一人親方は労働者なのか?一人親方(個人事業主)と労働者の違いや判断基準について

一人親方、労働者

 一人親方なのか労働者なのかについての判断基準は非常に困難です。また、様々な要素が絡み合っていますので、答えというのが非常にあいまいになります。労働者性が強い弱い、事業者性(一人親方性)が強い弱い。この強弱によって労働者なのか一人親方なのかを判断いたします。

 労働基準法では下記の1及び2において、さらに国税庁は所得税の観点から3において、また国土交通省は4においてその判断基準を公表しています。

  1. 労働基準法の「労働者」の判断基準について
  2. 建設業手間請け従事者及び芸能関係者に関する労働基準法の「労働者」の判断基準について(リンクの1ページ目から27ページ目まで)
  3. 大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(具体的な留意点はこちらをご覧ください。)
  4. みんなで進める一人親方の保険加入

 また、一部の一人親方が会社とは独立した形を取っていても、実態は労働者的な側面があることが以前より指摘されてきました。労働時間が管理されていたり、会社内の後片付けをさせたり、給料として支払ったり、およそ請負とは思えないようなことをしていながら一人親方として扱い、社会保険の加入を逃れているケースが後を絶たず、国土交通省は適正な運用を推し進めるために一人親方の抑制化の施策を実行することとしています。

目次[非表示]

  1. 1.労働基準法の「労働者」の判断基準について
    1. 1.1.仕事の依頼
    2. 1.2.指揮命令
    3. 1.3.勤務場所・勤務時間等
    4. 1.4.仕事の代替性
    5. 1.5.報酬の決め方
    6. 1.6.費用負担
    7. 1.7.報酬の額
    8. 1.8.危険負担、損害賠償等
    9. 1.9.専属性
    10. 1.10.その他
  2. 2.一人親方か?労働者か?ポイントの整理
  3. 3.まとめ

労働基準法の「労働者」の判断基準について

労働基準法

​​​​​​  労働基準法の「労働者」の判断基準について」による労働者かどうかの判断(一人親方かどうかの判断)について大事な個所を紹介します。

仕事の依頼

 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由がある場合は他人の指揮命令を受けているとは言えません。ただし、建設業の一人親方の場合決まった元請けからのみ依頼を受けるというケースもあります。この場合諾否の自由が制限されることが多いと考えられますが、だからと言って直ちに労働者とみなされるわけではありません。

指揮命令

 業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無があるかどうかについて、例えば、進め方や道具等の選定に関して権限を持っているかどうかということが判断基準になります。ただし、例えば塗装工事にあたり施主より指定された塗料を使用するように指示があった場合にこれを拒否することは難しいと考えられます。そのため、ある程度の制限はやむを得ないでしょう。

勤務場所・勤務時間等

  一般的に雇用関係にある場合は雇用契約書に勤務場所や勤務時間が指定されます(拘束性の有無)。一人親方の場合は勤務場所はすなわち建設現場であることが多いため勤務場所が指定されるのはやむを得ないでしょう。しかし、勤務時間は請負契約において決められた契約が履行される限り自由に決められると考えていいでしょう。ただし、近隣に対する騒音等の配慮により仕事時間がある程度指定されることはありますので、勤務時間が指定されたからと言って直ちに時間拘束がされたとは言えないでしょう。

仕事の代替性

 本人に代わって他の者が労務を提供することが認められているかどうか、また、本人が自らの判断によって補助者を使うことが認められているかどうか(代替性の有無)について、雇用契約の場合には当たり前のことですが雇用契約の当事者である労働者が労務を提供し、提供された労務に対してもう一方の当事者である事業主が賃金を支払います。しかし、一人親方は個人事業主として請負契約を締結します。請負契約の履行にあたり、一人親方の判断により補助者を使用するとか、又は都合により他人を業務に就かせるとかの判断が認められている場合には事業者(一人親方)としての要素が強いと言えます。

報酬の決め方

 報酬をどのようにしてもらうかどうか(報酬の労務対償性に関する判断基準)について、月・日・時間を基準として報酬額が決められている場合は労働者としての要素が強いと言えます。一人親方は請負契約が基本ですので仕事の完成に対して報酬が支払われます。そのため、仕事そのものに対して決められた報酬額が支払われているかどうかが重要な要素となります。

 上記の5つの要素で判断が難しい場合は下記の要素を勘案して判断することになります。

費用負担

 機械器具の負担について、一人親方の場合、様々な機械器具を使用します。業種によっても異なりますが、高価なものから安価なものまで。手持ち工具や消耗品等の安価なものはともかく著しく高価なものを自身の判断で購入している場合は事業者(一人親方)としての要素が強まります。

報酬の額

 報酬の額が同種の雇用契約の方と比較して高額な場合は個人事業主としての要素が強まりますが、高額な理由が労務の提供時間が長いなどの理由の場合には事業者(一人親方)としての要素が強まる理由とはなりません。

危険負担、損害賠償等

 個人事業主として仕事をしているとミス、失敗、滅失等が発生することがあります。場合によっては損害賠償ということに発展しますが、この損害について自ら責任を負う場合は事業者(一人親方)としての要素が強いと言えます。

専属性

 他社の業務に従事することが制約され、また時間的にも事実上困難であるなど専属性の程度が高い場合には個人事業主としての要素が弱いと考えていいでしょう。ただし、専属下請けということもあり、このことを持って直ちに労働者とは判断できないでしょう。

その他

 報酬について給与所得としての源泉徴収を行っているかどうか、元請会社の規則等が適用になっているかどうか、請負契約の締結にあたり雇用契約の従業員と同様の採用手続きがあったかどうか。これらは労働者としての要素を補強する要素となります。

一人親方か?労働者か?ポイントの整理

一人親方、労働者

 一人親方なのか、労働者なのかについての判断基準は前章でご紹介した通りですが、留意すべきポイントが非常に多く却ってわかりづらい部分もあります。まずは下記のポイントにそって現状どのような契約なのか、どういう立場で仕事をしているのかを確認してみてはいかがでしょうか?

  1. 仕事を始める時間、終わる時間は一人親方が決めているのか?
  2. 仕事で使用する車両や道具は一人親方が用意するのか?
  3. 仕事の進め方は一人親方自身が決めているのか?
  4. 個人事業主として確定申告をしているか?
  5. 報酬の決め方は月や日単位ではなく、完全な請負契約か?
  6. 専属の会社があっても、他の会社からの依頼も受けることができるか?

 上記6つのポイントの中で5の「報酬の決め方は月や日単位ではなく、完全な請負契約か?」がわかりづらいところかと考えられます。請負契約とは民法によると「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」とあります。つまり、仕事が完成した後で報酬が支払われるわけです。これを一人親方に置き換えると下記のようになります。
 一人親方がその請け負った工事施工の完了した部分(「出来形」と言います)に対して請負代金を支払う出来高払いの契約形態。つまり、建設工事の仕上がり状況に応じて出来上がった部分に相当する請負代金を支払われているかどうかが非常に重要です。この出来高払いに対して、労働力の提供が契約内容となっている場合は仕事の出来・不出来に関係なく日数や労働時間に応じて報酬が支払われます。ここが大きな違いとなります。

まとめ

 一人親方なのか、それとも労働者なのか。この判断材料は非常に多くあります。これさえあれば一人親方・・・というような決定的なものはありません。一つ一つの要素を検討して一人親方的な要素が強い弱い、労働者的なの要素が強い弱いを確認した上で総合的に判断しなければなりません。

 冒頭でも書いたように国土交通省が一人親方化の抑制のための対策を本格的に実施しようとしています。自身が本当に一人親方としての働き方なのか、また会社は使用している一人親方が本当に一人親方なのかどうかきちんと見極める必要があります。

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