労災保険とは?基本的な概要や給付条件、保険料の計算方法を紹介
労災保険とは、業務中や通勤途中の事故により怪我や病気、死亡した労働者やその遺族に保険給付される制度です。個人はもちろんですが、会社に所属して労働している方は知っておくべき保険の一つです。
この記事では、労災保険の基本的な概要と給付条件、加入方法を解説します。また、建設業の個人事業主(一人親方)向けに労災保険の特別加入制度や保険料の計算方法、加入の注意点について解説します。
目次[非表示]
- 1.労災保険とは?
- 1.1.労災保険とは
- 1.2.労災保険と賠償責任保険との違い
- 1.3.労災保険は従業員のための保険
- 1.4.事業主と労災保険
- 2.労災保険の種類
- 3.労災保険の適用範囲
- 4.労災保険の補償金額
- 5.一人親方の労災保険料は?計算方法も解説
- 5.1.基本は給付基礎日額
- 5.2.実際の労災保険料の金額は?
- 5.3.一人親方の労災保険加入方法
- 6.労災保険の注意点は?
- 6.1.加入時の給付基礎日額をチェック
- 6.2.特別加入団体をチェック
- 6.3.加入日を確認しよう
- 7.まとめ
労災保険とは?
労災保険とは
労災保険とは、従業員が事故による怪我や病気によって働けない期間の治療費や生活費などを補償する制度のことです。労働基準法上の災害補償の規定を保険という仕組みにより担保するためのものとして最低限の補償を定めています。
あらかじめ労災保険に加入しておけば、怪我や病気を負った従業員に保険から給付が行なわれます。
労災保険の給付金のなかでも、おもに以下の2つを確認しておきましょう。
- 療養給付
- 休業給付
療養給付は、労災による怪我や病気で療養する際の入院・治療・通院などに対して給付されます。指定の医療機関で療養する場合は無料、指定医療機関以外で治療を受ける場合は後日その治療費を賄ってもらえるのが特徴です。通院にかかった交通費も、一定の条件を満たせば給付対象になります。
休業給付は、労災による療養を目的に働けなくなり賃金が支払われない場合に給付されます。原則的に、労働できなくなった日の4日目から休業1日につき給付基礎日額の60%が給付されます。
労災保険と賠償責任保険との違い
労災保険と混同しやすい保険として賠償責任保険があります。賠償責任保険は、労災による従業員の怪我や病気などの責任が企業にある場合、政府労災保険などの給付や企業が定める法定外補償規定に基づく支払いなどを超え、企業が負担する法律上の損害賠償金および賠償問題解決のために支出する費用を補償する保険金のことを指します。
使用者を含めた第三者の有責により災害を被った場合のための保険であり、労災保険とはとは若干属性が異なる点を理解しましょう。
労災保険は従業員のための保険
労災保険は、従業員が業務上や通勤中などにおいて被った怪我や病気などを補償する、従業員のための保険です。企業(事業主)が加入者および被保険者となり、雇用する従業員のために保険料を支払います。
原則として、労働者を一人でも雇用している、あるいは法人であれば適用事業所になり、正社員をはじめ、パートやアルバイト、日雇い労働者など、すべての従業員を対象として保険料を納める必要があります。
ただし、対象者はあくまでも雇用する従業員であり、事業主や法人役員、自営業者は労災保険に加入することはできません。
事業主と労災保険
上記で説明した通り、労災保険は従業員を対象としております。そのため、一人親方のような従業員を抱えず、1人で事業を行っている場合は、原則として労災保険への加入が認められません。
そこで一人親方のような建設業の個人事業主なども補償が受けられるように、特例として労災保険への任意加入を認めたのが労災保険の特別加入制度です。特別加入をしていないと事故が発生した際に補償されないため、万が一に備えて加入することをお勧めしております。
なお、特別加入の労災保険料は一人親方の全額負担となります。
労災保険の種類
労災保険には5種類の給付があります。それぞれ確認してみましょう。補足ですが、労災保険の給付は業務災害なら「補償」が付き、通勤災害なら「補償」が付きません。これは業務災害の場合、「補償」という言葉を入れて事業主の責任を明確にしているからです。
本記事では、業務災害を想定して「補償」付きの給付名を用いることとします。
療養(補償)等給付
労災保険の給付の1つ目は、療養補償給付です。業務や通勤における傷病で療養するときに受けられます。療養補償給付によって、労災保険指定医療機関等での治療費等が自己負担なく受診できるようになります。
なお、療養補償給付はいわゆる「現物給付」であり、実際にお金が支給されるわけではありません。
ただし、近くに労災指定医療機関等がなく、指定医療機関以外で受診した場合は例外です。受診にかかった費用は一時的に労働者側が支払い、その額を労災請求したのち、現金支給されることになります。
療養補償給付は傷病が治癒(症状固定)するまで受けることが可能です。治癒とは、具体的に「医学上一般に認められた医療を行なっても、その医療効果が期待できなくなった状態」を指し、医師が判断します。
療養のために通院したときには、居住地または勤務地から原則として片道2km以上の通院であって、以下のいずれかに該当すると通院費の受給が可能です。
- 同一市町村内の適切な医療機関へ通院した場合
- 同一市町村内に適切な医療機関がないため、隣接する市町村内の医療機関へ通院した場合
- 同一市町村内にも隣接する市町村内にも適切な医療機関がないため、それらの市町村を越えた最寄りの医療機関へ通院した場合
なお、療養開始後1年6ヵ月を過ぎても治らず、一定の傷病等級に該当する場合は傷病補償年金が支給されます。
休業(補償)等給付
休業補償給付は、業務災害等による賃金を受けていない期間の賃金を補償する制度で、以下の条件をすべて満たす場合に支給されます。
- 業務または通勤による負傷や疾病で療養している
- 労働できない状態(就労不能)
- 賃金を受けていない
また、休業補償給付は、通算3日目まで給付を受けられません。この期間を「待機期間」と呼びます。また、待機期間中には事業主から休業補償を受けられます。
- 休業通算3日目まで(待機期間):事業主による休業補償
- 休業通算4日目以降:労災保険による休業補償給付
なお、休業補償給付でも、療養開始後1年6ヵ月を過ぎても治らず一定の傷病等級に該当する場合は、傷病補償年金が支給されます。
障害(補償)等給付
障害補償給付は、業務または通勤による傷病が治ったときに、身体に一定の障害が残った場合、障害等級に応じて「障害(補償)等年金」、「障害特別年金」や「障害特別支給金」、「障害補償等一時金」、「障害特別一時金」などの給付を受けられるものです。
年金は一定金額が一定期間ごとに受け取れるもので、一時金や支給金は一括で受け取れるものを指します。一般的には年金が「給料」で、一時金や支給金は「ボーナス(賞与)」のようなものとイメージするとわかりやすいでしょう。
ただし障害補償年金は、年金保険による障害年金と併給調整(減額支給)されることとなります。
遺族(補償)等給付
遺族補償給付は、業務または通勤が原因で死亡した場合、遺族に対し支給される給付です。遺族数に応じて遺族補償年金や遺族特別支給金、遺族特別年金が支給されます。
また、葬祭を行なうにふさわしい遺族または会社は、葬祭料(葬祭給付)の支給を受けられます。
支給される遺族は、以下に挙げる受給資格者(一部のみ記載)のうち、当該労働者の収入で生計を維持されていた遺族の最先順位者(受給権者)となります。
- 妻または60歳以上か一定障害の夫
- 高校生までの子か一定障害の子※
- 60歳以上か一定障害の父母
- 高校生までの孫か一定障害の孫※
- 60歳以上か一定障害の祖父母
- 高校生までの兄弟姉妹か60歳以上、または一定障害の兄弟姉妹※
なお、例えば当該労働者が独身の一人暮らしであって遺族の誰も生計を維持されていなかった場合など、受給資格を持つ遺族がいないときには遺族補償一時金が支給されます。
少し複雑な優先順位ですが、ポイントは以下のとおりです。
- 妻(事実婚を含む)は年齢や障害の要件はなく、最も優先
- 妻を除いて年齢や障害の要件がある
- 妻を除き、夫、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順に優先される(尊属より卑属が優先)
※「高校生まで」とは、正式には「18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある」が正しい要件です。
遺族補償年金は年金保険による併給調整されることを先ほど解説しましたが、遺族補償年金も同様です。
介護(補償)等給付
介護補償給付は、障害補償年金や傷病補償年金の受給者のうち、一定の要件を満たせば支給される給付です。
一定の要件とは以下のとおりです。
- 常時介護、または随時介護を要する状態にある
- 現に介護を受けている
- 病院または診療所に入院していない
- 介護老人保健施設等に入所していない
要約すると、介護が必要で介護を受けているが、必要十分な介護を受けていない場合に介護補償給付が受けられます。そのため、入院や入所をしていると対象外になるのです。
労災保険の適用範囲
それでは、どのような会社(事業)・労働者・傷病が労災保険の適用範囲なのかを確認しましょう。
まず労災保険は、会社ではなく事業ごとに適用されます。つまり、会社だけでなく個人事業(自営業)にも適用されるのです。
そして、労働者を1人でも雇用していれば、業種や規模に関わらず適用事業となります。
例えば、法人であっても労働者を1人も雇っていなければ適用事業にはなりませんが、個人事業で労働者を1人でも雇えば適用事業です。
次に、労働者とは具体的にどのような人を指すのか見ていきましょう。
雇用形態等 |
該当 |
---|---|
一般労働者 |
◯ |
パート・アルバイト |
◯ |
日雇労働者 |
◯ |
派遣労働者 |
◯(※1) |
法人役員 |
☓(※2) |
同居親族 |
☓(※3) |
海外出張者 |
◯ |
海外派遣者 |
☓ |
※1:派遣元の事業場で適用
※2:代表権・業務執行権を有する役員(いわゆる経営者)は適用外
※3:同居の親族とともに一般労働者を雇用し、所定の条件を満たした場合は適用される
上記は、労働基準法上の労働者を指すと解釈されています(厚生労働省の審議会資料より)。
労働基準法上の労働者とは、「使用され賃金を支払われる者」とあり、具体的には「指揮監督下の労働」および「報酬の労務対償性」などをもとに判断されます。
したがって日雇い・派遣労働者であっても労働者となり、いわゆる経営者は労働者ではありません。また、同居親族も「指揮監督下の労働」とは一般的にみなされませんので、労働者ではありません。
また、農林水産業を営む個人経営者については労災保険への加入が任意となっているため、労災保険に加入していなければ適用対象外となります。
次に、どのような傷病が労災保険の適用範囲なのかを見ていきます。労災保険では「仕事による災害」と「通勤による災害」の2つがありますので、以降で詳しく解説します。
業務災害の場合
労災保険における「仕事による災害」とは、業務を原因として被った負傷・疾病・障害または死亡のことです。
事業主の支配・管理下で業務に従事していたときの災害は、原則として業務災害と認められます。しかし、私用・故意・天災地変による場合は業務災害として認められません。
また、休憩時間や就業前後は実際に業務をしていないため、これらの時間に発生した災害は業務災害として認められないこととなっています。
ただし休憩中の私用であっても、トイレなどは業務に付随する行為として業務災害が認められます。
業務災害の認定には、業務と傷病の因果関係を明確にする必要があり、申請内容がそのまま適用になるとは限りません。因果関係が不明、もしくは私的な行為と判断された場合は健康保険で対処することとなります。
以上をまとめると、業務災害の認定は「業務遂行性」と「業務起因性」が基準といえるでしょう。
通勤災害の場合
労災保険における通勤災害は、一定の要件を満たす通勤による災害が補償対償となります。
一定の要件とは、「就業に関し、住居と就業の場所との間の往復や就業場所から他の就業場所への移動、単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動を、合理的な経路および方法で行なうこと」です。
以上は複雑ですので、要約すると以下のようになります。
【対象となる移動】
- 住居と就業場所までの往復
- 就業場所から他の就業場所への移動(副業・兼業)
- 単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動(帰省・Uターン)
認定要件
就業に関する移動
合理的な経路および方法での移動
除外要件
- 業務の性質を有する移動
- 移動経路の逸脱または中断(映画館に入る場合などが除外され、日用品の購入や通院などは除外されない)
なお、業務災害の場合と同様、通勤災害の認定も、業務との因果関係や通勤経路であることを明確にしなければなりません。
労災保険の補償金額
労災保険の概要を解説してきましたが、ここでは具体的にいくら補償されるのかについて紹介します。労災保険の補償金額は給付の種類によって異なりますので、それぞれ確認していきましょう。
なお労災補償の給付は、原則として非課税です。
療養(補償)等給付
療養補償給付は無償で治療を受けられる給付ですので、原則として必要と認められる実費相当が「現物給付」されます。
例外として、指定医療機関等以外で療養を受けた場合には、事後的に「療養の費用の支給(現金給付)」が行なわれます。
休業(補償)等給付
休業補償給付は、就労不能で賃金を受けていない場合に給付されるものです。
前述のとおり、通算3日の待機期間中は事業主から休業補償され、通算4日目以降は労災保険の給付が受けられます。
- 休業通算3日目まで(待機期間):事業主により平均賃金日額の60%相当額
- 休業通算4日目以降:労災保険により平均賃金日額の80%相当額(※)
※休業補償給付60%、休業特別支給金20%の合計
ここでいう平均賃金日額は、「事故日または傷病の診断日の直前3ヵ月間の賃金(ボーナスを除く)を1日あたりに平均した額」です。
なお副業・兼業者は、休業補償給付の計算にあたり、複数就業先の平均賃金日額相当額を合算できるようになっています。
障害(補償)等給付
障害補償給付は、障害補償年金や特別支給金、障害特別年金、障害特別一時金があることを紹介しました。
給付額は、それぞれ障害の程度に(障害等級)に応じて以下のように定められています。つまり、7級以上は障害補償年金と障害特別支給金(一時金)が給付され、8級以下は障害補償一時金と障害特別支給金(一時金)が支給されます。
事故または診断日以前1年間にボーナスがあった場合、以上に加えて7級以上は年金が、8級以下は一時金が支給されます。
【障害(補償)等給付】
- 年金:給付基礎日額(平均賃金日額)の131(7級)~313(1級)日分
- 一時金:給付基礎日額(平均賃金日額)の56(14級)~503(8級)日分
【障害特別支給金】
- 一時金:8(14級)~342(1級)万円
【障害特別年金(7級以上の場合で、ボーナスを加味したもの)】
- 年金:算定基礎日額(※)の131(7級)~313(1級)日分
【障害特別一時金(8級以下の場合で、ボーナスを加味したもの)】
- 一時金:算定基礎日額(※)の56(14級)~503(8級)日分
※算定基礎日額とは「事故日または傷病の診断日以前1年間のボーナスを1日あたりに平均した額」です。給付基礎日額とは、ボーナスを加味しているかどうかで異なります
遺族(補償)等給付
遺族補償給付は、遺族補償年金と遺族特別支給金、遺族特別年金があります。
受給権者および同一生計の受給資格者に応じて、給付基礎日額や算定基礎日額に乗じる日数が異なる仕組みです。
遺族数 |
遺族補償年金 |
遺族特別支給金 |
遺族特別年金 |
---|---|---|---|
1人 |
給付基礎日額の153日分(※1) |
300万円
|
算定基礎日額の153日分(※2) |
2人 |
給付基礎日額の201日分 |
算定基礎日額の201日分 |
|
3人 |
給付基礎日額の223日分 |
算定基礎日額の223日分 |
|
4人以上 |
給付基礎日額の245日分 |
算定基礎日額の245日分 |
※1遺族が55歳以上の妻、または一定の障害状態にある妻の場合は給付基礎日額の175日分
※2遺族が55歳以上の妻、または一定の障害状態にある妻の場合は算定基礎日額の175日分
介護(補償)等給付
介護補償給付は、介護が必要で介護を受けているが、必要十分な介護を受けていない場合の給付です。
給付額は、常時介護と随時介護それぞれで補償の上限額(自己負担をしない額)が決められており、親族等が介護をしている場合には最低補償額(一律支給額・下限額)が定められています。
常時介護 |
常時介護 |
|
---|---|---|
外部介護 |
上限17万1,650円までの実費支給 |
上限8万5,780円までの実費支給 |
親族等介護 |
一律(下限)7万3,090円支給 |
一律(下限)3万6,500円支給 |
併用介護 |
一律(下限)7万3,090円支給 上限17万1,650円まで実費支給 |
一律(下限)3万6,500円支給 上限8万5,780円までの実費支給 |
つまり、親族等による介護を受けているなら常時介護で7万3,090円、随時介護で3万6,500円が最低補償(一律支給)されます。一方、外部介護のみなら最低補償はありません。
ただし、表に記載されている額は2021年7月現在の額です。下限額や上限額は改定されることがありますので注意してください。
一人親方の労災保険料は?計算方法も解説
通常は企業が負担する労災保険料ですが、前述のとおり、一人親方の場合は全額負担となります。では、どの程度の保険料になるのでしょうか。一人親方が負担すべき保険料について解説します。
基本は給付基礎日額
労災保険料は、選択した給付基礎日額(1日あたりの日当相当額)により算出されます。この給付基礎日額に対し、厚労省が定めた第二種特別加入保険料率における建設業の一人親方の料率をかけて割り出します。
1年間の労災保険料は、以下の図式により算出しましょう。
給付基礎日額×365(日)×建設業の労災保険料率(18/1000)=1年間の労災保険料
一人親方の場合は、「年収÷365(日)」で1日分の収入を算定します。なお、上記の労働保険料率は毎年変更になるため、都度、確認するなどの注意が必要です。
実際の労災保険料の金額は?
実際に例を挙げて、一人親方の労災保険料を計算してみましょう。
今回の計算例では、年収128万円程度で給付基礎日額を3,500円と仮定します。
1年間の労災保険料:3500×365(日)×0.018=2万2,995円
1ヵ月あたりの費用:22995÷12(月)=1,917円(端数切り上げ)
上記のとおり、年額も月額もそれほど大きな金額にはなりません。もしものときに備えて、特別加入しておいたほうがよいでしょう。
一人親方の労災保険加入方法
一人親方が労災保険に加入するためには、労働局が認可した一人親方のための特別加入団体(共済会)に加入する必要があります。居住地域を管轄する特別加入団体を選ぶようにしましょう。
加入に際しては、必要情報の登録や本人確認書類の添付、支払い方法を指定するのが一般的です。クレジットカード払いができる団体もあります。手続き後、入会金などとともに労災保険料を支払いましょう。
保険料を支払うと、特別加入団体から特別加入の申請が行なわれ、加入完了後に会員証が発送されます。大切に保管しておきましょう。
労災保険の注意点は?
一人親方が労災保険に加入した際や、労災給付を受ける場合の注意点を確認しておきましょう。万が一のことが発生したときに補償額で後悔しないためのポイントや、保険料の支払い、申し込み時に気をつけておくべきことをまとめました。
加入時の給付基礎日額をチェック
労災事故で給付を受ける際、補償は給付基礎日額の8割(休業給付6割・休業特別支給金2割)と定められています。例えば、給付基礎日額3,500円の場合は以下のとおりです。
1日の補償額:3,500円×0.8=2,800円
このように、給付基礎日額が全額補償されるわけではありません。家族がいる方や長期療養のリスクなど、生活に影響する可能性を考えておく必要があります。万が一の際の補償額と年収をそれぞれ考慮しながら、労災保険料を決めるようにしましょう。
特別加入団体をチェック
一人親方が労災保険に加入するためには特別加入団体への加入が必須となりますが、加入前に特別加入団体の比較検討を忘れないようにしましょう。
特別加入するための費用は、国に納める労災保険料と、団体への入会金や月会費などが必要です。このうち、労災保険料は法律で決まっているため、どこの団体に加入しても変わりませんが、入会金・月会費などが団体によって異なります。
現在、一人親方のための労災特別加入団体は多数展開していますが、まずは居住地域をサポートする複数の団体をチェックし、費用やサポート内容などを比較検討しましょう。
指定の支払い方法として、年払い以外にも月払いができる団体は便利です。クレジットカード払いができる場合は、払い忘れが防げるので安心して利用することができます。費用とともに併せて確認しておきましょう。
加入日を確認しよう
万が一の際にも慌てないように、労災保険の加入日を確認しておきましょう。
一人親方の労災保険の特別加入は、特別加入団体において保険料の入金確認が取れた日の翌日からの適用と定められています。そのため、入金確認日翌日の以前にさかのぼって補償を受けることはできません。
労災事故が起こった場合、原則的に労災加入日以前の事故は対象外になります。もしものときのためにも早めに加入しておくが大切ですが、加入日もよく覚えておきましょう。
まとめ
労災保険とは一人親方の生活を補償する保険
従業員の業務中や通勤途中における労災事故が起こった場合、治療費や生活費などを補償する制度が労災保険です。
一人親方は事業主に該当するため、労災保険に加入できない代わりに、特例として任意加入を認めた特別加入制度があります。事業主に該当するので労災保険料は全額負担となりますが、年額も月額もそれほど多額にはならないので、万が一に備えて加入しておいたほうがよいでしょう。
加入の際には、一人親方のための特別加入団体への加入が必要ですが、居住地域を管轄する団体を比較検討することや、万が一の事故が対象外にならないように加入日を確認しておきましょう。