一人親方がキャリアアップシステムを申請するには?メリットや必要書類、料金を詳しく解説
建設業界で期待されているキャリアアップシステム。今後の活動においてメリットがあるシステムであれば、ぜひ導入を検討したいですよね。
しかし、どのような手続きをすれば良いのか、具体的な方法について知らない方もいるでしょう。 この記事では、キャリアアップシステムの概要と具体的な申請方法をご紹介します。しっかり確認して、導入の参考にしましょう。
目次[非表示]
- 1.キャリアアップシステムとは?
- 2.キャリアアップシステムが一人親方にもたらすメリット
- 2.1.技能者の技能や経験が証明される
- 2.2.キャリアのレベル分けによりスキルアップ向上につながる
- 2.3.適格な賃金・処遇の評価につながる
- 2.4.入場できる現場が増える
- 2.5.建設業退職金共済制度の事務手続きがスムーズになる
- 3.一人親方のキャリアアップシステムに必要な二つの登録
- 4.一人親方のキャリアアップシステム申請の主な流れ
- 5.一人親方の「事業者登録」の必要書類
- 6.一人親方の「技能者登録」の必要書類
- 7.一人親方のキャリアアップシステムにかかる費用
- 7.1.事業者登録料と利用料
- 7.2.技能者登録料
- 8.まとめ
キャリアアップシステムとは?
キャリアアップシステムとは、国土交通省と建設業界が推進する平成31年4月から運用開始されたシステムのことです。昨今現場の技能者の高齢化や若手の減少が叫ばれており、同システムの導入により建設業を支える優秀な技能者の発展・育成が求められています。
具体的には以下のような流れで運用されます。
- 建築事業者が技能者情報などを登録
- 技能者へのカード交付・現場での読み取り
- 客観的なルールに基づく技能者への能力評価
これまで業界共通で客観的に技能者ごとの経験や技能を判断するのは難しいとされていました。しかしキャリアアップシステムの導入により、「誰が」「いつ」「どの現場で」「どのような作業に」あたったのかといった技能者ごとの就業履歴のシステムへの蓄積が可能になったのです。
そして技能者情報の登録により、業界で統一されたルールで確認できるようになった結果、建設事業者と技能者双方にメリットが発生するといえます。
なお国土交通省は令和5年度までに、あらゆる工事でのキャリアアップシステム完全移行および、それと連動したあらゆる工事における完全実施を目指しています。
キャリアアップシステムが一人親方にもたらすメリット
キャリアアップシステムの導入により、評価や手続き上さまざまなメリットがあります。
技能者の技能や経験が証明される
キャリアアップシステムの導入により、客観的に技能や経験がわかるようになります。その結果、仕事をした分だけ実績がたまり、仕事を受けやすくなることもあるといえます。同システムを導入していないだけで現場に入れなくなる可能性もあるため、早めに登録しておくとよいでしょう。
キャリアのレベル分けによりスキルアップ向上につながる
公益法人である建設業振興基金では、就業状況や保有している資格に応じて、以下の4段階で技能者のレベル分けを検討しています。
- 見習い技能者
- 中堅技能者
- 職長/熟練技能者
- 登録基幹技能者/上級職長
レベルによりカードの色分けもなされ、目指すべきキャリアが明確になるといえます。
適格な賃金・処遇の評価につながる
建設業において、これまで経験や知識は明確なものさしがなく、伝わりづらい部分がありました。しかし、キャリアアップシステムの導入によって例えば以下のような変化が生まれます。
- 経験:勤務日数で証明される
- 知識/技能:取得資格で証明される
- 能力:「登録基幹技能者講習の受講歴」「職長経験」で証明される
個々の能力を共通のものさしで測ることで、賃金が適正化される、適切な処遇を受けられるなどのメリットがあるのです。
入場できる現場が増える
今後より多くの現場に導入される見込みです。同システムでより多くの就業記録を残すことで、経験が評価され、入場できる現場が増えるため早めに登録しておきましょう。
建設業退職金共済制度の事務手続きがスムーズになる
建設業退職金共済制度では、共済手帳に証紙を貼り付けることでかけ金を積み立てます。キャリアアップシステムを導入すると、ICカード読み取りによる就業履歴の管理が可能になる結果、貼る証紙の数がわかりやすいなど、手続きが容易になります。
一人親方の場合であっても、一人親方が複数集まり任意組合をつくる、または任意組合に加入することで建設業退職金共済制度へ加入が可能になるのです。
一人親方のキャリアアップシステムに必要な二つの登録
キャリアアップシステムの申請には「事業者登録」と「技能者登録」があり、働き方により必要な登録は異なります。
- 請負としての働き方に近い人:事業者登録と技能者登録の両方が必要
- 労働者としての働き方に近い人:技能者登録のみ
請負契約して施工体制に登録される事業者であれば、事業者登録する必要があるため注意しましょう。
一方で、日々入る現場が異なる、日雇いで働いているなどの一人親方は技能者登録のみ行なうこともできるのです。
一人親方のキャリアアップシステム申請の主な流れ
事業者登録、技能者登録ともにインターネットまたは認定登録機関にて申請できますが、ここでは一人親方がインターネットにて自分で申請する場合の流れを解説します。
登録の流れは以下のとおりです。
- キャリアアップシステムホームページにてログインID・パスワードを取得する
- 事業者登録する
- 技能者登録する
1については、まず建設キャリアアップシステムホームページ(外部サイトへ遷移します)より、住所、氏名、連絡先など各種登録に必要な情報を入力し、登録申請します。すると、登録したメールアドレス宛に申請用ログインIDとパスワード記載のメールが届きます。
次に2の事業者登録申請です。取得したIDとパスワードを使ってシステムにログインし、事業者の名称、住所、売上などを入力して申請します。各種必要な情報を入力し、内容を送信します。メールにて支払い案内がくるため、支払いを終えましょう。すると事業者IDが発行され、完了になります。
事業者登録が済んで発行されたIDを使い、続いて3の技能者登録を行ないます。事業者登録時と同様に住所、氏名など各種必要な情報を入力し、申請、登録料の支払い手続きが完了すると、入力したメールアドレス宛に登録完了通知が届き、IDが発行されます。
建設キャリアアップカードは送付先住所へ簡易書留で届くため、直接受け取りましょう。
一人親方の「事業者登録」の必要書類
一人親方の「事業者登録」における必要書類は大きく分けて以下の二つです。
- 事業者証明書類
- 社会保険等加入証明書類
事業者証明書類については、建設業許可がある法人もしくは個人事業主の場合、建設業許可書証明書または通知書が必要になります。
一方で建設業許可がない場合は一人親方でも個人事業主か法人化しているかにより以下のように提出書類が若干異なります。
- 法人……事業税の確定申告書または納税証明書+履歴事項全部証明書
- 個人事業主……納税証明書または所得税の確定申告書、または個人事業の開始届
社会保険等加入証明書類については、以下のとおりです。
- 国民健康保険
- 国民年金加入証明書
その他、事業所の形態に応じて、必要な社会保険等加入証明書類は異なります。具体的には一般財団法人建設業振興基金発行の資料に記載がありますので、しっかり確認しましょう。
一人親方の「技能者登録」の必要書類
一人親方の「技能者登録」における必要書類は以下のとおりです。
- 本人確認書類(インターネット申請は運転免許証など顔写真付きのもの)
- キャリアアップカード用写真
- 保有資格証明書類(学歴・資格・社会保険等証明書類)
まず、本人確認ために、氏名、顔写真、現在の住所と生年月日を確認できるものが必要です。マイナンバーカードの表面、または運転免許証があれば一点で提出可能ですが、パスポートを顔写真付き証明書として提出する場合は、他に以下のような現住所が記載されている本人確認書類が必要です。
- 住民票の写し
- 健康保険証
- 年金手帳
- ねんきん定期便
- 印鑑登録証明書
次に、キャリアアップカード用の顔写真ははっきり顔が写ったもので、サイズは294×378ピクセルにします。デジタルカメラやスマートフォンでの撮影も可能ですが、写真のサイズが小さすぎると使えないため注意が必要です。なお一度申請すると顔写真は変更できません。
登録に適切な写真の条件は以下のとおりです。
- 6ヵ月以内に撮影したもの
- 正面・無帽・無背景のもの
以下のような写真は不適切であるため、留意しましょう。
- 帽子やマスクを着用している
- 顔に影ができている
- サングラスや色付き眼鏡をかけている
保有資格証明書類は原則として1枚ずつJPGファイルにて提出する必要があります。1つのファイルに複数証明書類がまとまっている場合は資格の登録ができない場合があるため注意しましょう。
一人親方のキャリアアップシステムにかかる費用
一人親方のキャリアアップシステム登録のためには事業者登録・技能者登録の二つの費用がかかります。
事業者登録料と利用料
事業者登録では登録料と利用料の二つの費用がかかります。
一人親方の事業者登録料は現在無料ですが、個人事業主を含む法人の場合は資本金によって異なり、税込み6,000円~支払いが必要となります。管理者ID利用料については一人親方の場合、2,400円/年です。
技能者登録料
一人親方の技能者登録はインターネット申請2,500円・認定登録機関については4,900円です。なお、申請時60歳以上の方はインターネット申請2,000円に割引されます。(2023年3月末まで)
建設キャリアアップカードの再発行は1,000円の費用がかかるため注意しましょう。(紛失・破損など)
まとめ
キャリアアップシステムは、建設事業者と技能者双方にメリットが生じるため、きちんと導入しておきたいところです。ただし一人親方のキャリアアップシステム登録には事業者登録と技能者登録を順に完了させる必要があり、それぞれに料金がかかることは理解しておきましょう。
また、急に申請するとなれば、各種必要書類の準備で慌ててしまうこともあるかもしれません。令和5年のキャリアアップシステム完全移行に備え、事前に必要な書類や手続きの流れ、料金などを把握しておきましょう。
- 一人親方は、事故やケガに注意する必要がある
- 労災保険に特別加入していると、万が一の際にも安心
- 一人親方団体労災センター共済会は、費用を抑えて迅速に加入できるのでおすすめ
一人親方労災保険の特別加入の詳細はこちらから