一人親方の解説

一人親方の労災保険②

 一人親方の労災保険に特別加入するためには、労働局より承認を受けた一人親方団体が労働基準監督署を通じて労働局に申請する必要があります。届け出る項目として主なものは氏名、生年月日、業務又は作業の具体的な内容、従事する特定業務、給付基礎日額です。ここでは一人親方の労災保険に加入するにあたりどのような点に気を付けるべきかを見ていきます。

1、氏名・生年月日

 労災保険の特別加入者に係る不正受給事案が散見されることから、平成30年1月厚生労働省労働基準局から「特別加入事務処理に係る本人確認徹底のお願い」という通達が一人親方団体宛にありました。それまでは身分証明書の確認は各団体ごとに委ねられており、場合によっては特別加入を優先するあまり身分証明書の確認が後日となってしまったり、そもそも提出がなかったりしたケースもあるようです。しかし、現在では先の通達もあり各団体事前に身分証明書の確認を徹底し、不正受給に係ることがないように努めています。また、近年では外国人の一人親方も多くなってきました。身分証明書の確認はもちろんのこと在留資格が一人親方のとして問題ないかどうかという点も重要となってきます。

2、業務または作業の具体的な内容

 特別加入ができる職種については、厚生労働省が発行している特別加入制度のしおりによると「労働者を使用しないで土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復(注)、修理、変更、破壊もしくは、解体またはその準備の事業を営む者」とあります。特に職種を限定しているわけでありませんが、建設関連の職種がすべて該当するかというとそうではありません。例えば、新築工事後のクリーニングや設計の仕事に携わる方は該当しないと考えた方がよさそうです。

3、従事する特定業務

 特定業務とは下表左列の業務を言い、特別加入を希望する一人親方が通算して中列の期間以上特定業務に従事していた場合には右列の健康診断を受信する必要があります。健康診断の意味するところは通常の健康診断と若干意味合いが異なります。一般的に健康診断は健康状態を評価することで健康の維持や疾患の予防・早期発見に役立てるものとされていますが、特定業務に係る健康診断は特別加入希望者が既に例えば有機溶剤中毒にり患しており、その症状の程度から業務に従事することが困難と認められたり、仕事は可能だが特定業務に従事することは難しいといった場合には、労災保険の特別加入が認められなかったり、労災保険の補償の範囲が制限されることがあります。なお、未受診のまま一定期間が経過すると特別加入自体の承認が見送られますので、受診対象者は必ず受診する必要があります。

特定業務

特別加入前に左記の業務に従事した期間

実施すべき健康診断

特別加入予定者の業務の種類

粉じん作業を行う業務

3年

じん肺健康診断

振動工具使用の業務

1年

振動障害健康診断

鉛業務

6カ月

鉛中毒健康診断

有機溶剤業務

6カ月

有機溶剤中毒健康診断


​​​​​​​4、給付基礎日額

 労災保険の給付額を算定する基礎となるもので、特別加入を行う方の所得水準に見合った適正な額を申請し、局長が承認した額が給付基礎日額となります。しかし、実際は本人が希望する給付基礎日額が申請すれば認められることが多いのが実情です。また、不正受給事案に関連して不正受給者が高額な給付基礎日額を申請することが多いため、高額な給付基礎日額で申請する場合には所得を証明するものの提出を求められるケースがあります。どれくらいが高額な給付基礎日額については各労働局や一人親方団体によって異なりますが、16,000円以上や18,000円以上が多いように見受けられます。


※ 100日以上他人を雇用している一人親方について

 厚生労働省のしおりには「労働者を使用する場合であっても、労働者を使用する日の合計が1年間に100日に満たないときには、一人親方等として特別加入することができます。」との記載があります。とういうことは、100日以上労働者を使用する一人親方等は一人親方の労災保険に特別加入できません。

 ちなみに、100日というのはどう解釈すればいいのでしょうか?100日以上雇用するつもりがなかったが仕事の受注の結果として100日以上になってしまった場合もあれば、当初から100日以上雇用する予定という場合もあります。また、100日以上雇用するつもりで雇ったがすぐに辞めてしまったというケースもあります。この100日の解釈にあたって参考となる通達がありますので、紹介致します。

 中小事業主の労災保険の特別加入というものがあるのをご存知の方は多いと思います。これは労働者を一人以上雇っている事業主が加入できる労災保険の特別加入制度です。一人親方の労災保険制度と非常に似通っています。労働基準局長の通達に中小事業主の労災保険の特別加入の加入条件として「通年1人の労働者を使用する事業主はもちろんのこと、労働者の通年雇用を行わない事業主であっても、年間において相当期間にわたり労働者を使用することを常態とするものも含まれるが、労働者を使用しないことを常態とする事業主は含まれない」とあります。とすると、100日というのはあくまでも目安であって、100日以上になったから必ず一人親方の労災保険の特別加入をやめなければならないというものではなさそうです。現在の仕事量からみて人手が必要そうで、週2日くらいは他人を雇う必要が今後もしばらく続くとは見込まれないのであればそのまま一人親方の労災保険の特別加入を続けていても良さそうという判断になります。


 労災保険は、本来労働者の業務または通勤による災害に対して保険給付を行う制度です。しかし、労働者以外でもその業務の実情、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる人に対しては特別に任意加入を認めています。これが、労災保険の特別加入制度です。特別加入の対象者には一人親方もいますし、事業主等の経営者側の立場の人もいます。ただし、事業主等の場合には一定数以下の労働者を雇用する場合に限って労災保険の特別加入を認めており、全く他人を雇用しない場合は対象外となります。特別加入の対象となる事業主等を中小事業主等と言います。なお、「労働者を雇用する」とは労働者を通年雇用しない場合であっても、1年間に100日以上労働者を使用している場合には、常時労働者を使用しているものとして取り扱われます。どこかで聞いたようなフレーズではないでしょうか?そう、一人親方の労災保険の特別加入制度の説明の際に使用した言い回しです。つまり、100日以上雇用する場合は中小事業主労災に該当し、雇用しない場合は一人親方労災に該当することになります。ちなみに、中小事業主の労災保険緒特別加入には業種の限定はありません。



お問い合わせ専用ダイヤル
平日 9:00〜18:00 年末年始は除く