呼ぶこともあります。
 確定申告の際に経費計上できる租税公課は、事業を運営するうえで必要なものが対象です。
 例えば、個人事業税、固定資産税、自動車税、印紙税なども租税公課として経費の対象になります。
 個人事業主の所得税や住民税などは、個人事業主にかかる税金なので租税公課になりませんし、罰金や延滞税など、罰則的な意味合いを持つものも経費として認められないので注意が必要です。

各種損害保険

 自動車保険や火災保険、地震保険などの保険費用は、経費として申告できます。
 基本的に個人事業主や専従者など、事業と直接関係ないものにかけられた保険料は経費になりません。
 例えば、以下の保険料は経費として申告できないので注意してください。

  • 生命保険料
  • 国民健康保険料/国民年金保険料
  • 一人親方労災保険料

減価償却費

 減価償却費とは、固定資産の取得にかかった費用の全額を取得した年の費用とせず、耐用年数に応じて配分し、毎年少しずつ費用計上していくように分割した費用のことで、経理上の仕訳に使われる勘定項目です。
 例えば、120万円の普通自動車を購入した場合、耐用年数は6年ですので、毎年20万円ずつ減価償却費として計上します。
 耐用年数は資産によって異なるため、気になる資産については、国税庁耐用年数業で確認してください。

一人親方の経費の平均額

 一人親方における経費の平均相場は、全体売上の3〜5割程度です。
 これはあくまで目安であり、一人親方の職種によってもかかる経費は違うため、平均値にこだわる必要はありません。
 経費には上限はなく、かかった費用は漏れなく経費として計上し、申請できます。しかし、不自然な額だと税務署から指摘される可能性があるので注意が必要です。
 たとえ税務調査が入ったとしても、領収書を用意し、業務に必要な支出であると説明できれば問題ありません。
 経費にできるかどうかの判断基準は事業をおこなううえで、必要不可欠な支出であるかが判断基準になります。
 経費の申告は正しく計上することが最も重要とされているため、上記の数字は一つの目安として考えておきましょう。

一人親方が経費として計上するには確定申告が必要

一人親方の確定申告

 一人親方が経費として計上するには、確定申告が必要です。ここでは確定申告の提出方法から提出期限まで解説していきます。
 確定申告の解説をする前に、2種類の確定申告方法について確認しておきましょう。

青色申告

 青色申告とは、日々の取引を会計帳簿に記帳し、記帳に基づいて申告をすることで、所得計算などで税務上有利な取り扱いが受けられる制度です。
 青色申告をする場合、その年の3月15日までに税務署へ開業届と青色申告承認申請書を税務署に提出する必要があります。
 その年の1月16日以降に開業した場合は、開業の日から2ヶ月以内に申請書を提出します。
 青色申告最大のメリットは「青色申告特別控除」を受けることができ、最高65万円の控除を受けられることです。 
 その他にも以下のようなメリットがあります。

  • 家族の給与を必要経費にできる
  • 純損失の赤字を3年間繰り越せる
  • 減価償却の特例を受けられる

 青色申告をした場合、白色申告に比べより多くの節税が可能です。

白色申告

 青色申告の対象に当てはまらない場合や、複式簿記による記帳をしていない場合は白色申告になります。 
 白色申告により申告をおこなう場合は、還1年間の売上金額から売上に対応する必要経費を差し引いて所得金額を計算します。
 所得金額から基礎控除、社会保険料控除などの各種所得控除を差し引き、課税所得を算出し税率を掛けて所得税額を算出します。
 白色申告は、青色申告と比べると簿記等の専門知識は必要なく簡単にできますが、青色申告に比べるとメリットは少なくなります。 
 一人親方をしている場合、特別な理由がなければ青色申告をするようにしましょう。
 そのため、ここからは青色申告に必要な書類を解説していきます。

確定申告の必要書類

 青色申告に必要な提出書類は、以下の3つです。

  • 青色申告決算書
  • 確定申告書B
  • 添付書類 

 青色決算申告書とは、日々の帳簿付けの結果を決算書の形式で記入する書類です。
 損益計算書1枚、損益の内訳の記入書2枚、貸借対照表1枚の計4枚で構成されています。 
 確定申告書Bは、第一表から第五表までありますが、一人親方が使用するのは第一表と第二表になります。
 どちらも国税庁のホームページから、各種様式をダウンロードできます。青色申告決算書は、一人親方が使用するのは一般様式です。

確定申告の提出方法

 確定申告の提出方法は、以下の3つの方法があります。

  • 税務署の窓口
  • 郵送
  • e-Tax

税務署の窓口で提出

 提出方法のなかで最もわかりやすいのが、税務署へ確定申告書類を提出する方法です。
 窓口担当者に書類の不備をチェックしてもらえるため、はじめて確定申告をする方や、確定申告方法に不安がある方でも安心です。 
 しかし、確定申告時期は非常に混雑し時間がかかるというデメリットがあります。
 人混みを避けたい方や土日祝日にしか行けない方は、税務署の外に設置されている時間外収受箱に投函しておきましょう。
 時間外収受箱のデメリットとして、窓口担当者による書類チェックをおこなってもらえないことがあげられます。

郵送で提出

 確定申告書類は郵送での提出も可能です。 
 送付の場合は、「郵便物(第一種郵便物)」または「信書便物」として送付してください。
 メリットとして、提出が必要な書類さえ準備しておけばポストに投函するだけで完了する手軽さです。
 通信日付印(消印)により、表示された日が提出日とみなされるので、申告期限内となるよう注意が必要です。 
 受付印を押された確定申告書の控えが欲しいという場合も、申告書の控えと切手を貼った返信用封筒を同封して投函しておけば、後日控えを返送してもらえます。

e-Taxで提出

 e-Taxとは、国税庁が提供する国税電子申告・納税システムのことです。パソコンとインターネット環境がある場合は、e-Taxを利用して確定申告が可能です。
 2004年以前は、確定申告は紙の書類に記載して提出する方法しかありませんでしたが、e-Taxで提出できるようになってからは国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成した電子申告データを提出できるようになりました。
 e-Taxを利用するメリットは、自宅で確定申告が完了する手軽さと青色申告での控除額が10万円アップし、65万円控除を受けられることです。
 上記のいずれかから、ご自身にあった方法で確定申告をおこないましょう。

提出期限

 確定申告の提出期限は「2月15日から3月15日まで」の間に確定申告をします。
 令和元年、令和2年提出分は新型コロナウイルス感染拡大の影響で確定申告期限は延長されましたが、令和3年提出分からは通常スケジュールに戻っています。
 申告期限をすぎても確定申告は可能ですが、期限後の申告は「無申告課税」や「延滞税」の対象になってしまうので、しっかり提出期限はチェックしておきましょう。

難しいと感じたらクラウド会計ソフトもしくは税理士に相談

 確定申告が難しいと感じたら、クラウド会計ソフト、もしくは税理士によるサポートを検討しましょう。
 クラウド会計ソフトとは、仕訳から決算書作成や年末調整、確定申告書を作成できる機能を持ち、データをクラウド上で管理するため自分でデータを保存する手間が省けます。 
 また、インターネット環境があれば、複数のパソコンやタブレット、スマートフォンから使えるのでいつでも編集や確認ができます。
 しかし、会計ソフトを使ったとしても、所得が増えてくると自分で確定申告をするのは大変になり、仕事がおろそかになる可能性もあります。 
 仕事に専念したい、面倒なことはお願いしたいという方は、はじめから税理士に依頼してみてはいかがでしょう。
 税理士に依頼すれば、費用は別途かかりますが、確定申告に対する不安はなくなります。

一人親方の経費に関するよくある質問

 ここでは一人親方の経費に関するよくある質問について回答していきます。
 「この費用は経費にならない」と判断していても経費計上できるものはあります。
 プロでも人により判断が異なるため、最寄りの税務署または、税理士に最終判断は任せましょう。

飲食代は経費として申告してもいいのか?

 経費で落とせる飲食代は、事業に関係のある飲食代です。 具体的には以下のケースで飲食代を経費として計上できます。

  • クライアントとの打ち合わせにともなう飲食
  • 従業員との打ち合わせにともなう飲食
  • 従業員用に事務所に置くジュースなど
  • 出張時のホテル代に含まれる朝食・昼食

 ジュースであっても、取引先に慰労やお礼などの意味をこめて送るとすれば、接待交際費になります。 
 経費で落とせない飲食代は、家族で食事や友人との食事など、仕事に関係ないものは経費になりません。

自家用車は経費として申告してもいいのか?

 自家用車を仕事と兼用にする場合は、業務で使った割合とプライベートで使った割合で按分します。自動車税やガソリン代も同様です。
 仕事用に車を購入した場合は、車の購入額を耐用年数で割り、分割された金額を毎年経費に計上できます。

税務調査を受ける前の対処法は?

 不正をしていないのであれば、根拠となる資料を揃えておきましょう。もしわからない場合は、税理士に相談することをおすすめします。
 税務署が調査対象を選定するうえで、決まった基準はありません。

労災保険料や入会金、会費の勘定項目は?

 一人親方は労災保険料を経費として計上できませんが、社会保険料として所得控除が受けられます。
 一方、所属している団体に支払う入会金や会費は経費計上が可能です。使用する勘定科目に正解はありませんが、一貫性のない会計処理は避けましょう。

まとめ

 本記事では、一人親方の経費について解説してきました。
 一人親方の平均的な経費の割合は、売上の3〜5割ですが、計上できる経費に上限はなく、経費計上できるかの判断基準は、業務に関係あるかどうかです。
 経費は一人ひとり違うため、平均値に合わせるのではなく正しく計上しましょう。業務に関係のある支出は、経費計上できると覚えておくことが大切です。
​​​​​​​ 経費の額が多くなれば、課税対象額を減らせるので節税にもつながります。意外なものまで経費計上できる可能性があるため、経費になるのかわからない場合は税理士や税務署に相談してみてはいかがでしょう。

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