一人親方の労災保険給付!給付基礎日額や補償内容を解説
2021年の4月になってから新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険が使えるかという問い合わせが増えてきました。新型コロナウイルスの感染が急速に広がる中、仕事、プライベートを問わず、誰にでも感染するリスクがあります。
目次[非表示]
- 1.一人親方の労災保険で給付対象になる災害
- 2.労災保険の補償内容
- 3.給付基礎日額と補償内容
- 3.1.給付基礎日額とは?
- 3.2.給付基礎日額と補償内容
- 4.一人親方は要注意!コロナが原因での労災
- 4.1.感染経路が明らかな場合
- 4.2.感染経路が不明な場合
- 5.まとめ
一人親方の労災保険で給付対象になる災害
労災保険は、仕事中または通勤途中にケガや病気になってしまった場合に、労働者やその家族に治療費などを給付する制度です。事業主は、雇用形態に関わらず一人でも労働者を雇った場合に、労災保険の加入が義務付けられます。
そのため、労働者を雇わない「一人親方」の場合は、労災保険の対象外となるので注意が必要です。
しかし、その業務上一人親方は労働災害に遭遇する機会が労働者に近いため、国は一人親方に対し「一人親方労災保険」への加入を認めています。
一人親方労災保険への加入により、立場としては労働者ではない一人親方でも「業務災害」や「通勤災害」に対しての給付が行なわれるようになります。ここからは、業務災害・通勤災害それぞれについて詳しくご紹介します。
業務災害
業務上の災害として以下のいずれかに該当する場合、労災保険の給付対象になります。
- 請負契約に直接必要な行為を行う場合
- 請負工事現場における作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合
- 請負契約に基づくものであることが明らかな作業を自家内作業場において行う場合
- 請負工事に関する機械や製品を運搬する作業(手工具類程度のものを携行して通勤する場合を除く)およびこれに直接附帯する行為を行う場合
- 突発事故(台風、火災など)により予定外に緊急の出勤を行う場合
引用:労災保険 特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)/厚生労働省
上記のいずれにも該当していない場合は、例えケガや病気を患ったとしても、給付金を受け取ることはできませんので、注意が必要です。
なお、特定の業務に就くことでかかる、またはかかる確率が高くなる「業務上疾病」については、発症原因が業務によるものと判断された場合に労災の給付が行なわれます。
業務上疾病は、新型コロナウイルス感染症や、中皮腫、肺がんなど(石綿(アスベスト)の曝露によって罹患したと認められた場合)が代表的です。
通勤災害
通勤災害の対象は、基本的に通勤途中でのケガや病気となった場合を指します。これは労働者でも一人親方でも、同様に扱われるものです。
通勤災害での「通勤」とは、住居と就業場所の間を合理的な経路かつ合理的な方法によって往復することで、「業務の性質を有するものを除くもの」とされているので注意しましょう。
ただし、住居と就業場所の間といっても、合理的な経路を逸脱、往復を中断したなどの場合は、逸脱、中断した間とその後は「通勤」とはみなされません(やむを得ない事由の場合はその限りではありません)。 例えば、仕事帰りに飲食店に寄った等の場合は、通常の経路から外れる前までしか通勤災害は適用されません。もし、飲食店からの帰宅時に通常の経路に戻ったとしても、通勤災害は適用されないということになります。
労災保険の補償内容
一人親方労災保険の補償内容は、以下の通りです。
給付の種類 |
支給の事由 |
給付の内容 |
特別支給金 |
---|---|---|---|
療養補償給付(療養給付) |
業務災害又は通勤災害による傷病について、病院等で治療する場合 |
労災(指定)病院等において必要な治療が無料で受けられます。 また、労災(指定)病院等以外の病院において治療を受けた場合には、 治療に要した費用が支給されます。 |
― |
休業補償(休業給付) |
業務災害又は通勤災害による傷病の療養のため労働することができない日が4日以上 となった場合 |
休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額が支給されます。 |
【休業特別支給金】 休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額が支給されます。 |
傷病補償年金(傷病年金) |
業務災害又は通勤災害による傷病が療養開始後1年6ヶ月を経過した日又は 同日後において 1. 傷病が治ってないこと 2. 傷病による障害の程度が傷病等級に該当することのいずれにも該当する場合 |
第1級は給付基礎日額の313日分第2級は給付基礎日額の277日分第3級は給付基礎日額の245日分が支給されます。 |
【傷病特別支給金】 第1級は114万円、第2級は107万円、第3級は100万円が一時金として支給されます。 |
障害補償年金(障害給付) |
業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に障害等級第1級から第7級までに 該当する障害が残った場合 |
第1級は給付基礎日額の313日分~第7級は給付基礎日額の131日分が支給されます |
|
障害補償 一時金 |
業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に障害等級第8級から第14級までに 該当する障害が残った場合 |
第8級は給付基礎日額の503日分~第14級は給付基礎日額の56日分が支給されます。 |
【障害特別支給金】 第1級342万円~第14級8万円が一時金として支給されます。 |
介護補償(介護給付) |
業務災害又は通勤災害により、障害(補償)年金又は傷病(補償)年金を 受給している方のうち一定の障害を有する方で現に介護を受けている場合 |
【常時介護の場合】 介護の費用として支出した額(10万4,590を上限)が支給されますが、 親族等の介護を受けている方で、介護の費用を支出していない場合は又は 支出した額が5万6,710円を下回る場合は一律定額として5万6,710円が支給されます。 【随時介護の場合】 介護の費用として支出した額(5万2,300を上限)が支給されますが、 親族等の介護を受けている方で、介護の費用を支出していない場合は又は 支出した額が2万8,360円を下回る場合は一律定額として2万8,360円が支給されます。 |
|
遺族補償給付(遺族給付) |
通勤災害により死亡した場合(年金額は遺族の人数に応じて変わります)。 |
遺族の人数によって支給される額が変わります。 《遺族1人の場合》給付基礎日額の153日分又は175日分 《遺族2人の場合》給付基礎日額の201日分 《遺族3人の場合》給付基礎日額の223日分 《遺族4人の場合》給付基礎日額の245日分 |
|
遺族補償 一時金 |
1. 遺族(補償)年金を受けることができる遺族がいない場合 2. 遺族(補償)年金を受けている方が失権し、かつ、他に遺族(補償)年金を 受けうる方がいない場合において、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分 に満たない場合 |
左欄の ①の場合には給付基礎日額の1000日分が支給されます。 ②の場合は給付基礎日額の1000日分からすでに支給された年金の合計額を 差し引いた額が支給されます。 |
【遺族特別支給金】 300万円が一時金として支給されます。 |
葬祭料(葬祭給付) |
業務災害又は通勤災害により死亡した方の葬祭を行う場合 |
31万5,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額又は給付基礎日額の60日分の いずれか高い方が支給されます。 |
給付基礎日額と補償内容
一人親方労災保険における、「給付金基礎日額」と「補償内容」について、詳しくご紹介します。
給付基礎日額とは?
給付金基礎日額とは、保険料や保険給付の基礎となるものです 。一般的に「労働基準法」の「平均賃金」に相当する額を指します。原則としてこの平均賃金は、被災した日の直前3ヵ月の間に支払われた金額の総額を、該当の期間の歴日数で割った1日あたりの賃金額のことで、賞与などの3ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金は含みません。
一人親方の場合、加入する一人親方団体にもよって異なりますが、3,500円、5,000円、7,000円、10,000円、20,000円というように、あらかじめ決められた給付基礎日額で対応している場合もあります。この給付基礎日額を基に負担額や給付額が異なります。
給付基礎日額と補償内容
給付基礎日額と保険料算定基礎額、労災保険のそれぞれの額については、以下の表を確認してみましょう。
給付基礎日額(A) |
保険料算定基礎額(B) (A×365) |
労災保険年間保険料(C) (B×18/1000※) |
---|---|---|
3,500円 |
1,277,500円 |
22,986円 |
4,000円 |
1,460,000円 |
26,280円 |
5,000円 |
1,825,000円 |
32,850円 |
6,000円 |
2,190,000円 |
39,420円 |
7,000円 |
2,555,000円 |
45,990円 |
8,000円 |
2,920,000円 |
52,560円 |
9,000円 |
3,285,000円 |
59,130円 |
10,000円 |
3,650,000円 |
65,700円 |
12,000円 |
4,380,000円 |
78,840円 |
14,000円 |
5,110,000円 |
91,980円 |
16,000円 |
5,840,000円 |
105,120円 |
18,000円 |
6,570,000円 |
118,260円 |
20,000円 |
7,300,000円 |
131,400円 |
22,000円 |
8,030,000円 |
144,540円 |
24,000円 |
8,760,000円 |
157,680円 |
25,000円 |
9,125,000円 |
164,250円 |
引用:労災保険 特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)/厚生労働省
※年間保険料は、保険料算定基礎額に既定の保険料率を乗じたものになります。建設業の場合の保険料率は18/1000となっています。
上記のように、高い基礎給付日額を選択した場合は、その分保険料の負担が高くなってしまうデメリットがありますが、その分補償が厚くなるため、メリットも十分にあります。
一人親方は要注意!コロナが原因での労災
近年流行している新型コロナウイルスですが、万が一感染した場合に労災認定されるケースなどを事前に把握しておきましょう。
感染経路が明らかな場合
厚生労働省は労働者が新型コロナウイルスウィルスに感染した場合の労災認定の考え方を示しました。医療従事者や介護従事者等が新型コロナウイルスウイルスに感染した場合、仕事以外で感染したことが明らかである場合を除いて原則として労災として認定されます。その他の職種の場合について、感染経路が仕事であることが明らかである場合は労災認定されます。
感染経路が不明な場合
現在新型コロナウイルスウィルスに感染した場合、感染経路が不明なケースが増えています。その場合、複数の感染者がその職場で確認されたかどうか、あるいは他人との接触が多い職場かどうかなど個別の事案ごとに調査され、労災認定されるかどうか判断されます。
他人との接触が多い職場とは小売業のほか、バスやタクシーなどの運送業、育児サービス業を想定していますので、一人親方を含む建設業は通常はこれに該当しないケースが多いでしょう。
現時点では一人親方が新型コロナウイルスウィルスに感染した場合について複数の感染者が同一の職場や作業現場で確認されたかどうかについて個別に労災認定の判断をすることになると考えられます。ただし、感染者同士お互い接点がなく接触がないような場合は労災認定される可能性は高くはないでしょう。
まとめ
コロナに感染した方が増えてきております。一人親方の場合、その職制上頻繁に仕事場が変わります。コロナに感染した場合、どこでどの程度どのような仕事をしたのかどこで感染したのかを届け出なければなりません。日ごろから自分の行動を書き留めておく必要があります。