一人親方が加入すべき社会保険(社会保障)に関する基礎知識
一人親方として仕事をする上で考えなくてはいけないのが、社会保険への加入です。働き方によって加入すべき社会保険は変わってきますが、社会保険に未加入の場合や手続きに不備がある場合、現場での仕事を断られる危険性もあります。
こちらの記事では、一人親方が加入すべき社会保険に関する基礎知識について解説します。
目次[非表示]
- 1.一人親方が加入すべき社会保険の種類
- 1.1.市町村国保もしくは国保組合
- 1.2.国民年金
- 1.3.労災保険(特別加入)
- 2.一人親方が社会保険に加入する2つのメリット
- 2.1.医療保障が受けられる
- 2.2.老後や障害が残ったときも収入が保障される
- 3.一人親方が社会保険に加入しない3つのリスク
- 3.1.追徴金や罰金のリスク
- 3.2.事故やケガに備えられない
- 3.3.仕事の受注ができなくなる
- 4.一人親方の社会保険加入基準・手続き
- 4.1.一人親方の社会保険加入基準
- 4.2.社会保険加入の手続き
- 5.まとめ
一人親方が加入すべき社会保険の種類
一人親方が加入すべき社会保険としては、3つの種類が挙げられます。[注1]まずは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
市町村国保もしくは国保組合
まず挙げられるのが、市町村で加入できる国保もしくは建設関係の国保組合への加入です。法人格を持たない一人親方は、市町村の国保だけではなく、同種同業による組合員で組織されている国保組合に加入することも可能です。国保組合に加入するためには組合員になる必要がありますが、市町村の国保と比べて保険料が抑えられ、給付内容が手厚いという特徴を持っています。どちらに加入するかは個人で判断して構いませんが、必ず国保か国保組合には加入しておくようにしましょう。
国民年金
国民年金も、一人親方が加入しておきたい社会保険です。日本では「20歳以上の人はだれでも年金制度に加入する」ことを定めた国民皆年金制度を採用しているため、年金に加入することは義務であり選択の余地はありません。会社員から独立して自営業を営むのであれば、前職の退職日から14日以内にお住みの市区町村において、国民年金の手続きをする必要があります。
労災保険(特別加入)
労災保険は義務ではありませんが、できることなら万が一の備えとして加入しておきましょう。労災保険は本来、被用者向けに用意されたものです。しかし、建設業務の性質上、被用者ではない一人親方でも特別加入できるようになっています。加入すればケガや事故があったときに治療費だけではなく、休業や障害が残ったときに対する保障、死亡時の遺族補償を受けられるようになります。
一人親方が社会保険に加入する2つのメリット
社会保険への加入が義務づけられていることを理解しつつも、実際には加入手続きをしていない一人親方も少なくはありません。社会保険に加入しなくてはいけない理由は「国民の義務である」こと以外にもあります。ここからは、社会保障に加入することのメリットについて解説します。
医療保障が受けられる
社会保険のもっとも大きなメリットは、医療保障が受けられる点でしょう。建設業は、その業務の性質上ケガをするリスクが非常に高くなっています。万が一、高所から転落したり工具でケガをしてしまったりしたとき、社会保険に加入していないと治療費が全額自己負担になってしまいます。健康保険に加えて労災保険に加入していれば、治療費のみならず休業中の保障を受けることも可能です。万が一のリスクに備えて安心して働き続けるためにも、社会保険は非常に重要なものなのです。
老後や障害が残ったときも収入が保障される
老後や障害が残って働けなくなったときも、社会保障に加入していれば収入の保証が受けられます。一人親方が国民年金や労災保険に加入しない場合、年をとったり現場でのケガで障害を負って仕事ができなくなったりしたとき、一切の収入が途絶えてしまいます。この状態では生活すらままならなくなってしまい、家族にも迷惑をかけることになってしまうでしょう。社会保障に加入しておくことで、収入が途絶えたときも安心して生活ができるようになります。
一人親方が社会保険に加入しない3つのリスク
それでは、一人親方が社会保険に加入しないとどのようなリスクがあるのでしょうか。ここでは、3つのリスクについて解説します。
追徴金や罰金のリスク
社会保険事務所などの調査で健康保険や国民年金に未加入だということが判明すると、追徴金や罰金を科されてしまう危険性があるため注意が必要です。追徴金は最大で2年分科され、悪質な場合は財産が差し押さえられる可能性もあります。社会保険料を違法に節約することで、逆に多額のお金を失うことにもなりかねません。こういった事態を防ぐためにも、社会保険には必ず加入しましょう。
事故やケガに備えられない
社会保障に加入しないということは、事故や怪我による治療費や損失をすべて自分で負担するということになります。健康保険に加入していなければ医療保険は全額負担になりますし、労災保険に加入していなければ、万が一障害が残ったときは収入を得られなくなってしまいます。有事の際に備えられないのは、社会保険に加入しない最大のデメリットだといっても過言ではありません。ご自身だけではなく家族を守るためにも、社会保険は必要なのです。
仕事の受注ができなくなる
社会保険の未加入は、実は仕事にも影響します。自治体によっては、社会保険未加入者が公共工事の入札に参加できないように定めているケースも多いですし、たとえ民間の工事であっても、未加入労働者の現場入場を認めるべきではないと国土交通省が正式に通達を出しています。法整備によって、社会保険未加入者への規制が今後さらに高まっていく可能性は十分にありえるでしょう。最悪の場合、仕事の受注ができなくなってしまうリスクもあるため、社会保険への加入は重要なのです。
一人親方の社会保険加入基準・手続き
最後に、一人親方が実際に社会保険に加入するときの判断基準や手続きについて解説します。
一人親方の社会保険加入基準
一人親方の場合は、働き方によって加入すべき社会保険が異なってきます。以下の内容を参考に、ご自身がどちらの社会保険に加入すべきかを判断してください。[注2]
- 請負人としての一人親方
※ 仕事の裁量が完全にご自身にあり、工事の出来高見合いで報酬が支払われる場合
→ 個人で国保や国民年金に加入する必要がある。
- 労働者としての一人親方
※ 仕事の内容を会社に指定されており、日給や時給で報酬が支払われる場合
→ 依頼されている会社の社会保険に加入する必要がある。
このように一口に一人親方といっても、働き方によって2種類に分類することが可能です。一人親方だからといって、必ずしも個人で社会保険に加入する必要はないことを理解しておきましょう。
[注2]国土交通省|みんなで進める「一人親方」の社会保険加入
社会保険加入の手続き
一人親方が個人で社会保険に加入するときは、全て自分で手続きをする必要があります。手続きの内容について簡単にまとめているので、手続き方法に迷ったら参考にしてください。
- 市町村の国保
身分証とマイナンバーカードを持参し、退職から14日以内にお住いの市町村の役所に設置され ている保険年金課にて手続きを行う。
- 国保組合
加入申込書、印鑑、住民票など各組合指定の書類を持参し、所属支部にて手続きを行う。
- 国民年金
年金手帳と印鑑を持参し、退職から14日以内にお住いの市町村の役所に設置されている保険年金課にて手続きを行う。
- 労災保険(特別加入)
特別加入申請書を一人親方団体を通じて所轄の労働基準監督署にて手続きを行う。
必要となる書類は自治体や国保組合によって異なる場合もあるため、手続きに向かう前に管轄の役所や支部に必ず確認をとっておくようにしましょう。
まとめ
一人親方だと、ついつい社会保険への加入を怠ったり先延ばしにしたりしてしまいがちです。しかし、社会保険への加入は日本国民の義務で選択の余地はありません。社会保険に加入していないと万が一のときに大きな負担を個人で負うことになるため、一人親方として独立するときは必ず社会保険に加入しておくようにしましょう。労災センター共済会では、一人親方の労災保険の特別加入に長年携わってきております。
社会保障の一環として労災保険への加入を考えている場合は、ぜひ労災センター共済会で一人親方の労災保険の特別加入をご検討ください。