労災保険のメリット制とは?適用対象の事業や計算方法をわかりやすく解説

労災保険とは?

 「労災保険のメリット制とは、どんな制度?」

 「対象となる事業主や計算方法を知りたい」

 この記事では、労災保険のメリット制に関する情報を、総合的にまとめています。メリット制の概要や適用事業主のほか、計算方法も解説しています。
 また中小企業であれば、労災保険料の負担が通常より軽くなる「特例メリット制」も要チェックの制度です。記事の後半では、特例メリット制についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。


目次[非表示]

  1. 1.概要を簡単に解説!労災保険のメリット制とは
    1. 1.1.メリット制が適用された事業には通知が来る|具体的な保険料率を確認可能
    2. 1.2.事業主にとっての長所と短所
  2. 2.制度の適用対象は?継続事業、一括有期事業、単独有期事業における違い
    1. 2.1.継続事業
      1. 2.1.1.継続事業におけるポイント
      2. 2.1.2.対象となる継続事業
    2. 2.2.一括有期事業
      1. 2.2.1.一括有期事業におけるポイント
      2. 2.2.2.対象となる一括有期事業
    3. 2.3.単独有期事業
      1. 2.3.1.単独有期事業におけるポイント
      2. 2.3.2.対象となる単独有期事業
  3. 3.労災保険のメリット制の計算方法
  4. 4.特例メリット制とは
    1. 4.1.特例メリット制の適用には申告が必要
    2. 4.2.適用期間は3年間
    3. 4.3.特例メリット制の計算方法
  5. 5.事業主は労働災害発生の報告義務がある|労災隠しは違法
  6. 6.労災保険のメリット制についてよくある質問
    1. 6.1.メリット制の申請は必要?
    2. 6.2.非業務災害率とは?
    3. 6.3.基準となる法律は?
  7. 7.まとめ

概要を簡単に解説!労災保険のメリット制とは

 労災保険のメリット制とは何か、ごく簡単に説明すると、事業場での労働災害の発生状況に応じて、保険料または保険料率が調整される制度です。
 労働災害の発生リスクは、同じ業種であっても事業場の環境や取り組みにより異なります。労災保険のメリット制は、そういった事業場ごとの災害リスクに応じて、全ての事業主が公平な保険料負担になるよう調整することが目的の制度です。
 つまり労働災害の発生が少なければ労災保険料は割安になり、反対に災害発生が多ければ保険料は割高となります。

メリット制が適用された事業には通知が来る|具体的な保険料率を確認可能

 労災保険のメリット制により調整される保険料や保険料率は、計算方法が非常に複雑となっています。労災保険料は事業主自身が年度更新にて概算保険料を算出する必要がある一方、メリット制により調整される労災保険率は、事業主が自ら計算する必要はありません。
 なぜならメリット制が適用された事業主に対しては、メリット制適用による保険料率を記載した「労災保険率決定通知書」が送られるためです。メリット料率が記載されている労災保険率決定通知書は、労働基準監督署や労働局から送られてくる、年度更新申告書に同封されています。

事業主にとっての長所と短所

 労災保険のメリット制は、事業主にとってどのような長所と短所があるのでしょうか。
 事業主にとっての長所は、労働災害の発生が少ない事業場で、労災保険料の負担が軽くなる点です。労働災害が発生しないよう、事業主が事業場の安全管理に努めていれば、労災保険料の負担を軽減できる仕組みとなっています。
 さらに、安全衛生措置を行って申請をすれば、特例メリット制と呼ばれる制度により、さらに労災保険料の負担を軽減できる制度が用意されています。特例メリット制を適用できるのは、中小企業のみですが、事業場の安全対策を行うことで保険料負担を軽くできる点は長所と言えるでしょう。
 事業主にとってのメリット制の短所は、労働災害の発生が多いほど保険料負担が重くなる点です。とはいえ、事業主は労働者が安全に働ける環境を整えなければならないため、デメリットと呼ぶようなものではないでしょう。

制度の適用対象は?継続事業、一括有期事業、単独有期事業における違い

労災保険の事業場

 労災保険のメリット制の適用対象となる事業は、下記3種類のケースでそれぞれ異なります。

  • 継続事業
  • 一括有期事業
  • 単独有期事業

 上記3種類のそれぞれのケースにおいて、制度の要点や適用される事業について解説していきます。

継続事業

 継続事業は、多くの事業主が該当する一般的な事業です。一括有期事業と単独有期事業は、主に建設業などが対象である一方、継続事業は業種を問わず多くの事業主が対象となります。

継続事業におけるポイント

 継続事業においては、事業の種類別の料率から非業務災害率をマイナスし、その料率が40%の範囲で増減され、具体的な保険料率が決定します。決定した料率は、「メリット料率」や「改定労災保険率」と呼ばれます。なお非業務災害率は、全ての業種で一律0.6/1,000です。

対象となる継続事業

 継続事業において、制度の適用対象となる条件は2つあります。1つ目の条件は、制度適用の前々保険年度の3月31日時点で、労災保険の成立から3年以上が経過していることです。
 2つ目の条件は、制度が適用される前々保険年度から3年度をさかのぼり、各年度が下記いずれかの条件を満たしていることです。

  • 労働者を100人以上使用した事業である
  • 労働者を20人以上100人未満使用した事業であり、災害度係数が0.4以上である

 なお、災害度係数とは、使用した労働者の人数に、業種ごとの労災保険率から非業務災害率をマイナスした料率を乗じた数値です。

一括有期事業

 建設業など一部の業種では、条件を満たした場合に一括有期事業として労災保険に加入できます。こちらでは、一括有期事業におけるポイントを解説します。

一括有期事業におけるポイント

 一括有期事業においては、事業規模に応じて適用される増減表が異なる特徴があります。継続事業の場合は料率の増減幅が40%である一方、一括有期事業では事業規模が小さい場合に、増減幅が30%になります。

対象となる一括有期事業

 一括有期事業において、制度の適用対象となる条件は2つです。1つ目の条件は、継続事業と同じであり、前々保険年度の3月31日時点で、保険成立から3年以上が経過していることです。
 そしてもう1つの条件は、基準となる3保険年度における労災保険の確定保険料が、次のいずれかに当てはまることです。

  • 3保険年度の全てで、労災保険の確定保険料が100万円以上
  • 3保険年度のうち1年度でも、労災保険の確定保険率が40万円以上100万円未満

 上記のどちらに該当するかで、一括有期事業のメリット制が適用される際の、増減表が変わります。
 「3保険年度全てが100万円以上」の場合、継続事業と同じ増減幅40%の増減表が適用されます。一方、「1年度でも40万円以上100万円未満」の場合、増減幅30%の増減表が適用される仕組みです。

単独有期事業

 単独有期事業とは、事業期間が限られる事業を指し、建設業や林業が該当します。こちらでは、単独有期事業におけるポイントを解説します。

単独有期事業におけるポイント

 単独有期事業のメリット制は、事業が終了したのちの確定保険料から、調整が行われるシステムです。単独有期事業を開始する際に概算保険料を申告し、事業が終了してから精算を行います。事業終了後に精算された労災保険料は、確定保険料と呼ばれます。
 さらに、確定保険料に対して調整が行われたのちの労災保険料は、改定確定保険料と呼ばれます。

対象となる単独有期事業

 下記いずれかの条件に当てはまる単独有期事業は、メリット制の適用対象となります。

  • 確定保険料の金額が40万円以上である
  • 建設業の場合、請負金額が1億1千万円(税抜)以上である
  • 林業(立木の伐採)の場合、素材の生産量が1,000㎥以上である

 このように、制度の対象となる単独有期事業は、事業ごとに条件が定められています。

労災保険のメリット制の計算方法

 労災保険のメリット制の計算では、まず「メリット収支率」を求める必要があります。具体的な計算方法は非常に複雑なため割愛しますが、メリット収支率を計算できれば、メリット制が適用された労災保険料も算出できる仕組みとなっています。
 メリット収支率を算出したら、厚生労働省が公開している増減表を参照し、メリット増減率を確認します。メリット増減率を確認したら、下記の式に当てはめて、増減後の労災保険料が算出されます。

(業種ごとの労災保険率ー非業務災害率)×(100+メリット増減率)÷100+非業務災害率

 なおメリット収支率の具体的な算出方法を知りたい方は、厚生労働省の公式サイトでご確認ください。

特例メリット制とは

労災保険のメリット制

 労災保険には、「特例メリット制」と呼ばれる制度が存在します。労災保険の特例メリット制とは、所定の安全衛生措置を行った中小企業などを対象に、メリット増減率が最大45%になる制度です。
 通常のメリット増減率は40%のため、安全衛生対策を講じて特例メリット制に認定されることで、労災保険料の負担が軽くなる可能性があります。
 特例メリット制を適用するための条件は、次のとおりです。

  • メリット制が適用される継続事業であること(一括有期事業・単独有期事業は除く)
  • 厚生労働省が定める安全衛生措置を講じ、都道府県労働局長の確認を受けること
  • 中小企業事業主であること

 なお中小企業の判定は、企業全体が常時使用する労働者の人数により行われ、次のとおりです。

特例メリット制の適用には申告が必要

 中小企業が、労災保険の特例メリット制の適用を受けるためには、所定の期限までに申告が必要です。申告期限は、安全衛生措置を行った保険年度の、次年度の開始日から6ヶ月以内となっています。

適用期間は3年間

中小企業主が所定の安全衛生措置を講じた場合に受けられる特例メリット制には、適用期間が定められています。特例メリット制の適用期間は、安全衛生措置を講じた保険年度の、翌々年度から3年間です。

業種
労働者の人数
小売業、飲食店、金融業、保険業、不動産業
50人以下
卸売業、サービス業
100人以下
上記以外
300人以下

特例メリット制の計算方法

 特例メリット制が適用された場合の労災保険率の算出方法は、基本的な部分は通常のメリット制と同じです。メリット収支率を同じ計算方法で求め、特例メリット制の増減表に当てはめて、メリット増減率を算出します。

事業主は労働災害発生の報告義務がある|労災隠しは違法

労災事故が起きたら

 労災保険のメリット制により、労働災害の発生状況に応じて保険料の負担が重くなる可能性があります。しかし、メリット制による労災保険料の負担を避けたいがために、労働者に対して労災保険を申請させないなどの行為は違法のため、行ってはいけません。
 事業場で労働災害が発生した際は、状況により「労働者死傷病報告」を労働基準監督署へ提出する義務があります。故意に報告をしない行為や、虚偽の報告をする行為は、労災隠しと呼ばれます。

【引用部分】

「労災かくし」とは、労働災害の発生事実を隠ぺいするため、

  1. 故意に労働安全衛生法に基づく労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出しないもの又は
  2. 虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出するもの

 をいい、労働安全衛生法第100条違反又は第120条違反の罪に該当するものであるが、その背景には労働災害発生の原因となった法律上の措置義務違反に係る責任の追及を免れようとするなどの意図が存在するものであり、場合によっては被災者に犠牲を強いるものとなるなど許しがたい行為である。

引用:厚生労働省 公式サイト

https://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/11/h1120-2.html

 もし万が一、事業場で労働災害が発生した際には、適切な対応と義務付けられた報告を行うようにしましょう。

労災保険のメリット制についてよくある質問

 こちらでは、労災保険のメリット制についてよくある質問に、Q&A形式でお答えします。労災保険のメリット制について疑問がある方は、ぜひ参考にしてください。

メリット制の申請は必要?

 労災保険のメリット制は、条件を満たした場合に自動適用されるため、事業主による申請などは必要ありません。メリット制が適用された事業主に対しては、労災保険の年度更新の封筒に、「労災保険率決定通知書」が同封されています。
 ただし、中小企業が定められた安全衛生措置を行った場合に受けられる特例メリット制については、事業主自身で申請する必要があります。

非業務災害率とは?

 労災保険のメリット制を理解する上で欠かせないのが、「非業務災害率」です。非業務災害率とは、各業種に設定されている労災保険率のうち、通勤災害や兼業者の業務災害などの給付に充てる保険料率です。非業務災害率は、全ての業種で一律0.6/1,000に設定されています。

基準となる法律は?

 労災保険のメリット制は、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」の第12条3項に定められています。

まとめ

 安全な労働環境を整えれば労災保険料の負担は軽くなる

 この記事では、労災保険のメリット制に関する情報を、総合的に解説しました。記事の要点をごく簡単にまとめると、次のとおりです。

  • 労災保険のメリット制とは、労働災害の発生状況に応じて保険料率や保険料を増減する制度
  • 制度の内容は、継続事業と一括有期事業、単独有期事業で異なる
  • 所定の安全衛生措置を講じた中小企業事業主は、申請すれば特例メリット制を適用できる

 労災保険のメリット制は、労働災害のリスクが少ない安全な労働環境を整えれば、労災保険料の負担は軽くなる制度です。反対に、労働災害が発生しやすい事業場の場合、労災保険料の負担は重くなる仕組みとなっています。
​​​​​​​ 中小企業の事業主であれば、特例メリット制を適用することで、労災保険料の負担はより軽くなる可能性があります。この記事で解説した情報を参考にして、ぜひ安全な事業場づくりにお役立てください。

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