労災保険の補償・給付期間はいつまで?申請期限や時効、認定審査の目安も解説
「労災保険の給付をもらえる期間はいつまで?」
「労災保険を請求できる期間はいつまで?」
このような疑問を抱えてはいませんか。この記事では、労災保険の給付を受けられる期間はいつまでなのか、受けられる補償の種類ごとに詳しく解説しています。
また、労災保険の請求期限や時効に関する情報も解説。労災保険を請求できる期間も、補償の種類ごとにまとめています。
さらに記事の後半では、労災保険と期間にまつわる細かい疑問にもお答えしています。最後までお読みいただければ、きっとあなたの抱えている疑問を解消できるでしょう。
目次[非表示]
- 1.労災保険の給付を受けられる期間はいつまで?
- 1.1.療養(補償)等給付を受け取れる期間
- 1.2.休業(補償)等給付を受け取れる期間
- 1.3.障害(補償)等年金を受け取れる期間
- 1.4.障害(補償)等一時金を受け取れる期間
- 1.5.遺族(補償)等年金を受け取れる期間
- 1.6.遺族(補償)等一時金を受け取れる期間
- 1.7.葬祭料等(葬祭給付)を受け取れる期間
- 1.8.傷病(補償)等年金を受け取れる期間
- 1.9.介護(補償)等給付を受け取れる期間
- 1.10.二次健康診断等給付を受け取れる期間
- 1.11.受け取れる給付の種類は、療養状況により変わっていく
- 1.12.労働事故が発生して治療が必要な場合、療養補償を受けられる
- 1.13.休業給付は1年6ヶ月で傷病(補償)等年金に切り替わる可能性がある
- 1.14.症状固定後は障害(補償)等年金に切り替わるか、打ち切りになる
- 2.労災保険の申請には期限がある!時効に要注意
- 2.1.労災の認定審査にかかる期間は?
- 3.その他、労災保険と期間に関するよくある質問
- 4.まとめ
労災保険の給付を受けられる期間はいつまで?
労災保険には様々な補償・給付が用意されていますが、それぞれの受給期間はどの程度なのでしょうか。一覧表にまとめたので、確認してみましょう。
給付の種類 |
給付期間 |
給付金額 |
特別支給金 |
---|---|---|---|
療養(補償)等給付 |
病気やケガが治癒(症状固定)するまで |
必要な療養、または必要な療養費用 |
ー |
休業(補償)等給付 |
休業4日目以降、認定条件を満たす限り |
休業1日につき、給付基礎日額の60% |
「休業特別支給金」 休業4日目以降、休業1日につき、給付基礎日額の20% |
障害(補償)等年金 |
認定条件を満たす限り一生涯 |
障害等級に応じ、給付基礎日額の131~313日分の年金 |
「障害特別支給金」 障害等級に応じ、159~342万円の一時金 「障害特別年金」 障害等級に応じ、算定基礎日額の131~313日分の年金 |
障害(補償)等一時金 |
1回のみ |
障害等級に応じ、給付基礎日額の56~503日分の一時金 |
「障害特別支給金」 障害等級に応じ、8~65万円の一時金 「障害特別一時金」 障害等級に応じ、算定基礎日額の56~503日分の一時金 |
遺族(補償)等年金 |
受給権者が失権するまで(失権後は次順位者に転給される) |
遺族の人数に応じて、給付基礎日額の153~245日分の年金 |
「遺族特別支給金」 遺族の人数によらず、一律300万円 「遺族特別年金」 遺族の人数に応じて、算定基礎日額の153~245日分の年金 |
遺族(補償)等一時金 |
1回のみ |
障害等級に応じ、給付基礎日額の56~503日分の一時金 |
「障害特別支給金」 障害等級に応じ、8~65万円の一時金 「障害特別一時金」 障害等級に応じ、算定基礎日額の56~503日分の一時金 |
遺族(補償)等年金 |
受給権者が失権するまで(失権後は次順位者に転給される) |
遺族の人数に応じて、給付基礎日額の153~245日分の年金 |
「遺族特別支給金」 遺族の人数によらず、一律300万円 「遺族特別年金」 遺族の人数に応じて、算定基礎日額の153~245日分の年金 |
遺族(補償)等一時金 |
1回のみ |
給付基礎日額の1,000日分の一時金 または1,000日分の一時金から支給済み年金合計額を控除した額 |
「遺族特別支給金」 遺族の人数によらず、一律300万円 「遺族特別一時金」 算定基礎日額の1,000日分の一時金 または1,000日分の一時金から支給済み特別年金合計額を控除した額 |
葬祭料等(葬祭給付) |
葬祭をおこなうとき |
315,000円+給付基礎日額の30日分 ただし、上記合計が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分 |
ー |
傷病(補償)等年金 |
認定条件を満たし、病気やケガが治癒(症状固定)するまで |
傷病等級に応じ、給付基礎日額の245~313日分の年金 |
「傷病特別支給金」 傷病等級に応じ、100~114万円の一時金 「傷病特別年金」 傷病等級に応じ、算定基礎日額の245~313日分 |
介護(補償)等給付 |
認定条件を満たす期間 |
常時介護の場合、月あたり73,090円~171,650円 随時介護の場合、月あたり36,500円~85,780円 |
ー |
- 労災保険のそれぞれの補償制度の受給期間について、詳しく解説していきます。
療養(補償)等給付を受け取れる期間
労災保険の療養(補償)等給付を受けられる期間は、「病気やケガが治癒(症状固定)するまで」となっています。療養に必要な期間、必要なだけの治療費を全額受給できるため、労働者は自己負担なく治療を受けられます。
休業(補償)等給付を受け取れる期間
労災保険の休業(補償)等給付は、休業4日目から、認定条件を満たす限り補償を受けられます。休業3日目までは、労災保険の休業(補償)等給付を受けられませんが、3日までは会社側の負担で補償を受けられます。具体的な休業期間は、医師の指示によります。
障害(補償)等年金を受け取れる期間
労災保険の障害(補償)等年金は、労働災害により障害等級の第1〜7級に該当する後遺症が残ったときに、受けられる補償です。年金であるため、労災保険の認定条件を満たす限りは、無期限(一生涯)に毎年給付を受けられます。
ただし、障害等級が変わったときには、変更後の等級に応じた支給となります。
障害(補償)等一時金を受け取れる期間
労災保険の障害(補償)等一時金を受けられるのは、一時金のため1回のみです。年金は毎年受け取り可能な一方、一時金はそうではないため注意しましょう。
遺族(補償)等年金を受け取れる期間
労災保険の遺族(補償)等年金は、受給権者が失権するまでが受給期間となります。受給権者が失権した場合には、次順位者に遺族(補償)等年金が支給され、この仕組みは転給と呼ばれます。
遺族(補償)等一時金を受け取れる期間
労災保険の遺族(補償)等一時金は一時金のため、受け取れるのは1回のみです。
葬祭料等(葬祭給付)を受け取れる期間
労災保険の葬祭料等(葬祭給付)は、労働災害により死亡した人の葬祭をおこなうときのみ支給される給付です。
傷病(補償)等年金を受け取れる期間
労災保険の傷病(補償)等年金は、認定条件を満たし、傷病が治癒(症状固定)するまでの期間に受けられる年金です。傷病が治癒(症状固定)したと診断された場合には、後遺障害の程度に応じて、障害(補償)等年金に切り替わります。
介護(補償)等給付を受け取れる期間
労災保険の介護(補償)等給付は、認定条件を満たし、介護を受けている期間に補償されます。給付金額は常時介護と随時介護で異なるほか、親族による介護の場合も異なります。
二次健康診断等給付を受け取れる期間
労災保険の二次健康診断等給付は、直近の定期健康診断などで、所定の異常が見つかったときなどに受けられる給付です。
受け取れる給付の種類は、療養状況により変わっていく
労災保険には療養補償や休業補償、各種年金など、様々な補償・給付の種類があります。実は労災保険で受け取れる給付の種類は、「認定されたらずっと同じ」というわけではありません。病気やケガの療養状況により、もらえる給付の種類は変わっていく可能性があります。
こちらでは、病気やケガの療養状況により変わる可能性がある、労災保険の給付の種類について解説します。
労働事故が発生して治療が必要な場合、療養補償を受けられる
労働事故(業務事故/通勤事故)が発生し、入院や通院など治療が必要になったときは、まず療養補償を受け取ることができます。療養補償を受け取れるのは、療養に必要な期間となっています。
労災保険の療養補償は、必要な期間にわたり必要な療養が補償されるため、療養状況に応じて他の給付に切り替わることはありません。ただし「必要な療養」とは、病気やケガが治癒(症状固定)するまでを指すため、症状固定後は給付が終了します。
労災保険において治癒(症状固定)とは、病気やケガが完治した状態を指すのではなく、それ以上の回復が見込めない状態のことを意味します。
休業給付は1年6ヶ月で傷病(補償)等年金に切り替わる可能性がある
労働事故により働けなくなったときには、休業4日目以降は労災保険から休業補償給付を受け取れます。休業補償は、医師の指示により働けない期間中はずっと受け取れますが、1年6ヶ月が経過しても治癒(症状固定)しない場合、傷病(補償)等年金に切り替わる可能性があります。
ただし傷病(補償)等年金が給付されるのは、傷病等級の第1〜3級に該当する場合のみです。傷病等級の第1〜3級に該当しないときは、休業補償が傷病(補償)等年金に切り替わることはありません。
なお傷病(補償)等年金は、労働基準監督署長の職権において切り替わるため、自分自身で請求手続きをする必要はないです。
症状固定後は障害(補償)等年金に切り替わるか、打ち切りになる
労災保険の療養補償や休業補償、傷病(補償)等年金を受給している場合に、病気やケガが治癒(症状固定)すると、給付内容が変更されます。病気やケガが治癒してからも後遺障害が残った場合、障害等級に応じて下記の給付が受けられます。
- 第1〜7級:障害(補償)等年金
- 第8〜14級:障害(補償)等一時金
しかし、障害等級に該当しない場合は、労災保険の給付自体が打ち切りとなります。症状固定後に労災保険からの治療費は支給されませんが、リハビリなど状況に応じて健康保険の適用が認められる場合があります。
労災保険の申請には期限がある!時効に要注意
労災保険の受給に該当する労働事故が発生したときは、申請期限に注意する必要があります。労災保険には給付の種類ごとに時効があり、それを過ぎると請求ができなくなるためです。
また労災保険の申請期限は、時効のカウントを開始する起算日も重要です。労災保険の給付ごとの申請期限と起算日をまとめると、次のとおりです。
給付の種類 |
申請期限(時効) |
起算日 |
---|---|---|
療養(補償)等給付 |
2年 |
療養費を支払った日ごと翌日 |
休業(補償)等給付 |
2年 |
休業した日ごとの翌日 |
障害(補償)等給付(年金/一時金) |
5年 |
傷病が治癒(症状固定)した日の翌日 |
遺族(補償)等給付(年金/一時金) |
5年 |
被災した労働者が死亡した日の翌日 |
葬祭料等(葬祭給付) |
2年 |
被災した労働者が死亡した日の翌日 |
傷病(補償)等年金 |
なし ※自分自身での申請は必要ないため |
ー |
介護(補償)等給付 |
2年 |
介護を受けた月の翌月1日 |
二次健康診断等給付 |
3ヶ月 |
一次健康診断の受診日 |
万が一、労働事故を被った場合には、なるべく早めに申請手続きをするようにしましょう。
労災の認定審査にかかる期間は?
労災の申請をしてから、認定審査が完了するまでの待機期間の目安は、どの程度なのでしょうか。厚生労働省が公開しているパンフレットに、認定審査にかかる期間の目安が記載されているため、こちらにまとめます。
給付の種類 |
認定審査にかかる期間の目安 |
---|---|
療養(補償)等給付 |
おおむね1ヶ月 |
休業(補償)等給付 |
おおむね1ヶ月 |
障害(補償)等給付(年金/一時金) |
おおむね3ヶ月 |
遺族(補償)等給付(年金/一時金) |
おおむね4ヶ月 |
このように、病気やケガの場合は1〜3ヶ月ほど、死亡の場合は4ヶ月ほどの期間が必要となります。しかし上記はあくまでも目安であり、労働事故の状況や申請内容によっては、目安以上の期間が必要となるケースもあります。
その他、労災保険と期間に関するよくある質問
こちらでは、労災保険と期間にまつわるその他の疑問にお答えしていきます。
一人親方が労災保険に特別加入する場合の保険期間は?
一人親方が労災保険に特別加入する場合、保険期間は原則4月1日から3月31日までとなります。多くの加入団体では2月ごろに更新の連絡が届くため、継続する場合は手続きをおこないます。
なお工事期間が短い場合など、団体によっては短期加入に対応しているケースもあります。
【事業主向け】年度更新の期間はいつ?
労働保険の年度更新とは、事業主が前年度の確定保険料を申告・納付し、さらに当年度の概算保険料を申告・納付する手続きのことです。
年度更新の期間は、毎年6月1日から7月10日となっています。開始日または終了日が土日祝の場合は、週明けまで開始日および終了日が延長されます。
出向期間中の労災保険はどうなる?
出向元事業主との雇用関係を維持したまま、別の事業主の管理下で労働する場合は、出向先企業で労災保険に加入する形となります。また出向期間中の賃金計算では、出向元から労働者が受ける支払いも、出向先の会社で支払われる賃金に含める仕組みです。
まとめ
給付を受けられる期間と、請求期限について解説しました
この記事では、労災保険の給付を受けられる期間や、請求期限・時効などに関する情報を詳しく解説しました。記事の要点をごく簡単にまとめると、次のとおりです。
- 労災保険の給付金を受け取れる期間は、補償の種類により異なる
- 「年金」は条件を満たす限りずっと受け取れる補償で、「一時金」は1回のみ
- 受け取れる給付の種類は、病気やケガの療養状況により変わっていく
- 労災保険には申請期限・時効があるため注意が必要
- 労災保険の認定審査にかかる期間は、おおむね1ヶ月~4ヶ月
労災保険の給付を受ける際や申請する際などは、ぜひこの記事で解説した情報を参考にしてみてください。
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