一人親方の判断基準(みんなで進める一人親方の保険加入)
この記事は「みんなで進める一人親方の保険加入 社会保険加入にあたっての判断事例集」(国土交通省)をもとに作成しています。一人親方が労災保険の特別加入を検討するにあたり是非知っておくべき内容です。一人親方に限らず、一人親方に建設業務を依頼している会社にとっても有益な内容と言えます。
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一人親方の保険加入
建設業の皆様
現在、建設業界では、業界の将来を担う人材を確保し、公正な競争を実現するために業界を挙げて社会保険未加入対策に取り組んでいます。一人親方もその働き方に応じて決められた社会保険等に加入することが法令により義務づけられています。
事業主としての一人親方であれば、個人で社会保険等に加入することになりますが、近年建設投資が大きく減少する中で、一人親方は景気の変動や受注量の増減に応じた企業の調整弁として都合よく使われる側面が強くなっており、形式が請負であっても実態が労働者である場合も存在しま
す。
そのような場合には、一人親方が個人で社会保険等に加入するのではなく、会社で保険加入させることが必要になります。
このため、一人親方に関するこれまでの実例や行政機関が出している基準を見て、自社の工事で使用する一人親方について適切な取扱いを実現することが必要です。
以下、一人親方の働き方が事業者なのか、労働者なのか事例やチェックシートを活用して確認してみましょう。
以下の事例は「労働者」に近い働き方です
電気工(Aさん)の例 |
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型枠大工(Bさん)の例 |
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左官工(Cさん)の例 |
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一人親方の働き方チェック
一人親方へ急な仕事を依頼した時、親方は 断ることができますか? |
A:断ることはできない |
B:断ることができる |
一人親方の仕事が早く終わった時などに予 定外の仕事を依頼した場合、親方は断ること ができますか? |
A:断ることはできない |
B:断ることはできる |
一人親方には貴社の就業規則など服務規律 を適用していますか? |
A:適用している |
B:適用していない |
一人親方の仕事の就業時間(始業・終業)は 貴社が決めていますか? |
A:決めている |
B:決めていない |
当日の仕事が早く終わった時、一人親方が 仕事から上がるには貴社の了解が必要です か? |
A:必要である |
B:必要でない |
仕事が早く終わった時に、一人親方が自分で 見つけた他の現場の仕事に行くことができま すか? |
A:認めていない |
B:支障ない |
工程調整上の指示や事故防止のための指示 を除き、一人親方の日々の仕事の内容や方 法はどのように決めていますか? |
A:毎日、細かな指示、具体的な指示を出している |
B:毎日の仕事量や配分、進め方は一人 親方の裁量に任せ ている |
一人親方の都合が悪くなり、代わりの者が必要となった場合はどのように対応しています か? |
A:貴社が代わりの者を探す |
B:一人親方が自分の判断で代わりの者を探す |
一人親方の仕事を代わりの者が行った場 合の報酬(工事代金又は賃金)は、誰に支 払いますか? |
A:代わりをした |
B:一人親方 |
一人親方の通常のミスや一人親方の責任 による作業遅延によって損害が生じた場合、誰がその損害を負担しますか? |
A:貴社が負担する |
B:一人親方が負担する |
一人親方が仕事で使う機械・器具(手元工 具を除く)は誰が提供していますか? |
A:貴社が提供する |
B:一人親方が持ち込む |
一人親方が仕事で使う材料は誰が提供し ていますか? |
A:貴社が提供する |
B:すべて一人親方が調達する |
一人親方の報酬( 工事代金又は賃金)は どのように決められていますか? |
A:一人当たりの単価など働いた時間による |
B:工事の出来高見合い |
「B」が多い場合は事業者性が強く、「A]が多い場合は一人親方ではなく雇用されるべき労働者として判断される場合があります。 |
チェック
建設労働者が加入すべき社会保険等の種類を確認しましょう。
一人親方の労働者性が認められなかった事例
自分の判断で工事に関する具体的な工法や作業手順を選択できた |
事前に連絡すれば,仕事を休んだり,所定の時刻より後に作業を開始したり所定の時刻前に作業を切り上げたりすることも自由であった |
他の工務店等の仕事をすることを禁じられていなかった |
報酬の取決めは,完全な出来高払の方式が中心とされていた |
一般的に必要な大工道具一式を自ら所有し現場に持ち込んで使用していた |
会社からの仕事を受けるか否かの自由、一定の期間や日時の仕事を断る自由、仕事の依頼や業務に従事すべき旨の指示に対する諾否の自由があった |
作業の段取り、手順等は各職人がその知識・技術に基づいて決めていた |
報酬は基本的には出来高に対するもので、多い時で1か月86万円以上となったことがあり、従業員として従事した場合に比べてはるかに高額である |
工具一式や自動車を所有し、経費も負担していた |
確定申告を行い、労災保険は一人親方として特別加入していた |
具体的な仕事を承諾するかどうかは、諸条件を交渉して決定していた |
会社から立面図と平面図が渡されるが、具体的作業方法は特段指示されない |
勤務時間の定めは全くなく、出勤簿もなかった |
他の大工に手伝ってもらうことができ、その報酬は本人が支払っていた |
報酬は坪単価方式によって決定され、毎月工事の進行状況に応じ支払われた |
4、5か月会社の仕事をしなかったことがあり、工期に遅れない限り他社の仕事をすることも許されていた |
板金工は、5名の同業の職人とグループで仕事を引き受けていた。構成員相互間には使用従属関係はなく、仕事を引き受けるか否かについても、全員が相談の上決定していた。 |
常に特定の会社の仕事に従事しなければならないとの拘束はなく、グループ のうち数名の者が他の仕事に従事することも自由であった |
仕事の報酬については、グループ全体で完了した出来高に応じて支払われた |
必要な資材は会社から支給されたが工事はグルプで購入した道具類及び個人で所有している道具類を使用してなされた |
一人親方の労働者性が認められた事例
入社以後、給排水配管等の修理工事に専属的に従事していた |
会社は1か月前に勤務表を作成・提示し、勤務時間を指示していた |
勤務開始時間に会社に無線で連絡、指示に従い仕事先に直行し、仕事が終了すると無線で報告、会社から次の指示を受けていた |
作業に使用する道具類・車両は会社の所有物であり、貸与を受けていた |
作業材料は会社が契約している材料店で仕入れ、材料費は会社が支払っていた |
就業期間中に他社の仕事をしたことはない |
大工職人としての仕事のほか、ブロック工事など他の仕事にも従事を求められた |
勤務時間の指定はないが、朝7:30に事務所で仕事の指示を受け、事実上17:30まで拘束され、それ以降の作業には残業手当が支給された |
現場監督からの報告・指示によって、会社から指揮監督を受けていた |
大工道具は本人の所有物だが、必要な資材等の調達は会社の負担であった |
雇用契約ないし専属契約は結ばれていない。労働時間の拘束はない |
会社は自社専属のスレート工として処遇し、専属支配下においていた |
作業の遂行に当たり会社から具体的な指揮監督を受けていた |
出来高払制の報酬を受けていたが実質は労務の対償として支払われていた |
会社と職人は雇用契約書を取り交わさず、就業規則等の定めもないが、各職人の日給額等は各人の経験能力等に応じて会社が判断の上決定していた |
報酬は会社が作成した出面帳により日々の稼働状況を把握し、各月の労働日数等を賃金台帳に収録し日給等の支払基準により計算している |
会社の指揮監督を受け、会社から材料、用具等の供与を受けている |
会社が仕事の結果について一切の責に任じている |
建設労働者が加入すべき社会保険等
一人親方 |
⇛ |
○市町村国保or国保組合 ○国民年金 ○労災保険(特別加入) |
株式会社など法人に勤めている労働者 |
⇛ |
○雇用保険
○協会けんぽ ※健保適用除外により、国保組合 に加入できる場合があります ○厚生年金保険
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個人経営の事業所に勤めている労働者(常時使用する労働者が5人以上) |
⇛ |
○雇用保険
○協会けんぽ ※健保適用除外により、国保組合 に加入できる場合があります ○厚生年金保険
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個人経営の事業所に勤めている労働者(常時使用する労働者が5人未満) |
⇛ |
○雇用保険
○市町村国保or国保組合
○国民年金 |
日雇労働者 |
⇛ |
○雇用保険(日雇労働被保険者) ○市町村国保or国保組合or 健康保険( 雇特例被保険者) ○国民年金 |
まとめ
いかがでしょうか?国土交通省が出している非常に実践的な判断例です。ご自身が、あるいは依頼している一人親方が本当の意味での一人親方かどうか判断に迷われている場合は是非参考にしたいものです。