一人親方ブログ

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一人親方の労災保険。特別加入時に労働基準監督署に届け出る事項を解説

 一人親方の労災保険に特別加入するためには、労働局に申請する必要があります。届け出る項目として主なものは特別加入する方の氏名、生年月日、業務又は作業の具体的な内容、従事する特定業務、給付基礎日額です。
 また、一人親方が直接労働基準監督署で手続きをするものと勘違いされますが、実際は労働局より承認を受けた一人親方団体が労働基準監督署を通じて申請します。ですので、特別加入を希望する方は一人親方団体に届け出る必要があります。
 こちらでは、一人親方が労災保険に特別加入をする際のフローと申請時に届け出る事項について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.一人親方労災保険への加入は労働基準監督署ではなく、組合経由で申請する
  2. 2.労災保険の特別加入時に届け出る事項について詳しく解説
    1. 2.1.氏名・生年月日
      1. 2.1.1.本人確認書類の添付
      2. 2.1.2.外国人の一人親方の労災保険の特別加入
    2. 2.2.業務または作業の具体的な内容
      1. 2.2.1.現場監督について
      2. 2.2.2.施工管理について
      3. 2.2.3.清掃業・クリーニング業について
      4. 2.2.4.造園工事について
    3. 2.3.従事する特定業務
      1. 2.3.1.健康診断の結果、異常があった場合
      2. 2.3.2.健康診断の受診義務のある方が受診しなかった場合
    4. 2.4.給付基礎日額
      1. 2.4.1.給付基礎日額の範囲
      2. 2.4.2.給付基礎日額の決め方
    5. 2.5.他人を雇用している一人親方
      1. 2.5.1.100日以上他人を雇用している一人親方
      2. 2.5.2.中小事業主の労災保険の特別加入とは?
  3. 3.まとめ

一人親方労災保険への加入は労働基準監督署ではなく組合経由で申請する

労働基準監督署

 一人親方労災保険に加入する際のフローを説明します。

  1. 特別加入を希望する方が一人親方組合の所定の加入申込書を組合へ提出します。
  2. 一人親方組合は提出された加入申込書の内容を確認し、問題がなければ加入日を決定し労働基準監督署へ提出する。
  3. 届け出を受けた労働基準監督署は内容を確認し、労働局が加入の承認・不承認の決定をする。

 ※ 当団体も労働局承認済みですので、ご安心してお申し込み下さい。

 次章で一人親方組合へ申請する際に必要な届け出項目について詳しく見ていきます。

労災保険の特別加入時に届け出る事項について詳しく解説

 雇用関係にある労働者は労災保険に無記名で加入します。これは労災保険の加入が義務となっているからです。しかし、一人親方の場合は雇用関係にないため労災保険の特別加入にあたって労災保険に加入する方について一人親方組合経由で届け出なければなりません。この章では​届け出事項について一つ一つ確認していきます。

氏名・生年月日

 労災保険に特別加入する方の氏名です。運転免許証等の身分証明書に記載されている氏名と同一の名前です。外国人の方でローマ字表記の方はカタカナに変換する必要があります。

本人確認書類の添付

 労災保険の特別加入者に係る不正受給事案が散見されることから、平成30年1月厚生労働省労働基準局から「特別加入事務処理に係る本人確認徹底のお願い」という通達が一人親方団体宛にありました。それまでは身分証明書の確認は各団体ごとに委ねられており、場合によっては特別加入を優先するあまり身分証明書の確認が後日となってしまったり、そもそも提出がなかったりしたケースもあるようです。しかし、現在では先の通達もあり各団体は事前に身分証明書の確認を徹底し、不正受給に係ることがないように努めています。

外国人の一人親方の労災保険の特別加入

 近年では外国人の一人親方も多くなってきましたため身分証明書の確認はもちろんのこと在留資格が一人親方のとして問題ないかどうかという点も重要となってきます。

 一人親方団体では外国人の一人親方から加入の申請があった場合在留カードの提出を求めることが一般的ですが、提出された在留カードが有効なものかどうか在留カード等番号失効情報照会で確認することは非常に大事なことです。

業務または作業の具体的な内容

仕事内容

 特別加入ができる職種については、厚生労働省が発行している特別加入制度のしおりによると「労働者を使用しないで土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復(注)、修理、変更、破壊もしくは、解体またはその準備の事業を営む者」とあります。特に職種を限定しているわけでありませんが、建設関連の職種がすべて該当するかというとそうではありません。

現場監督について

 現場監督は、現場での作業を中心に現場に常駐して作業員への指示や工事の進捗状況を管理するのが仕事のため、現場に非常に近い職種です。一人親方にも非常に多くの方が現場監督のお仕事に従事しています。ただし、必ずしも実際の建設の作業を行うことがない場合もあり、一人親方の労災保険に特別加入できる職種かというと疑問が残るケースもあります。

施工管理について

 現場監督に対して施工管理の場合は会社によって位置づけは多少の違いはありますが、現場に関わる全ての事柄を管理します。そのため、管理する範囲は非常に広くなっています。工程管理、原価管理、品質管理、安全管理は4大管理と言い、施工管理の主な業務となっています。この中にはオフィスワークも含まれるため、施工管理は現場監督の仕事にオフィスワークをプラスした職種とも言えます。

 設計監理・工事監理という職種があります。これは施工管理や現場監督がより現場寄りの仕事であるのに対して設計監理・工事監理は建築主よりの仕事です。つまり、設計者の視点から建築主の注文通りに工事が行われているかを設計図書をもとに確認する業務となります。

清掃業・クリーニング業について

 建設現場に多くの諸種の方が入ります。その中の一つとして清掃業やクリーニング業があります。その業務は新築工事後の引渡し前の清掃・クリーニングだけでなく、リフォームの場合や入居者の退出時の清掃・クリーニングも行います。
 清掃業・クリーニング業という場合、一般的には居室、キッチン、浴室、トイレ等の清掃・クリーニングとなり、労災保険の特別加入の対象外となります。しかし、中には美装工事として床のワックスかけ・クロスの張替え等も行うケースがあります。その場合は美装工事として労災保険の特別加入ができる余地はあります。

造園工事について

 造園工事も労災保険の特別加入にあたっては注意する必要がある職種です。造園工事といっても実際には植木屋・庭師といった場合があります。しかし、実際には造園工事・植木屋・庭師の差は判断ができないケースがあります。

 ただし、植木の剪定のみを行うという場合には労災保険の特別加入の対象外と考えたほうがよさそうです。

従事する特定業務

 特定業務とは下表左列の業務を言い、特別加入を希望する一人親方が通算して中列の期間以上特定業務に従事していた場合には右列の健康診断を受診する必要があります。

特定業務

特別加入前に左記の業務に従事した期間

実施すべき健康診断

特別加入予定者の業務の種類

粉じん作業を行う業務

3年

じん肺健康診断

振動工具使用の業務

1年

振動障害健康診断

鉛業務

6カ月

鉛中毒健康診断

有機溶剤業務

6カ月

有機溶剤中毒健康診断

健康診断の結果、異常があった場合

 健康診断の意味するところは通常の健康診断と若干意味合いが異なります。一般的に健康診断は健康状態を評価することで健康の維持や疾患の予防・早期発見に役立てるものとされていますが、特定業務に係る健康診断は特別加入希望者が既に例えば有機溶剤中毒にり患しており、その症状の程度から業務に従事することが困難と認められたり、仕事は可能だが特定業務に従事することは難しいといった場合には、労災保険の特別加入が認められなかったり、労災保険の補償の範囲が制限されることがあります。

健康診断の受診義務のある方が受診しなかった場合

 労災保険の特別加入をするにあたって健康診断の受診が必要な方は労働基準監督署が指定する期間内で健康診断の受診をする必要がありますが、未受診のまま一定期間が経過すると特別加入自体の承認が見送られますので、受診対象者は必ず受診する必要があります。
 なお、承認が見送られるとは当初から労災保険に特別加入しなかったとみなされます。労災保険の特別加入においては一人親方団体から組合員証・会員証又は加入証明書が送付されてきている場合がありますが、承認が見送られた場合は一切無効となります。受診義務のある方は必ず受診してください。
 事情により労働基準監督署が指定する期間内に受診ができない・または受診できそうにない場合はできるだけ早めに加入する一人親方団体に連絡しましょう。

給付基礎日額

 給付基礎日額とは労災保険料を算出するための基礎となる額です。また、万が一の労災事故の際にも給付基礎日額を元に計算する保険給付があります。

給付基礎日額の範囲

 給付基礎日額は下表のとおり3500円から25000円までの16段階あります。給付基礎日額に応じて労災保険料が変わります。また、労災保険料は3年1回労災保険料率が見直されますので変更となる場合があります。下表は平成30年度の労災保険料です。次回は令和3年度に変更予定でしたが据え置かれました。

給付基礎日額と労災保険料
給付基礎日額
労災保険料

3,500円

22,986円

4,000円

26,280円

5,000円

32,850円

6,000円

39,420円

7,000円

45,990円

8,000円

52,560円

9,000円

59,130円

10,000円

65,700円

12,000円

78,840円

14,000円

91,980円

16,000円

105,120円

18,000円

118,260円

20,000円

131,400円

22,000円

144,540円

24,000円

157,680円

25,000円

164,250円

給付基礎日額の決め方

 特別加入を行う方の所得水準に見合った適正な額を申請し、局長が承認した額が給付基礎日額となります。しかし、実際は特別加入者が希望する給付基礎日額が申請すれば認められることが多いのが実情です。また、不正受給事案に関連して不正受給者が高額な給付基礎日額を申請することが多いため、高額な給付基礎日額で申請する場合には所得を証明するものの提出を求められるケースがあります。どれくらいが高額な給付基礎日額については各労働局や一人親方団体によって異なりますが、16,000円以上や18,000円以上が多いように見受けられます。

 給付基礎日額は高くなればなるほど補償はその分厚くなりますが、当然労災保険料も高くなります。例えば給付基礎日額3500円で特別加入した場合の労災保険料は22986円です。これに対して給付基礎日額10000円で特別加入すると65700円です。3倍以上の労災保険料を支払うことになります。しかし、万が一の労災事故で休業した場合、休業補償は給付基礎日額の8割が支給されますので、給付基礎日額3500円の場合は1日当たり2800円、給付基礎日額10000円の場合は8000円円となり、3500円の場合と比較すると3倍以上支給されます。

他人を雇用している一人親方

雇用契約

 厚生労働省のしおりには「労働者を使用する場合であっても、労働者を使用する日の合計が1年間に100日に満たないときには、一人親方等として特別加入することができます。」との記載があります。とういうことは、100日以上労働者を使用する一人親方等は一人親方の労災保険に特別加入できません。

100日以上他人を雇用している一人親方

 100日というのはどう解釈すればいいのでしょうか?100日以上雇用するつもりがなかったが仕事の受注の結果として100日以上になってしまった場合もあれば、当初から100日以上雇用する予定という場合もあります。また、100日以上雇用するつもりで雇ったがすぐに辞めてしまったというケースもあります。この100日の解釈にあたって参考となる通達がありますので、紹介致します。

 中小事業主の労災保険の特別加入というものがあるのをご存知の方は多いと思います。これは労働者を一人以上雇っている事業主が加入できる労災保険の特別加入制度です。一人親方の労災保険制度と非常に似通っています。労働基準局長の通達に中小事業主の労災保険の特別加入の加入条件として「通年1人の労働者を使用する事業主はもちろんのこと、労働者の通年雇用を行わない事業主であっても、年間において相当期間にわたり労働者を使用することを常態とするものも含まれるが、労働者を使用しないことを常態とする事業主は含まれない」とあります。とすると、100日というのはあくまでも目安であって、100日以上になったから必ず一人親方の労災保険の特別加入をやめなければならないというものではなさそうです。現在の仕事量からみて人手が必要そうで、週2日くらいは他人を雇う必要が今後もしばらく続くとは見込まれないのであればそのまま一人親方の労災保険の特別加入を続けていても良さそうという判断になります。

中小事業主の労災保険の特別加入とは?

 中小事業主の労災保険の特別加入を説明致します。
 労災保険は、本来労働者の業務または通勤による災害に対して保険給付を行う制度です。しかし、労働者以外でもその業務の実情、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる人に対しては特別に任意加入を認めています。これが、労災保険の特別加入制度です。
 この特別加入の対象者には一人親方もいますし、事業主等の経営者側の立場の人もいます。ただし、事業主等の場合には一人親方とは異なり一定数以下の労働者を雇用する場合に限って労災保険の特別加入を認めており、全く他人を雇用しない場合は対象外となります。
 一人親方の労災保険の特別加入と給付基礎日額や補償内容は同一ですが、対象者が異なります。
 なお、「労働者を雇用する」とは労働者を通年雇用しない場合であっても、1年間に100日以上労働者を使用している場合には、常時労働者を使用しているものとして取り扱われます。どこかで聞いたようなフレーズではないでしょうか?そう、一人親方の労災保険の特別加入制度の説明の際に使用した言い回しです。つまり、100日以上雇用する場合は中小事業主労災に該当し、雇用しない場合は一人親方労災に該当することになります。ちなみに、中小事業主の労災保険の特別加入には一人親方の時のような業種の限定はありません。

まとめ

 いかがでしょうか?労災保険に特別加入するにあたって申請フローや届け出を説明いたしました。労働基準監督署への申請は本人ではなく一人親方組合になるのでご注意ください。
 また、届け出事項の中でも特に給付基礎日額は万が一の労災事故の際の計算の基礎となります。休業補償だけでなく障害補償、遺族補償といった保険給付にも給付基礎日額は使用されます。給付基礎日額を高くすれば労災保険料が高くなる。しかし、いざという時の生活保障を考えると安ければいいという訳にはいきません。

 一人親方の労災保険へのご加入の際は、お気軽に当一人親方組合へお問い合わせください。

 


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