労災保険の未加入だとどうなる?加入していないときに被災した場合の対応や罰則も詳しく解説

 近年の日本では、働き方の多様化などの理由で、労災保険に未加入の方が増えています。労災保険に加入していない場合に、被災したときの給付はどうなるかなど、不安や疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

 そこで、この記事では労災保険が未加入となるパターンを紹介します。また、加入しない状態で労働災害に遭ったときに生じるデメリットや会社側への罰則、ペナルティなども解説しますので、ぜひ参考にしてください。

目次[非表示]

  1. 1.労災保険の加入条件
  2. 2.労災保険の未加入における4つのパターン
    1. 2.1.労災保険の加入条件に該当しない場合
      1. 2.1.1.勤務先が強制適用事業場から除外されている
      2. 2.1.2.労災保険の加入対象者ではない 
      3. 2.1.3.一人親方である
    2. 2.2.事業主が労災保険の加入を怠っている場合 
  3. 3.労災保険未加入で労働災害に遭うとどうなるの?
    1. 3.1.会社が労災保険の加入を怠っていた場合
    2. 3.2.働く人自らが労災保険に加入していない場合
  4. 4.労災保険未加入の会社に罰則やペナルティはないの?
    1. 4.1.労災保険未加入の会社などに対する費用徴収制度とは
    2. 4.2.費用徴収制度が強化された背景
    3. 4.3.費用徴収の適用となる事業主など
    4. 4.4.費用徴収の徴収金額
    5. 4.5.保険料の追加徴収
    6. 4.6.法律違反による罰則もある
  5. 5.まとめ

労災保険の加入条件

 労災保険(労働者災害補償保険)は原則として、労働者を1人でも雇っている事業場に加入が義務付けられている制度です。厚生労働省では、この条件によって労働保険(労災保険+雇用保険)に加入すべき事業場を、強制適用事業場と呼んでいます。

 労災保険に加入する労働者とは、事業に使用され、労働の対価として賃金が支払われている人のことです。

 労災保険は、どのような職種や雇用形態であっても労働者であれば加入できます。つまり、常勤の正社員だけでなく、パートやアルバイト、派遣社員といった非正規雇用や短時間労働者なども加入対象になります。

労災保険の未加入における4つのパターン

 先述のとおり、労災保険とは原則「すべての労働者」が加入するものです。しかし、実際は次のいずれかに該当する場合、労災保険の未加入状態が発生することがあります。

 ここからは、労災保険が未加入になるパターンを確認していきましょう。

労災保険の加入条件に該当しない場合

 何らかの事業で働く人であっても、以下に該当する場合は、労災保険が未加入になることがあります。

勤務先が強制適用事業場から除外されている

 従事する仕事が暫定任意適用事業に該当する場合、働く人が労働者であっても労災保険が未加入になることがあります。暫定任意適用事業とは、農林水産業のうち労災保険や雇用保険に加入するかどうかの判断が、事業主の意思またはその事業に使用される過半数の労働者の意思に任されている事業のことです。

 例えば、5人未満の労働者を雇用する個人経営の農業において、特定の有害もしくは危険な仕事を主とする事業でなければ、暫定任意適用事業に該当します。ただし、暫定任意適用事業であっても、任意加入制度の要件を満たせば、労災保険への加入は可能です。

労災保険の加入対象者ではない 

 法人の役員や、事業主と同居する親族などの場合、労災保険の対象(労働者)にあたらないことがあります。

 ただし、この条件に該当する人であっても、労働災害(業務災害もしくは通勤災害)の発生状況や業務の実情などから労働者と同様の保護が適当と認められた場合、中小事業主などとして労災保険の特別加入が可能です。この制度を利用する場合、中小事業主本人とともに家族従事者などの労働者以外で、業務に従事する人すべてを包括して特別加入しなければなりません。

一人親方である

 一人親方や個人事業主、自営業者の方などは企業に雇用されていないため、労働者ではありません。しかし、一人親方などの方も、以下いずれかの方法で労災保険に特別加入できます。

  • 新たに特別加入団体を作って申請する

  • すでに特別加入を承認されている団体を通じて加入する

事業主が労災保険の加入を怠っている場合 

 労災保険では、強制適用事業場に該当する職場の事業主に対し、労働者を雇い入れてから10日以内に労働基準監督署に届け出をして、加入手続きをとることを義務付けています。

 しかし、労災保険の保険料は全額事業主負担です。そのため、労働者を雇い入れているにも関わらず、費用負担を減らすために故意に加入をしない悪質な事業主なども存在します。

労災保険未加入で労働災害に遭うとどうなるの?

 労災保険未加入で労働災害に遭った場合、以下のどちらに該当するかによって働く人が被る不利益や対処の仕方が変わってきます。

会社が労災保険の加入を怠っていた場合

 先述したとおり、労災保険は強制適用事業場で働く、すべての労働者が加入できるものです。そのため、会社側が労災保険に加入してくれなくても、仕事中の業務災害もしくは通勤災害が起こった場合は、被災をした労働者が自ら給付申請を行なえます。

 ただし、会社が故意に労災保険に加入していない場合、未加入の発覚を恐れて事業主証明を拒否することがあります。それでも給付請求は可能ですので、まずは労働基準監督署に相談してみましょう。

働く人自らが労災保険に加入していない場合

 会社に雇用されていない一人親方や個人事業主、自営業者などにも、先述のとおり労災保険の特別加入制度があります。ただし、この制度は、加入後の労働災害に対して給付が行なわれる仕組みです。

 そのため、例えば一人親方が仕事中に労働災害に遭ったとしても、その段階で労災保険の特別加入をしていなければ、給付申請を行なうことはできません。また、特別加入の場合、さかのぼっての加入ができないため注意が必要です。したがって、労災保険に未加入の一人親方などは、国民健康保険や傷害保険を使って治療をせざるを得なくなります。

 労災保険には、一般の傷害保険と比べて保険料が安い魅力もあります。そのため、現段階で未加入の場合は、早めに加入手続きを進めたほうがよいでしょう。

労災保険未加入の会社に罰則やペナルティはないの?

 近年の日本では、労働年齢の高齢化によって、50歳以上の高年齢労働者による労働災害が特に起こりやすくなっています。また、コロナ禍で宅配代行業に携わるフリーランスや個人事業主が増え、労働者にあたらない人たちが労災保険へ加入しないことに関しても注目が集まるようになりました。

 しかし、これだけ労災保険が注目される状況であっても、やはり労災保険に加入しない悪質な事業主は存在します。厚生労働省では、こうした悪質な事業主に対して、以下のような費用徴収制度を強化しています。

労災保険未加入の会社などに対する費用徴収制度とは

 先述のとおり、労働者を1人でも雇う事業主は、原則として労働者を雇い入れた日から10日以内に所定の保険関係成立届を提出し、労災保険に加入しなければなりません。

 しかし、現状は加入手続きを怠っていたり、加入はしていても保険料を滞納したりする事業主があとを絶ちません。こうした事業主に対して、労災保険から給付された金額の全部、もしくは一部の支払いを求める制度を「費用徴収制度」と呼びます。

費用徴収制度が強化された背景

 詳細はのちほど紹介しますが、費用徴収制度は2005年11月1日から内容を強化されています。

 この制度改正が議論されていた頃においても、労災保険に未加入の事業数は約54万件にのぼっていました。そのため、適正な手続きや保険料を支払う事業者との公平性を早急に確保する必要性が生じたことから、費用徴収制度が強化されるようになったのです。

費用徴収の適用となる事業主など

 労災保険の未加入で費用徴収となる事業主は、以下の2つに分けられます。

  •  故意に労災保険に加入しなかった事業主
  • 重大な過失で労災保険に加入しなかった事業主

 1つめの「故意」とは、労災保険の加入手続きについて労働基準監督署などの行政機関から指導などを受けていたにも関わらず、未加入の間に業務災害や通勤災害が発生した状態です。

 一方の「重大な過失」は、労災保険の加入手続きについて労働基準監督署などから指導を受けていないものの、労災保険の適用事業になって1年が経過しているのに手続きを行なわず、その期間中に業務災害や通勤災害が起きた状態になります。

費用徴収の徴収金額

 徴収金額は、故意もしくは重大な過失のどちらに該当するかで変わります。

 まず、故意に加入手続きが行なわれなかったと認定された場合、当該災害で療養開始後3年間に支給された保険給付額の100%が徴収されます。これに対して、重大な過失と認定された場合の徴収額は、故意と同条件に該当する保険給付額の40%です。

 ただし、療養(補償)給付と介護(補償)給付に関しては、費用徴収制度の対象から除かれます。

保険料の追加徴収

 事業主が労災保険に未加入だった場合は、最大2年間にさかのぼった保険料に10%の追徴金を上乗せした金額の支払いが求められます。また、保険料は当該労働者が労働災害に遭わなくても、未加入の発覚によって徴収される場合もあります。

法律違反による罰則もある

労災保険に未加入だった場合、労働基準法や労働者災害補償保険法の違反による処分が課せられることもあります。

 例えば、労働者災害補償保険法の第51条では、第46条の規定に基づく命令に違反して文書の未提出や虚偽申告、未報告などを行なった事業主に対し、6ヵ月以下の懲役または35万円以下の罰金を科すことを定めています。

 また、悪質な未加入事業者の場合には、厚生労働省によって企業名などが公表されたり、ハローワークに求人掲載ができなくなったりするなどのペナルティを受けることもあります。

まとめ

 労災保険への加入は、原則として1人以上の労働者を雇う事業場に義務付けられているものです。しかし、以下4つのケースに該当する場合には、その事業場で働く人に労災保険の未加入状態が発生することがあります。

  • 勤務先が強制適用事業場から除外されている
  • 労災保険の加入対象者ではない
  • 一人親方である
  • 事業主が労災保険への加入を怠っている

 勤務先企業が雇い入れた労働者の労災加入をしていない場合、業務災害もしくは通勤災害に遭った労働者が自分で労災の給付申請をすることが可能です。この場合、労災の未加入状態が故意または重大な過失と認められれば、企業に対して費用徴収などのペナルティが課せられます。

 一方で、一人親方やフリーランス、自営業者などの場合は、被災してからの特別加入ではさかのぼっての給付ができません。したがって、現段階で未加入状態の場合は、一人親方団体労災センターなどの一人親方団体を利用して、早めの労災保険への特別加入手続きを進めたほうがよいでしょう。

  • 一人親方は、事故やケガに注意する必要がある
  • 労災保険に特別加入していると、万が一の際にも安心
  • 一人親方団体労災センター共済会は、費用を抑えて迅速に加入できるのでおすすめ

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