コロナ禍における一人親方の医療保険料の免除
医療保険といっても、種類はさまざまです。会社員やその家族が加入できる健康保険組合はよく知られていますが、一人親方の場合は国民健康保険への加入になります。国民健康保険は保険料金が高いことでも知られていますが、できるだけ保険料を抑えたいと考えている人がほとんどでしょう。
そこで今回は、一人親方でも医療保険料を抑える加入方法について詳しく解説します。また、コロナ禍における医療保険の免除方法にも触れていきます。
「保険料が高くて困っている」「一人親方でもできる対策が知りたい」「コロナ禍の影響で保険料の支払いが滞っている」という人は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.一人親方の医療保険料が高い理由とは?
- 1.1.公的保険とは?
- 1.2.一人親方の医療保険料が高い理由
- 2.一人親方の医療保険料を抑える4つの方法
- 2.1.減免申請を行なう
- 2.2.任意継続の実施
- 2.3.建設国保への加入
- 2.4.協会けんぽへの加入
- 2.5.コロナ禍における医療保険料の免除
- 3.医療保険料免除の対象者
- 4.医療保険料免除の要件
- 5.医療保険料の減免の対象となる保険料
- 6.医療保険料の減免額の算定
- 7.まとめ
一人親方の医療保険料が高い理由とは?
一人親方が加入できる国民健康保険は、会社員などが支払う社会保険よりも保険料が高いことで知られています。
ここでは、なぜ国民健康保険の保険料が高いのか、その理由について詳しく解説します。
公的保険とは?
国民健康保険とは、自営業者や無職者、その家族を対象とする医療保険です。雇用されておらず自分1人で仕事をしている場合は、社会保険ではなく国民健康保険への加入になります。
医療保険には大きく分けて5つ種類があり、それぞれに加入対象者が異なるため詳しく見ていきましょう。
<医療保険の種類>
種類 |
加入対象者 |
運営者 |
---|---|---|
健康保険(社会保険) |
事業所の従業員(労働時間による縛りあり)と、その扶養家族 |
|
国民健康保険 |
自営業・フリーランス・農業・退職者・無職者・これらの家族 |
|
共済組合 |
国家公務員・地方公務員・私学教職員と、その扶養家族 |
|
後期高齢者医療制度 |
75際以上・65~74歳で特定の障害を持っている人 |
|
船員保険 |
船員とその扶養家族 |
|
国民健康保険は地方自治体が運営しており、社会保険に加入していない人や条件を満たしておらず加入できない人などが対象になっています。
保険料は前年度の所得によって決まる「所得割」と、加入する家族の人数によって決まる「均等割」があり、それらを合算した金額が世帯主へ通知されます。
保険料は各自治体の規定によって異なるため、同じ加入条件や所得であっても、住んでいる地域によっては保険料に差が出ることも珍しくありません。
一人親方の医療保険料が高い理由
一人親方は国民健康保険への加入となりますが、なぜ国民健康保険は保険料が高いのでしょうか?その理由の一つは、社会保険では雇用主と社員が保険料を折半する形で支払うため負担が少なくなっているのに対して、国民健康保険はすべて自分で支払わなくてはいけないことです。
例えば、社会保険の場合は3万円の保険料を「会社1万5,000円」「社員1万5,000円」で支払いますが、国民健康保険の場合は3万円の支払いになります。
また、国民健康保険の場合は扶養概念がないため、家族が多いほど保険料が高くなるのも保険料が高くなる要因の一つでしょう。
国民健康保険は高いといわれますが、実際の保険料がずば抜けて高いのではなく、自分で支払う金額が増えたことによって「国民健康保険は高い」と感じるようになっているだけです。[a4]
一人親方の医療保険料を抑える4つの方法
一人親方は国民健康保険の加入になりますが、先述のとおり、社会保険と比べると支払う金額がぐっと増えてしまいます。
そこでここでは、一人親方でも国民健康保険料を抑える方法を4つ紹介します。
減免申請を行なう
「無職になってしまい、保険料を支払えない」「コロナ禍で収入が激減して保険料を支払えなくなった」などの場合は、減免申請をすることで保険料を抑えられます。
新型コロナウイルスの影響による収入減の場合、退職や廃業等による収入減の場合、天災等で住宅が被災した場合など、さまざまな条件においてそれらに適用する減免制度は異なるケースがあるため、自治体の国民健康保険の窓口へ問い合わせてみましょう。
また、コロナ禍で収入が激減した場合には、次章の「コロナ禍における医療保険料の免除」にて詳しく解説していますので、併せてご確認ください。
任意継続の実施
任意継続とは、退職前の社会保険を最長2年まで引き延ばせる制度です。退職前の社会保険とはいえ、雇用時は会社との折半でしたが、離職後は全額支払わなければいけません。
全額支払うことになったとしても、国民健康保険に比べると保険料は安くなることもあり、任意継続した場合の保険料と国民健康保険に切り替えた場合の保険料を比較してみましょう。
任意継続する場合は「社会保険に2ヵ月以上加入していること」「離職後20日以内に申請すること」が条件ですので、計画的に行なうのがポイントです。
これから独立して一人親方になるという人は、選択肢の一つとして頭に入れておくといいかもしれません。
建設国保への加入
建設国保は、大工やとび職人・土木関連・造園・左官・板金など、建設工事業に従事している事業主や従業員、一人親方等が加入できる医療保険です。
昭和45年6月に設立された国保組合で、現在は全国で10万人の被保険者が加入し[a4] ています。建設国保は国民健康保険に比べて若干安い傾向があるため、少しでも保険料を抑えたい人にはぴったりでしょう。詳細は建設国保までお問い合わせください。
協会けんぽへの加入
法人化して協会けんぽへ加入することでも、保険料を抑えることが可能です。一人親方であっても、法人化すれば社会保険への加入が義務付けられます。社会保険料の会社負担分は「法定福利厚生費」として経費処理が可能となるため、節税効果により保険料を抑えられる可能性もあるのです。
ただし、社会保険へ加入するということは、同時に厚生年金への加入も必須ということです。厚生年金の保険料も社会保険同様、会社と従業員の折半で払うことになるため法人化した際には社会保険料だけでなく、厚生年金の支払いも考慮しなくてはなりません。
コロナ禍における医療保険料の免除
令和3年7月現在、国内における新型コロナウイルス感染症はいまだ収束の目途が立っていません。一人親方はもちろん、さまざまなところでの影響が懸念されています。
国は新型コロナ対策として様々な対策を打ち出しておりますが、その一つとして新型コロナの影響で一定程度収入が減少した場合に国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料の減免する制度があります。
今すぐに必要な制度ではなくても、いつ自分の身に降りかかってくるかわかりません。そのためにも、ぜひコロナ禍における医療保険料の免除について学んでおきましょう。以下では減免の内容を一つ一つ見ていきたいと思います。
医療保険料免除の対象者
- 主たる生計維持者が新型コロナウイルス感染症により死亡、または重篤な傷病(1か月以上の治療を要するなどの状態)を負った世帯
- 感染症の影響により主たる生計維持者の事業収入等(不動産収入、事業収入、山林収入、給与収入)の減少が見込まれ、次の【要件】1から3のすべてに該当する世帯
医療保険料免除の要件
- 事業収入等のいずれかの減少額(保険金、損害賠償等により補填されるべき金額を控除した金額)が前年の当該事業収入等の額の10分の3以上であること。
- 前年の所得の合計金額が1,000万円以下であること。
- 減少することが見込まれる事業収入等に係る所得以外の前年の所得の合計金額が400万円以下であること。
医療保険料の減免の対象となる保険料
- 令和2年2月1日から令和3年3月31日の間に納期限が設定されている保険料
- 【対象者】の1に該当する場合は保険料の全額が免除されます。【対象者】の2に該当する場合は下記の【減免額の算定】で減免額を算出します。
医療保険料の減免額の算定
世帯全員分の保険税額のうち、減免の対象となる保険税額に、前年の合計所得金額の区分に応じた減免割合(10分10から10分の2の間で減免)を乗じた額
(A×B/C)×D
減免対象保険税額(A×B/C)
- A:世帯の被保険者全員について算定した保険税額
- B:世帯の主たる生計維持者の減少が見込まれる収入に係る前年の所得額(減少することが見込まれる事業収入などが2以上ある場合はその合計額)
- C:世帯の主たる生計維持者および世帯の被保険者全員の前年の合計所得金額
合計所得金額に応じた減免割合(D)
前年の合計所得金額 |
減免または免除の割合 |
300万円以下 |
全部(10分の10) |
300万円超 400万円以下 |
10分の8 |
400万円超 550万円以下 |
10分の6 |
550万円超 750万円以下 |
10分の4 |
750万円超 1,000万円以下 |
10分の2 |
国民健康保険はサラリーマンなどが加入する社会保険と違い世帯全員がそれぞれ被保険者となり、額は異なりますが一人一人が相応の保険料を負担しています。この点、被扶養者という概念がある社会保険とは異なります。
まとめ
一人親方が加入できる保険は「国民健康保険」で、会社員が加入する社会保険と比べると、会社からの負担がないため、すべて自分で支払わなければなりません。そのため、会社員だったころよりも割高に感じてしまう人が多いようです。保険料を安く抑えるための方法はいくつかありますので、条件に該当する場合には検討するのもいいでしょう。
また、昨今では、新型コロナウイルスの感染拡大により、予想外の業績不振や廃業など、あらゆるところで安定的に収入が得られないなど、影響が現れはじめています。それが原因となり、保険料が支払えなくなる人も増えている状況です。
一人親方でもできる保険料の減免方法を知っておくと、いざというときに役立つに役立ちます。「自分には関係ない」と思ってしまうことなく、利用できる制度はしっかりと利用して、コロナ禍を上手く乗り切っていきましょう。