一人親方が外国人労働者を雇う際の条件や注意点を徹底解説
一人親方は基本的に自分1人で仕事を請け負いますが、人手が足りないときは一時的に人を雇い入れることがあります。ただ、慢性的な人手不足に陥っている建設業界では、適当な働き手はなかなか見つからないのが実状です。
そこで近年では、外国人労働者(特定技能外国人)を雇用する一人親方が増えてきています。しかし、外国人を雇うには所定の要件や手続きが必要となりますので要注意です。
今回は、一人親方が外国人労働者を雇い入れるための要件や手続きの流れ、雇用時の注意点についてまとめました。
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一人親方が外国人労働者(特定技能外国人)を雇うための要件
2019年4月より、新たな在留資格「特定技能」が導入され、建設業を含む計14の特定分野への就業であれば、学歴や実務経験に関係なく、外国人労働者を雇用することが可能となりました。
外国人労働者を雇用するには、以下の基準を満たしている必要があります。
- 外国人と結ぶ雇用契約が適切であること
- 機関自体が適切であること
- 外国人を支援する体制があること
- 外国人を支援する計画が適切であること
また、外国人労働者を雇用するには、以下3つの義務を負うことになります。
- 外国人と結んだ雇用契約を確実に履行すること
- 外国人への支援を適切に実施すること(登録支援機関に委託することも可)
- 出入国在留管理庁へ各種届出を行うこと
とくに義務の1~3を怠ると、外国人労働者の受け入れが不可能になるほか、出入国在留管理庁から指導、改善命令等を受ける可能性があるので注意が必要です。
さらに分野別方針として、建設業には以下の条件が課せられています。
- 外国人の受け入れに関する建設業者団体(JAC)に所属すること
- 建設業法の許可を受けていること
- 日本人と同等以上の報酬を安定的に支払い、技能習熟に応じて昇給を行う契約を締結していること(月給制・昇給制)
- 受け入れ建設企業単位での受け入れ人数枠の設定
- 報酬等を記載した「建設特定技能受入計画」について、国交省の認定を受けること
- 国交省等により、認定を受けた「建設特定技能受入計画」を適正に履行していることの確認を受けること
- 特定技能外国人を建設キャリアアップシステムに登録すること
4については、建設業の場合、特定技能外国人および特定活動で働く外国人建設就労者の人数は、所属する機関の常勤職員の人数を超えることは不可とされています。
一人親方の場合、常勤しているのは自分1人ですので、雇用できる外国人労働者は最大でも1人までとなります。
一人親方が特定技能外国人を雇う際の手続き
一人親方が特定技能外国人を雇用するには、前節の分野別方針6にあった通り、「建設特定技能受入計画」を国交省に提出し、認定してもらう必要があります。
建設特定技能受入計画に必要な書類は以下のとおりです。
- 登記事項証明書/登記簿謄本(一人親方は住民票でOK)
- 建設業許可証
- 常勤職員数のわかる書類
- 建設キャリアアップシステムの事業所IDがわかる書類
- 特定技能外国人受入事業実施法人に加入していることがわかる書類
- 取次資格を有することを示す書類
- ハローワークで求人した際に発行された求人票
- 外国人労働者が同等の技能を有する日本人と同等額以上の報酬であることを説明する書類
- 就業規則および賃金規程
- 外国人労働者と同等の技能を有する日本人の賃金台帳
- 外国人労働者と同等の技能を有する日本人の実務経験年数を証明する書類
- 特定技能雇用契約書及び雇用条件書の写し
- 時間外労働・休日労働に関する協定届、変形労働時間に係る協定書、協定届、年間カレンダー
- 雇用契約に係る重要事項事前説明書
- 建設キャリアアップシステムの技能者IDを確認できる書類
4および15の建設キャリアアップシステムとは、平成31年4月より導入された制度のことです。
日本人労働者の場合、建設キャリアアップシステムへの登録は任意ですが、外国人労働者を雇用する場合は、雇用主である一人親方と、外国人労働者の両方とも登録を済ませる必要があります。
建設キャリアアップシステムへの登録には、事業者登録に約2週間、技能者登録に3週間ほどの日数がかかりますので、早めに登録を済ませておきましょう。
7については、建設業務に就く職業のあっせんを有料職業紹介事業に任せるのは、労働者の保護に支障を及ぼすおそれがあるとして、法律で禁じられています。[注1]
ここでいう「有料職業紹介事業」とは、職業紹介に関して手数料や報酬を受けている職業紹介事業のことで、たとえば人材紹介や求人サイト、求人雑誌などが該当します。
一人親方が外国人労働者を雇用するには、必ずハローワークを介して求人募集を行う必要があり、7はその証となります。
10および11については、一人親方が外国人労働者を雇用する場合、比較対象となる日本人は雇用主である本人しかいません。
自分と外国人労働者の技能や経験に乖離がある場合は、雇用契約書に記載した報酬額と、法務省が保有する近隣同業他社における同等業務に従事する同等程度の経験をもつ特定技能外国人の報酬額を比較することとしています。[注2]
[注1]e-Gov法令検索:職業安定法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?aw_unique_id=322AC0000000141_20200330_429AC0000000014
[注2]国土交通省:外国人建設就労者受入事業に関するガイドライン
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001308646.pdf
一人親方が外国人労働者(特定技能外国人)を雇う際の注意点
一人親方が外国人労働者を雇う際に注意したいポイントを2つご紹介します。
外国人労働者が技能試験および日本語試験に合格しているかどうか
特定技能外国人として日本で働くには、所定の要件を満たしている必要があります。その要件のひとつが「技能試験及び日本語試験に合格していること」です。
建設業の場合は、建設分野特定技能1号評価試験や、日本語能力試験などを受験し、合格している必要があります。
これらの試験は内定には直接関与しませんが、特定技能の申請を行う際には両方の試験に合格していなければなりませんので注意が必要です。
外国人労働者が滞在・就業できる適切な環境が整っているかどうか
外国人労働者を受け入れる側には、労働者が適切な環境で生活・就業できるよう、支援することが義務づけられています。
具体的には、労働条件の説明、役所での手続きのサポート、住居確保の支援、出入国時の空港送迎などです。
また、入国後も日本の生活にスムーズに溶け込めるよう、日本のルールやマナーを教える研究を行ったり、日本語学習の支援を行ったりと、公私にわたって生活をサポートしていかなければなりません。
一人親方の場合、これら支援をすべて自分1人で行うのは難しいので、必要に応じて支援計画の作成および実施を登録支援機関に委託することも考慮しましょう。
登録支援機関は全国に複数ありますが、それぞれ対応可能言語や委託費用が異なりますので、雇用する外国人労働者の母国語や予算に合わせて選ぶことが大切です。
まとめ
一人親方が外国人労働者を雇用するには、受入機関としての要件を満たしたうえで、然るべき手続きを行う必要があります。
とくに受入機関の義務を怠ると、外国人労働者の雇用を認められなくなってしまいます。受入体制が整っているかどうかをしっかり確かめましょう。
また、各手続きの中には、ある程度の日数を要するものもありますので、外国人労働者を雇用することが決まったら、早めに手続きを始めるのがポイントです。
入国時および入国後の支援に不安がある場合は、登録支援機関にサポートを委託することをおすすめします。