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労災保険の種類や加入条件!仕組みや保険料の計算方法も解説!


 厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会では、2021年6月18日の部会で、料理宅配をする自転車配達員や、フリーランスのITエンジニアなどの職種について、労災保険が利用できる特別加入制度の対象とすることを了承しました。

 これによって、2021年6月現在、労災保険に特別加入ができない方々にも幅広く加入できる道が開かれることになります。

 この記事では、労災保険の概要や種類、加入方法、労災保険料の計算方法などについて解説していきます。

目次[非表示]

  1. 1.労災保険とは?
    1. 1.1.労災保険の目的と重要性
  2. 2.労災給付の種類
    1. 2.1.療養(補償)給付 
    2. 2.2.休業(補償)給付
    3. 2.3.傷病(補償)年金
  3. 3.加入対象・条件の種類
    1. 3.1.加入条件(加入義務のある事業場)
    2. 3.2.加入対象
    3. 3.3.加入方法
  4. 4.計算方法
  5. 5.労災保険の特別加入制度の種類
    1. 5.1..中小事業主等
    2. 5.2.一人親方等
    3. 5.3.特定作業従事者
    4. 5.4.海外派遣者
  6. 6.一人親方の労災保険の特別加入制度
  7. 7.まとめ

労災保険とは?

 労災保険とは、業務上の事由または通勤災害などによって労働者が負傷・疾病・障害あるいは死亡をしたときに、労働者本人やその遺族のために必要な保険給付を行なう制度です。

 労災保険は、正しくは労働者災害補償保険といい雇用保険と同じように労働保険の一種になります。詳しい条件は後述しますが、従業員を1人でも雇う事業主は、必ず労災保険に加入する必要があります。

労災保険の目的と重要性

 労災保険ができる以前、産業の中心が農業や漁業が中心だった頃の日本では、仕事中に起こる労働災害の多くが、労働者の不注意であると考えられていました。一方で、著しい経済発展を遂げた戦後以降の日本では、生産技術の進歩や生産規模の拡大によって、労働者が事故にあうリスクが増えてきました。

 また、事業規模が大きくなれば、当然のことながら労働災害が生じるリスクも高まり、事業主はすべての人に補償をしきれない可能性もでてくるようになります。

 このような流れから、労働者が仕事や通勤中に労働災害にあった際に、必要な給付を行なう重要性が認識され始め労災保険の必要性が出てきました。

 その結果、社会復帰の促進や、本人や遺族の救護、適正な労働条件の確保を図り、労働者の福祉増進に寄与することを目的に誕生したのが労災保険です。なお、労災保険に加入すると労働保険番号を取得することができます。

 労災保険では、この目的を達成するために、労災保険の保険給付のほかに以下のような労働福祉事業も行なっています。

  • 特別支給金(休業特別支給金や障害特別支給金 など)
  • 労災就学援護費
  • 外科後処置
  • 義肢などの支給
  • 旅費の支給
  • アフターケア
  • 在宅介護住宅資金や自動車購入資金の貸し付け など

労災給付の種類

 労災保険から給付されるものには、療養給付・休業給付・傷病年金の3つがあります。ここでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。

療養(補償)給付 

 療養(補償)給付は、業務中に発生したケガや病気の治療費を補償するものです。通勤中に生じた災害の場合も含まれます。給付の範囲は、治療にかかった以下の費用のうち必要と認められたものに限ります。

  • 診察
  • 治療材料または薬剤
  • 処置、手術
  • 病院または診療所への入院および、その療養にともなう世話やその他の看護
  • 居宅における療養上の管理および、その療養にともなう世話やその他の看護
  • 移送費

 療養(補償)給付には以下の2種類があります。

  1. 療養の給付:労災病院・労災指定病院で自己負担なしで治療を受ける
  2. 療養の費用の支給:労災指定病院以外の病院などで療養をしたときに、いったん費用を全額支払い、その後労災保険から相当額を支給される

休業(補償)給付

 休業(補償)給付とは、労働災害による傷病の療養で4日以上休業している場合、該当期間の休業補償給付および休業特別支給金が受け取れる制度です。通勤中の場合は、休業給付と呼ばれます。

 給付金額は、以下を合計したものになるため、給付基礎日額の80%が受け取れることになります。

  • 休業補償給付:給付基礎日額の60%×休業日数
  • 休業特別支給金:給付基礎日額の20%×休業日数

 給付基礎日額とは、直前3ヵ月で受け取った賃金総額を、3ヵ月の総労働日数で割った金額です。

傷病(補償)年金

 仕事や通勤中に発生した傷病で働けなくなり、療養期間が1年6ヵ月以上にわたる場合で、かつ受給要件を満たせば受け取れる補償です。厚生労働省が発表している傷病の種類別コード表で傷病の種別が分けられています。

【受給要件】

  1. ケガや病気が治っていないこと
  2. 傷病等級第1級~第3級に該当すること

加入対象・条件の種類

 労災保険の加入対象と条件は以下のとおりです。

加入条件(加入義務のある事業場)

 労災保険は、従業員を1人でも雇っていれば加入義務があります。労災への加入を義務付けられた事業場のことを、強制適用事業場と呼びます。ただし、国の直営事業所や船舶保険被保険者5人未満の従業員を使用する個人経営の農林水産事業などについては、強制適用事業場に含まれません。

 なお、強制適用事業場以外の事業場であっても、要件さえ満たせば、労災保険に加入できる任意加入制度も用意されています。

加入対象

 常勤の正社員やアルバイトなど雇用形態に関係なく、事業主に使用されていている労働者全員が労災保険の加入対象です。ただし、業務委託などの請負契約で働く場合や、代表権や業務執行権を持つ法人の役員などは、基本的に労災保険の対象外になります。

加入方法

 労災保険に加入方法は、事業の種類によって異なります。

 労災保険の加入に際して、まず以下2種類の事業があることを知っておきましょう。

  1. 一元適用事業:労災保険と雇用保険の申告・納付を一括で行なう事業場
  2. 二元適用事業:労災保険と雇用保険の申告・納付を別々に行なう事業場

 二元適用事業に該当するのは農林漁業・建設業などで、それ以外は基本的に一元適用事業です。

 では、具体的な労災保険の加入方法と流れについて、それぞれ解説します。

  • 一元適用事業の場合

 提出書類と各書類の提出期限、提出先の一覧は以下のとおりです。




書類名
提出期限
提出先
【1】
保険関係成立届
保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内
  • 所轄の労働基準監督署
【2】
概算保険料申告書
保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内
  • 所轄の都道府県労働局
  • 所轄の労働基準監督署
  • 日本銀行【代理店、歳入代理店(全国の銀行・信用金庫の本店または支店、郵便局)も可】
【3】
雇用保険適用事業所設置届
設置の日の翌日から起算して10日以内
  • 所轄の公共職業安定所
【4】
雇用保険被保険者資格取得届
資格取得の事実があった日の翌月10日まで
  • 所轄の公共職業安定所

 労災保険の加入手続きにおける注意点は、書類提出様式や提出用紙などにルールがあることです。

 【2】については、【1】の手続き後もしくは同時に提出します。また、【3】と【4】は、【1】のあとに手続きを行ないます。



書類名
提出期限
提出先
【1】
保険関係成立届
保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内
  • 所轄の労働基準監督署
【2】
概算保険料申告書
保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内
  • 所轄の都道府県労働局
  • 所轄の労働基準監督署
  • 日本銀行【代理店、歳入代理店(全国の銀行・信用金庫の本店または支店、郵便局)も可】

 なお、二元適用事業の場合は、労災保険とは別に雇用保険の加入手続きを行なう必要があるため、ご注意ください。

計算方法

 労災保険料の調べ方を難しいと感じる方も多いかもしれませんが、計算式を用いれば簡単に算出することができます。なお、すべての従業員に対し、前年度分の賃金総額に事業ごとに決められた保険料率をかけて算出します。具体的には、以下の計算式で算出可能です。


  • 労災保険料=「全従業員の年度内の賃金総額」×「労災保険率」

 例えば、小売業を営んでいる事業主が1年間に支払う賃金見込額が450万円(毎月30万円×12ヵ月+年間賞与90万円)の労働者を2人雇っている場合を想定しましょう。

 令和3年度における、小売業の保険率は労災保険率0.003なので、計算式は以下になります。

  • 450万円×2人×3.0/1000 =2万7,000円

 なお、労災保険にかかる賃金総額と雇用保険にかかる賃金総額が同額の場合、労災保険率を「労災保険率+雇用保険率」に置き換えれば、労働保険料全体を算出可能です。

労災保険の特別加入制度の種類

 労災保険は、会社と雇用関係にある労働者(社員・パート・アルバイト問わず)が加入するものです。法人・個人事業主のどちらであっても、1人でも雇用した場合は必ず労災保険には加入しなければなりません。

 ただし、業務の実態、災害の発生状況などから見て、労働者に準じて保護することがふさわしい方々に対して、一定要件の下に労災保険に特別に加入することを認めている制度があります。これが、労災保険の特別加入制度というものです。2021年6月現在、この制度下で労災保険に特別加入できるのは、次の4種類となっています。

.中小事業主等

 中小事業主等とは、次のいずれかに該当する人です。

  1. 下の表で定められた数の労働者を常時使用している事業主や、その法人や団体の代表者
  2. 上記事業主の事業時従事する労働者以外の人(事業主の家族従事者や、代表者以外の法人・団体役員など)



業種
労働者数
金融業、保険業、不動産業、小売業
50人以下
卸売業、サービス業
100人以下
上記以外の業種
300人以下

引用:特別加入制度のしおり(中小事業主等用)

 なお、従業員を通年雇用しない場合であっても、年間100日以上の使用をする場合、常時労働者として取り扱われます。

一人親方等

 特別加入できる一人親方等やその他の自営業者とは、法律で定められた以下のような事業を常態として労働者を使用しないで行なう人のことです。

  • 個人貨物運送業者や個人タクシー業者
  • 大工、とび職人、左官
  • 漁船による水産動植物の採捕事業
  • 林業の事業
  • 医薬品医療機器等法第30条の許可を受けて行なう医薬品の設置販売業
  • 再生利用を目的とした廃棄物などの収集、選別、運搬、解体などの事業
  • 船員法第1条に規定する船員が行なう事業 など

特定作業従事者

 特定作業従事者とは、以下いずれかに該当する人のことです。ただし、それぞれに一定要件が設けられています。特別加入団体の構成員であることも求められます。

  • 特定農作業従事者
  • 指定農業機械作業従事者
  • 介護作業従事者および家事支援従事者
  • 国または地方公共団体が実施する訓練従事者
  • 労働組合等の常勤役員
  • 家内労働者およびその補助

海外派遣者

 労災保険に加入できる海外派遣者は、以下のいずれかに該当する人です。

  1. 日本国内の事業主から、海外で行なわれる事業に労働者として派遣されている人
  2. 日本国内の事業主から、海外にある中小規模の事業(下表参照)に労働者ではない立場で派遣される人
  3. 独立行政法人国際協力機構など開発途上地域に対する技術協力を実施する事業(有期事業を除く)を行なう団体から派遣され、開発途上地域で行なわれる事業に従事する人


業種
労働者数
金融業、保険業、不動産業、小売業
50人以下
卸売業、サービス業
100人以下
上記以外の業種
300人以下

引用:特別加入制度のしおり(海外派遣者用)

一人親方の労災保険の特別加入制度

 労災センター共済会では、特別加入制度のうち2の一人親方等における「建設の事業(土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊もしくは解体またその準備の事業)」に従事する方を対象とした労災保険の特別加入制度を取り扱っています。

 上記の対象範囲をわかりやすくいえば、建設業のうち工事現場での作業に従事する方を対象としているということになります。したがって、2021年現在では、現場に入場する方であってもクリーニング業や植木職人の方は対象外となることが多い現状です。

まとめ

 政府の諮問機関である労働政策審議会の了承によって、フリーランスなどの多様な働き方を意識した制度改正がまた一歩前進しました。そして、労災保険の対象拡大を求める声は、今後もさらに大きくなる可能性が高いと考えられます。

 なお、労働者の災害に備えるための労災保険料は、特別加入制度の対象であっても、雇用保険などと同じように労働者自身も負担する仕組みになります。そのため、この制度への加入をするときには、厚生労働省のパンフレットなどをきちんと確認をするようにしてください。